Date : 2021

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27Wed.

行動データで変わるマーケティング組織~ アフターデジタル時代の業務とチーム(2/4)

アフターデジタル

エクスペリエンス事例

2020年11月20日、「行動データで変わるマーケティング組織~ アフターデジタル時代の業務とチーム~」というテーマのウェビナーを開催しました。
当日は人材紹介会社である株式会社ジェイエイシーリクルートメントの小川崇彦氏にご登壇いただき、『アフターデジタル』著者の藤井から、アフターデジタル時代の業務や組織の在り方についてお伺いしました。

本記事では、

・行動データ活用を始めたい
・行動データをビジネス成果へ繋げる方法を知りたい

という方に向けて、当日の内容を抜粋してお送りします。(全4回の2回目)

【これまでの記事はこちら】

・行動データで変わるマーケティング組織~ アフターデジタル時代の業務とチーム(1/4)
スピーカー(肩書は当時)
  • 株式会社ジェイエイシーリクルートメント 小川 崇彦氏
    (シニアプリンシパルマーケター)
  • 株式会社ビービット 藤井 保文
    (東アジア営業責任者)
  • 株式会社ビービット 神保 菜津紀
    (カスタマーサクセス サクセスマネジメント)
  • 株式会社ビービット 佐藤 駿
    (プロダクトマーケティング)

行動データで手に入れたのは「同じ物差し」

beBit佐藤(以下、佐藤):行動データ活用を始めていただいてからもうそろそろ一年が経った辺りかなと思いますが、この一年で起きた変化があれば教えて頂けますでしょうか?

ジェイエイシーリクルートメント小川様(以下、小川様):ありがとうございます。結論で言うと、「会話の時間が増えた」という変化があります。そこに至るまでの紆余曲折も含めて、お話させていただければと思っております。

行動データを活用するにあたり、我々が一番大切にしなきゃいけないと感じていたのは、「みんな同じ物差しを見ること」という点でした。

ただ当然ながら、やっぱりメンバー個人ごとに感覚の違いはすごくありますよね。このページをユーザが見に行ったのは情報が足りなかったからだ!と捉える人もいれば、いやいやこのページが読みにくかったから!と捉える人もいる。行動データの活用を始めて、みんな本当に捉え方が色々だなと気付きました。

そこで我々は、何が起きているのか?を全員ですり合わせるために、全員で行動データを見る定例会議っていうのを持つということをやりまして、これが非常に良かったなと思ってます。

「なんでここで離脱してるんだろう?みんなどう思う?」という問いかけをして、誰かがその分析結果を持ち寄った上で、いや私はこう思うよとか、それで合ってるとと思うよ、みたいな意見をまとめています。そうすると、どの意見が正しいか?ではなく、この可能性もこの可能性もあるからとりあえず試してみようかっていう風土が生まれました。

ここで大事なのは、上がってきた分析結果に対して、「でもそれはこういう理由だからこうすべきだよ」と言ってしまうと、全然会議が盛り上がらなくなっちゃうことですね。それいいね、それいいねと言い続けて楽しんで取り組むことが凄い大事だなと思っています。

アフターデジタル型組織に必要なのは「否定せずに解釈や知恵を出し合う」力

小川様:追加で、そういう業務を回せる人材要件ってあるか?と事前に質問いただいていたのでお答えしますと、結論「仲間と楽しんで向き合える」ことが大事だなと思ってまして。

良い会議のコツとして、否定しない・意見はできるだけ拡散させながらこういう意見もあるよねと多角的に理解していくことが大事だとよく言われていますが、まさにこれができるか否かがまず第一条件かなと思います。

小川様:逆に、あまり要らないなと思ったのは、デザインや意匠表現のスキルですね。デザインが得意でないと「これダサいかもしれないな…」と自分の中で縮こまってしまいがちですが、会議体で議論すると「これ青にしたらもっと分かりやすいんじゃない?」とか「このフォントを変えるだけで見やすくなるんじゃない?」というように、皆で楽に話せるんですよね。なので楽しく向き合いながらやれるのがやはり大事だなと思っています。

一方で、報告レポートの数値とずっと向かい合い続けてきたような人は、逆にこのクリエイティブ表現が大事になった時においては、ビフォアデジタルなのでしょうね。古いのを切り替えてやっていかなければいけないなというところを凄い感じました。

beBit藤井(以下、藤井):私からより突っ込んでお伺いしてもいいですか?ビフォアデジタルとアフターデジタルの違いとしてよく「対話型組織」という点を話しておりまして。小川様が今やっていておられるように、皆さんでちゃんと議論を交わし、同じユーザー像を持ったり皆の知恵を集めたりすることで、チームで良い改善を重ねていくという。

この組織を作るにあたり、このような活動に向いている人とそうでない人の違いをもっと深く理解できると嬉しいなと思っているのですが、いかがですか?

