部署を超えた合意形成が進まないというよくある課題
横串のUX・CX担当部署の提案に、他の事業部が乗り気ではない
一口にUX・CX部門といっても、その中で抱える課題は企業によって様々です。しかし、多くの企業に共通する課題として「UX・CX部署の提案に他部署が乗り気ではない」というものがあります。
ある企業のCX部が他部署に改善提案をしたところ「本当にそれで成果出るの?ずっとその仕事のこと考えているのは私たちだから任せてよ」と言われ、強く言い返せなかったそうです。これは、横串機能としてUX・CX改善活動を行う上で起こりがちなケースの1つです。
日々業務を行っている現場と、横串機能を持ちUX・CX改善を推進していくチームとでは、視点・考え方が初めから揃っていることはなかなかありません。しかし、サービス品質を向上させたいという思いは同じはずであるため、共通の課題認識を作ることができれば、連携をスムースに進めることができます。
「ユーザ行動観察調査」の生々しいインプットで事業部が動く
部署を横断して共通の課題認識を持つためのアプローチはいくつか存在しますが、その中でもユーザ行動観察調査が有効なケースが数多くあります。ユーザ行動観察調査とは、ユーザが企業のサービスを利用する様子を観察し、サービスの課題・あるべき姿を精緻に見極める方法です(ユーザ行動観察調査について詳しくはこちら)。
実際のユーザがサービスを使い、迷ったり困ったりしている姿を目の当たりにすることは、複数部署のメンバーが共通の課題認識を持つための気づきを与えてくれます。目の前でユーザが、自分たちの意図とは異なる行動をする様子を見ることで、「これはまずいぞ」と思わせることができ、強い問題提起になるのです。共通の課題認識を持つことで、複数の事業部が一つになって改善を進めやすくなります。
具体例:システム部門も「マズイね…」となり、改善に協力的に
ビービットがご支援したあるプロジェクトでは、企画部門の中では、サービスが使いづらいことの合意は取れていました。しかし、システム部とは同じ課題認識を共有できなかったため、別の開発を優先されてしまい、改善のスピードが上がらないという悩みを抱えていました。
そこで、該当サービスのユーザ調査をシステム部の方にも見てもらうことにしました。すると、そもそもログインすらできていない様子を目の当たりにし、「これはマズイね…」という発言につながり、以降のサービス改善がスピーディになるという効果がありました。
合意形成の観点からみたユーザ行動観察調査の特徴
「行動という事実」を複数人で観察でき、合意形成に有効
ユーザ行動観察調査は、実際のユーザがサービス・アプリなどを使っているところを複数人で観察するため、「行動という事実」を共有することができます。事実を否定することは難しいため、関係者が議論をする上での共通の土台にすることができます。
VOC分析では課題の背景が見えづらく、他部署間での合意形成が難しい
ユーザ行動観察調査以外にも、ユーザに関するインプットを得る方法はあります。それぞれと比べて何が違うのか、また、ユーザ行動観察調査がなぜ他部署との合意形成に効果的なのかをまとめました。
例えば、VOC分析では、「課題がどこにありそうか」は見当がつけられても、「その課題がなぜ起こるのか」といった課題の背景に関するインプットは得られません。そのため、共通の課題認識・改善方向性の議論には不十分なことがあります。
例えば、「解約手続きがわからない」というVOCがあったとして、解約ページにたどり着いたのか/どこからどのページに流入したのか/(適切なページに流入したとして)解約ボタンは見つけられたのか/どのようなメッセージが伝わりそれは適切なのか、等の状況がVOCからはわからず、課題の背景の認識に幅が生まれてしまいます。
一方、行動観察調査では目の前でユーザの一連の行動を観察できるため、ユーザがどのような経緯でどこでつまづくのかが一目瞭然でわかります。立場や視点のちがいがあっても、ユーザの生の姿をみてもらうことで課題について同じ認識を共有しやすいのです。
「意見」を聞くユーザインタビューも合意形成に有効だが、解釈に注意が必要
ユーザインタビューも、ユーザ像・サービスの課題を知るための定性的なインプット収集方法の一つです。課題に対して、ユーザに背景を深堀して聞くことができるため、他部署の巻き込みには有効です。しかし、意見は多様なバイアスを含んでいるため、その分析・解釈には注意が必要です。
ユーザの意見を鵜呑みしてはいけないという、グループインタビューの事例があります。ある食器メーカーが行ったインタビューで、「どんな食器が欲しいか」と問いかけると、「おしゃれな四角い黒いお皿」という結論だったにも関わらず、インタビューのお礼としていくつかの食器の中から1つ選んでもらったところ、インタビュー参加者が持ち帰ったのは丸くて白いお皿だったというものです。
以上のように、意見は必ずしもユーザの真のニーズを表しているとは限らず解釈の難度が高いため、他部署の巻き込みには一定効果的でも、間違った方向性に向かってしまう可能性があります。
行動観察調査の内製化で、低コストで継続的な提案ができる
ユーザ行動観察調査を、ビービットがスポットで行うことは可能です。豊富な経験があるため、難易度の高いテーマでも、質の高い課題分析・提案が可能です。しかし、UX・CX担当部署の場合、継続的に事業部を巻き込んで、提案をしていく必要があります。その場合、それぞれの対象部署の数に応じて調査の回数が増え、コストが嵩んでしまうため、調査の内製化をおすすめしております。
実際に内製化するにあたって、どのような壁があり、どのようにして乗り越えるべきかについては、記事の後編でご説明します。ビービットの多くの内製化支援の実績を基に、具体的にご説明いたします。
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