としてユニットエコノミクスを捉えています。
ユニットエコノミクス自体は管理会計の手法の1つで、事業の経済性をユニット単位で測定・管理するという考え方です。ユニット単位は商品でも、店舗でも、顧客(アカウント)でも問題ありません。よく見かけるP/L(損益計算)のように期間で区切るのではなく、店舗であれば、店舗毎に長期的な経済性を可視化し、評価するのが特徴です。(もちろん現実の計算上は時間軸を無限に取ることはできませんし、通常の投資には回収期間の制約が存在するため、長期の期間で区切ったり、サービスの「解約率」などを用いて計算します)
ビービットは1人ひとりの体験に着目したビジネスの実現を目指しているため、ユニット単位として「顧客(アカウント)」をベースに導入を検討しています。難しい話はさておき、「1人ひとりの体験と長期的な関係性で事業を評価・管理する」というのが大切な点だと思っています。
期間というのは、基本的には税金や株式配当を基準にした考え方です。それに対して、顧客との関係性を基準とするのが顧客単位のユニットエコノミクスだと考えています。
お客さまと繋がることでビジネスを発展させる
ユニットエコノミクスの性質を理解するために、まずは「店舗単位」の経済性を考えてみます。例えば、スーパーマーケットを出店しようと考えた時、初年度は大きな設備投資が必要で、かつ、顧客開拓にも取り組まなくてはいけないため、利益はあまり出ません。
しかし、単年度で利益が出ないからと言って、出店を取りやめたり、広告を出さなければ、店舗出店を成功させることは難しくなります。店舗のビジネスを考えると、初年度は利益をある程度は度外視しても大きく投資を行い、長期的にたくさんのお客さまに愛される店づくりを目指すことも大切です。
実際には設備は資産として減価償却したり、リースを活用すれば経費化できるといったように会計上の取り扱いは様々ですが、「店舗ごとに長期での収益を考慮して、経済性を判断する」と考えると、シンプルに長期的な視点で店舗ビジネスを発展を考えることができます。
顧客単位のユニットエコノミクスでは、「顧客ごとに長期での収益を考慮して、経済性を判断する」ということになります。スタートアップがユニットエコノミクスを活用するのは、最初から利益を追うのではなく長期での収益を見据えて、たくさんのお客さまと良い関係を築き、プラットフォームになることでビジネスの大きな成功を狙うからです。
その背景には、
- 技術によって、お客さまと繋がり続けることのハードルが小さくなった
- プラットフォームとネットワーク効果を活用したビジネスモデルが大きな力を持つようになった
という、デジタル化の2つの効用があると考えています。
お客さまに良い体験を提供し続けることで長期的な信頼関係を築き、その結果として収益も大きくなっていく。体験が優れていれば、より多くのお客さまと繋がることができて、ビジネスとしての成功も大きくなる。
デジタルビジネスにおいてUX(User Experience、ユーザ体験)が声高に叫ばれるのも、こういった思想とお金の動きが背景にあります。
実務に落とし込む際は(ほとんどのケースではもちろん年次でのP/Lも無視できないため)細かなチューニングやKGI・KPIのコントロールが必要ですが、今回は「顧客単位のユニットエコノミクス」が持つ思想について簡単に説明してみました。
体験と信頼(繋がり)、収益、それらを支えるより大きな価値提供の循環をしっかりと築いていけると良いなと思います。
参考 : デジタル化と体験の関係については、「デジタライゼーションと体験中心ビジネスシステム」も参照。また、スタートアップにおけるユニットエコノミクスについては、「スタートアップのお金と指標入門講座:ユニットエコノミクス (Unit Economics) — CAC & LTV(外部サイト)」を参考にさせていただきました。