アフターデジタルは状況ターゲティングの時代
インターネットの普及以降、ビジネスの世界では「属性ターゲティング」が当たり前に行われてきました。年齢や性別、あるいはアンケートで把握した興味関心などによってセグメントをわけ、ターゲットとなる属性を設定し、それに合わせて商品・サービスを企画する、という考え方で、そこではターゲティングの最適化が求められます。
これに対してビービットが捉えている「アフターデジタルな世界」では、属性データに加え、移動やリアルでの買い物の履歴など「これまではデータとして残らなかったような行動に関するデータ」が大量、かつ高頻度で取得できるようになっていきます。
そうなると、ユーザ行動の文脈が可視化できるようになり、ユーザの「状況」を捉えられるようになります。属性ターゲティングの時代には商品とターゲット属性のマッチング最適化が求められていましたが、状況を捉えられるようになると、最適なタイミングで、その人に合ったコンテンツを、その人に合ったコミュニケーション方法で伝えることが可能になります。これは、企業競争の焦点が製品による価値提供から体験全体での価値提供へと変化することを意味します。
そうなると、「良い商品を作れば売れる」状態から「良い体験が寄り添い型で提供され続けているところ、つまりは良いUXが提供されるところに人が集まる」状態への変化が起こります。
ユーザの状況をよく知らないと、適切なタイミング・コンテンツでのコミュニケーションが実現できず、ユーザからの支持を得ることができません。今まで産業界のトップに立ち、「良い商品」を作ることだけを目指してきたメーカーは、サービサーやプラットフォーマーの持つユーザの情報がないと、商品をうまく売れなくなったり、大量にユーザ数を抱えるサービサー・プラットフォーマーの提供するサービスの歯車としてのモノを提供するにすぎない存在になってしまったりします。
代わりに産業構造のトップにあがるのが、ユーザとの接点を高頻度・大量、かつ業界を横断して持っている、つまりユーザのことをよく知っている、決済をはじめとする行動データを抱えた「プラットフォーマー」。アフターデジタルな世界では、こうした産業構造の大きな変化が起きるのです。
こうした変化は、技術革新によってマーケットの定義が「属性ターゲティング」から「状況ターゲティング」に変化した結果だとビービットは考えています。
状況ターゲティングとは
ここで、状況ターゲティングについてもう少し説明します。
繰り返しになりますが、モバイル、センシング、IoTなど、リアルとデジタルをつなぐ技術革新のおかげで企業はユーザの状況を簡単に捕捉できるようになりました。例えば「面倒を見ている子どもが泣き止まないので困った」という状況。きっと多くの人がスマホを取り出して、誰かに対処法をきいたり、普段見ないような子ども向けの動画を探したりするのではないでしょうか。
これまでの属性ターゲティングの世界では、こういうときに役立つサービスを提供している企業は「母親」という属性をターゲットにしてきました。しかし、こういった状況に置かれているのは母親だけではありません。父親、兄姉、祖父母、おじおば、両親の友人、新米のベビーシッターなど、年齢も性別もばらばらな人たちが同じ状況に直面する可能性があるのです。
そこで、属性(人)ではなく「状況」にターゲティングする、という考え方が出てきます。現在は位置情報、ウェブサイトの閲覧状況、起動しているアプリなど、様々な情報からユーザの「状況」を推察することができますし、推察できる状況も様々です。どのような状況をターゲットにして、どのような良い体験を提供するのか。それが、アフターデジタル時代の戦略立案に必要な考え方なのです。
ビービットが提供しているのは、状況ターゲティングの実現支援サービス
アフターデジタルという世界観と、そこでは状況ターゲティングが重要になるということがわかっていても、企業の考え方を変えたり、実行に移していくのは簡単なことではありません。そこでビービットでは、アフターデジタル時代に適応するための変化を支援するサービスを提供しています。
解くべき課題は、先程の「アフターデジタル時代に必要な考え方」に含まれる次の3つ。
- どのような「状況」マーケットを捉えるのか
- そこに、どのような「体験」を、どのようなコンセプトで提示するのか
- 行動データによって、いかに「ユーザの状況を捉えた体験」を生み出し続けるか
これらの課題に対してビービットは、1と2を解くためにUXデザインコンサルティングサービス、3の実現を「USERGRAM(ユーザグラム)」というクラウドと人材育成のサービスで支援しています。
