どんなプロジェクトだったのか?
「MISUMI FRAMES」はこれまでCADと呼ばれる設計ソフトを利用して設計していた方から、設計初心者の方まで幅広いユーザに利用してもらうことを狙って、アルミフレームの設計、図面・部品表作成、部品発注・購入がワンストップで行えるサービスとして開発が進められていました。
ただ、当初のベータ版は機能面では一定の評価は得られていたものの、使いやすさの面で基本的な操作につまづくユーザが多く、このままリリースしてもミスミ様のサポート工数がかさんでしまう、という状況で弊社にご相談いただきました。
プロジェクト概要
- クライアント:株式会社ミスミ
- 対象プロダクト:MISUMI FRAMES (工場設備・装置のカバー・架台などで使用するアルミフレームの設計・発注ツール)
- プロジェクト期間:9週間
- 実施内容:チュートリアル・初期設定および、主要な操作画面について、開発中の機能要件への改善提案・UX/UI方針および具体的なイメージを設計
ユーザ行動観察調査を繰り返し、だれでも使えるUX/UIへ(自走率90%)、圧倒的な工数削減も実現
このプロジェクトの特徴は、ツールを改善することで、ミスミ様およびユーザ企業の両方にとって、圧倒的な業務負荷の軽減を実現した点です。
結論からいうと、だれでも自走できるようにUX/UIを磨き込み自走率90%を達成、そしてユーザに最大で90%の作業時間を削減できると実感いただくことに成功しました。
これは、①ツール自体のUX/UI改善という視点だけでなく、②ユーザ業務への貢献という視点を持ってプロジェクトを進めた結果といえます。
まず、使いにくい要因を徹底的に消し込む
具体的に何を行ったかですが、まずは、最低限ユーザが自力で使えるツールにしていくため、複数回のユーザ行動観察調査を実施し、使いにくい点を消し込んでいきました。
調査の初期段階で明らかになったのは、「そもそもソフトの概念が理解できず、はじめの1本目のフレームが設置できない」「メニューに気づかずやりたい操作ができない」「配置の開始や終了の操作がわからない」「普段使っているCADソフトと使い心地が異なりストレス」等の課題でした。
これを踏まえて更にソフトウェア本体のUIや、こまかな機能の改善案をミスミ様に提案していきました。
そのほかソフトウェアの概念を理解するための紹介資料や初期設定メニューの改善、操作タイミングにあわせた補助や機能のレコメンド、チュートリアルのUIや動画案の作成などを実施。
結果、最初のバージョンを使った調査では多くの方が操作に挫折しましたが、改善案のプロトタイプでは90%以上の方が自力で操作を完遂することができました。
ユーザが離れない状態になっているだろうか?を考える
ここまでの過程でツールは使いやすくなり、現場の工数も削減できることがわかりました。
でもそれでユーザが離脱しない状態になっているのか、使いやすいツールではなく、なくてはならないツールになるためにもっと業務効率化に貢献できないか?を考える必要がありました。
アルミフレーム自体は設備機器の台やカバーに使うもので、業務全体の中での優先度は実はあまり高くありません。ただ使いやすいだけでは新たにユーザになってもらうためには不十分で、とにかく短い時間で手間をなるべくかけずに一定品質の筐体が設計できることがユーザにとっての価値だと捉えました。
実際に設計業務に携わっているユーザに丹念にヒアリングをおこない、どうすれば圧倒的に業務負荷を削減できるかを検討しました。
そこで、あるユーザの「筐体を1から設計することは少なく、社内で以前に設計した図面を流用・調整しながら使うことが多い」という発言がキーになりました。
MISUMI FRAMESにもテンプレートを作成したり、作ったフレームをテンプレとして保存する機能は存在していましたが、ツール上で目立たない場所にあり、操作性も十分ではないためユーザに気づかれず、仮に気づいても価値に感じられない状態でした。
それを踏まえ、
- 設計データという資産が蓄積されていない現状から蓄積される状態にしていくことが圧倒的な効率化の鍵。MISUMI FRAMESを使うことで、どんどんデータがたまり、それをテンプレートとして使えるようにしていく
- 上記を促すために、「直感的にフレームを設計できる」という当初のコンセプトにとどまらず、「テンプレートが使える・設計をテンプレートとして保存できる」機能を強化・強調する
といった点を、企業にとって不可欠なツールになるための方針として、ご報告の中でお伝えしました。
ユーザ調査でも、数名のユーザに、1週間ほどベータ版を貸し出して使っていただいたところ、こうした改善のポイントをプロトタイプとしてお見せした結果、「これいつ出るんですか?早く業務に使いたいです!」「テストが終わった後も使い続けていいですか?」という声をいただきました。
圧倒的な業務負荷の軽減を実現した先にあるもの
UX/UIデザインの中で、プロダクト・サービスのユーザ体験を改善し効率化していく「グロース」と呼ばれる領域では、ユーザビリティ・UIレベルの論点が中心になります。
一方、UX/UIデザインの中には、サービスやプロダクトの「コンセプト」から捉え直し、体験を大きく変革する、という領域もあります(ビービットでは「コンセプト」を、ユーザに提供する価値や意味合い・ユーザをどう幸せにするか、と定義しています)。
もともと、今回のミスミ様とのプロジェクトも前者の「グロース」にあたるものでしたが、ただ、使いやすいだけのツールにするのではなく、徹底的に使いやすくし、圧倒的な工数削減を行うというアプローチが、結果として「MISUMI FRAMES」のコンセプトをアップデートすることになりました。
このように、ビービットは「使いやすくしたい」という要望から始まったプロジェクトでも、常に「使いやすくしたい」のはなぜか、その先の成果は何か、というところまでを考えます。今回は、その考えがよく体現できたプロジェクトだったと考えています。
ユーザの声紹介
- それほど複雑ではない筐体設計がほとんどのため、テンプレートで簡単に形状を作れるメリットが大きい
- 1週間かかっていた作業が、これなら2時間でできそう。他ツールでやると20倍はかかる
- とにかく速くできる。今まで自分なりのやり方があったけど、このツールを使うとミスミの標準的なやり方に自動的に寄っていくので、結果速い
プロジェクト後のMISUMI FRAMES
プロジェクトの中で明らかになった、機能・UI面の課題を逐次反映してくださっており、結果として今年2月のリリースから4か月で早くも1万ユーザを突破したそうです。これだけたくさんの方の業務負荷削減に貢献でき、私も非常にうれしく思います。
また、WEBサイトでのコミュニケーションもプロジェクト開始前の状態から大きく転換されています。
もともとは「絵を描くようにフレームを引ける」ことを主に打ち出していましたが、「筐体設計時間を最大90%削減」など、プロジェクトを通じて明らかになったベネフィットを訴求する内容にブラッシュアップされています。
ミスミ様コメント
本取り組みでは約2か月という非常に短い期間の中で、数多くのインサイト及びUX/UIの改善点を抽出していただき、ビービット様には本当に感謝しています。
本調査で得られた改善案にさらに磨きをかけ、よりよい使いやすさを目指していきたいと思います。
(ミスミ村上様)
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