小川様:結論は、箇条書きにできるか否かというところかと思っています。

誰でも「結果は0.5%でした」とまでは言えるできるんですけど、これが何を示しているのか?という話になると箇条書きできないこともあるじゃないですか。だからこそ、成果が上がらなかった際にも、それがなぜなのか?を皆で共通して話せるようなイメージを作れることが大事だなと感じています。

古いアプローチっていうと、「結果は0.5%でした」の後には、「競合のサイトがこう謳っているから自社でもこう書こう」というステップで進めますが、これは箇条書きといういうよりはデータをただ羅列している感じのレベル。

ただ、人間に感情や行動を起こさせる場合って、データを羅列するんじゃなくてやっぱ最後は感情の変化を把握せねばと思ってます。実際にどう表現するかを考える時には、その人になりきって心情変化を追っていくことが大事だと神保さんにもアドバイスいただいてましたが、ここがビフォアデジタルとの違いかなというイメージですね。

藤井:なるほど。環境変化の要因は本当に様々あるので、先ほどの「運動会と鮭おにぎり」の話のようにプロセスを読み解かないと、同じ変化が起きているように見えても実際に起きていることは違ったりするので、ソリューションの質が変わってくるみたいな話ってやっぱりあるよなと思うんですよね。

まさに仰っていただいたように、数字だけ見ていると分からない一方で、皆の知恵を合わせていくと「今こんなことが起きてるらしいよ」「まじで?そうなんだ」というように、皆で理解しながら対応していくことができるのだなと改めて理解しました。

「妄想会」を重ね、ABテストの勝率も7割台に

小川様:ありがとうございます。その行為を「妄想する」と読んでいるんですけど、「妄想会」みたいなのをみんなでやる感じですね。行動データを見ながら、「ああこの人はモテなさそうだね」みたいなのまで妄想すると盛り上がりやすかったりします(笑)

そう考えると、会議での巻き込む力もすごい重要ですね。やり方がよく分からないうちは、何をどう見ればいいかもよく分からなかったんですが、導入後に御社に3~4回ぐらい研修会をやっていただいて、その中で分かるようになった感じですね。研修会ではメンバーからも色々な考え方が出たのですが、神保さんは「違います」とは言わなくて、だからこそ皆が気軽に話すことができ、その雰囲気を持ち越したまま自社でもできたことが非常に大きいかなと思います。

beBit神保(以下、神保):会議設計は、おっしゃるとおり凄く大事だなと思っています。一方で、私も色々なお客様をご支援する中で、マーケティング業界は特に目先の数値成果を求められることが凄く多いなと感じておりまして。行動データを導入したことで目に見えるマーケティング成果に繋がった事例があれば、合わせてお伺いしたいです。

小川様:目に見える結果はかなり実はありまして。他社さんから見ても凄いって言ってもらえるのでは、というレベルまで出たものもございます。

弊社のサイトは比較サイトからの流入が結構あるのですが、流入後10秒もせずにすぐに抜けてしまうユーザが多かったんですね。比較しているということは、他社との違いが何か?などをちゃんと確認したいんだろうなとみんなで妄想しました。

そこで、比較サイトからの流入後にうまく自社の強みを表現できないかな?と思いました。他社を批判する比較は我々のポリシー的に無いなという思いがあり、「自己評価」コンテンツを作りました。これによってCVRが5倍以上になりました。

比較サイトから何度も流入してるよね、というデータとコンバージョンデータを見るだけだけど、絶対気付かなかったようなアプローチを取ることができ、大ヒットさせることができましたという事例です。

あとはもう1つありまして。

我々は「外資系企業への転職に強い」というブランドがありまして、外資系キーワードといわれるリスティングのカテゴリーをすごい重要視しているんですが、そこでも入ってきてから何度も離脱してしまうケースが多かったんです。

これを見て、ユーザは「指名で流入した後でも色々情報を調べていて、その中で(この会社は)外資に強いのねと理解いただくことで、登録して下さってるのでは?」と思いました。我々は当時LPが一枚しかなかったのですが、試しに外資向けにLPを切り分けて配信みたところ、成果が明確に上がりました。藤井さんの話の「UXのアップデート」の事例だと思うのですが、こういう情報を掲載すれば外資系の人もCVしてくださるはず、というところが行動データから分かった事例です。

これは定例会議の中で行動データを見ている中でそういう結論になり、自然と必要なLP作成に移行できて、自然と成果が上がったという事例でして。このような議論を毎月毎月行うことができていまして、ABテストの勝率も1割台から7割台にまで急増しました。

組織としても、このような取組はやれば成果が上がるよね、というレベルまでに来てるので、結構楽しく取り組めているという状況です。

神保:ありがとうございます。初めてお伺いした事例と数値成果の話もあって、私も凄い嬉しくなりました。

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