UXデザインコンサルティング:マーケットを見定め、「鍵となる体験」を作る
UXデザインコンサルティングの現場で最初に行うのは、意識している・していないに関わらず「ユーザが違和感をもっている状況」を発見することです。企業視点で言い換えれば、「マーケットとなり得る状況を見つけ出すこと」。
解決すべき課題を特定できたら、次はその違和感が解決されマイナスがプラスに変わった「幸せな状況」を描きます。商品やサービスの形よりも先に「ユーザに提供したい幸せな状況」を設定することで、企業からの押し付けにならずに、ユーザの体験に寄り添うことができます。
大切なことなので繰り返しますが、アフターデジタル時代は「良い製品」ではなく「良いUX」に人が集まる時代。ユーザの体験を大切にすることが、企業のためにもなるのです。
目指すべき幸せな状況を描けたら、それを実現するために「鍵となる体験」を設計します。ここでもあくまで体験が中心で、商品やサービスはそれを実現するための手段。しかしそれは、商品やサービスが二の次だということではありません。理想の体験を実現するためには、商品やサービスの作り込みが不可欠だからです。
ビービットではこうした方法論とこれまでの知見をベースに、幅広い領域のUXに関わるコンサルティングを行っています。
シーケンス分析クラウド「USERGRAM」:データ活用によるUX企画力向上をサポート
「良い体験」に人が集まるアフターデジタル時代では、一度リリースした商品・サービスについても、利用者の行動データを活用しより良いUXを生み出し続けていくことが求められます。
そして新しい体験を考えるのに必要なデータも取得可能なのがアフターデジタル。しかし重要なのは「どんなデータを取得し、どう次に活かすのか」です。
これまでのデータ分析といえば、アクセス解析ツールに代表されるような整理された集計データを扱うのが主流でした。しかし、こうしたデータだけを見ていても一人ひとりのユーザが何に困っているのかは見えにくいものです。それは集計データでは「状況」が見えないから。
ビービットでは、UX企画をするためには行動の順序や時間に着目したデータ分析が必要だと考え、これを「シーケンス分析」と呼んでいます。シーケンス分析をすることで、ユーザの状況に思いを馳せ、解決すべき課題を見極め、具体的な企画につなげることができます。
ここで、シーケンス分析が体験改善に有効だという例を見てみましょう。
金融系、人材系などの入力項目の多いフォームを思い浮かべてください。アクセス解析でそのフォームの入力ページの離脱率が高いという数字が出ていたら、入力項目をいかに減らすかを考えるというのが、これまでのデジタル部門の多くがやってきたことです。
しかしシーケンス分析をしてみたところ、入力ページで離脱したユーザはサービス名での検索から口コミページに戻ってきていたり、ブラウザの「戻る」機能でサービス説明まで戻っていることがわかったとしたら、どうでしょうか。ユーザは「入力項目が多いので挫折している」のではなく、「入力中に会社やサービスに対して不安を感じ、それを解消する情報を求めて検索したりサイト内回遊をしている」という状況にいることが見えてきます。
すると、デジタル部門がとるべき行動は、入力項目削減の検討ではなく、自社やサービスの信頼性がユーザに伝わるようにサイト利用体験を再設計することだとわかります。
このように、行動の順序(あるいは行動にかかった時間)がわかると、ユーザがどういう状況に置かれているのかが推察しやすく、解決すべき課題や具体的な改善企画が見えてくるのです。
ビービットが提供する「USERGRAM」はシーケンス分析を実現することに特化したクラウドサービス。ウェブサイトの閲覧行動やアプリの利用行動に加えて、来店やコールセンター入電といったリアル接点も含めて、ユーザ一人ひとりの行動が時系列で把握できます。
また、UX企画を日々の業務の中で実践していけるようになるためのトレーニングプログラムも用意されていて、スムーズにシーケンス分析という手法を使いこなせるようになっています。
詳しくは、USERGRAM公式サイトをチェックしてみてください。
状況ターゲティングの実現支援を通してアフターデジタル時代の企業を支援する
今回は、アフターデジタルとビービットのサービスのつながりについて解説してきました。
【まとめ】
- アフターデジタルは状況ターゲティングの時代
- これまでとは企業が考えるべきこと、マーケットの捉え方が大きく変わる
- ビービットはその中で企業が生き残るための支援サービスを提供している
アフターデジタルという考え方に共感し実践につなげたいとお考えの方は、ぜひお気軽にビービットまでお問い合わせください。