Date : 2018
09
26Wed.
「デジタルマーケティングでは、実は顧客が見えていない」プロダクトマネージャが語るUsergramの真の価値
事業のこと
USERGRAM
「デジタルマーケティングでは、実は顧客が見えていない」プロダクトマネージャが語るUsergramの真の価値
個々のユーザを見るためのデジタル行動観察ツールとして生まれたクラウドサービス「USERGRAM(ユーザグラム)」。2017年4月のサービス開始から1年半、大小様々な機能アップデートを重ね、”誰でも簡単にユーザの状況(モーメント)を捉えることができる”他に類を見ないサービスとして順調に成長してきました。
プロダクトマネージャとして開発初期から関わってきた三宅史生に、USERGRAM誕生の背景や理想的な活用状態について、語ってもらいました。
デジタルマーケティングでは顧客が見えない?
最初に、USERGRAMというクラウドサービスの概要を教えてください。
三宅:USERGRAMは、一言でいえば「デジタルマーケティングに関わる人たちがお客様を見るためのサービス」です。
現在、デジタル領域は大量のデータが取得できますので、それらのデータを通してお客様のことが理解できるようになってきたというのが、デジタルマーケティング業界の一般的な見方だと思います。
しかし、それは果たして本当なのか、というのが我々の持っている疑問です。
デジタルのマーケティングでは、お客様を目の前に見ることが出来ないため、お客様のイメージなく施策が企画・実行されていることが非常に多いと思っています。そのことが原因で、実は施策が的外れだった、ということが、認識されているよりもはるかに多く起きているのではないでしょうか。
そういった状況に対して、シンプルに「自分たちのお客様を見る」という業務を入れるだけで劇的な変化が起こるのではないかという思いから、「ただ単純にお客様を見る」サービスとして作ったのが、USERGRAMです。
USERGRAMの出発点になった「デジタルマーケティングでは顧客が見えない」ということをもう少し詳しく教えてください。
三宅:確かに、デジタルマーケティングに関わる従来のツールでは顧客の属性情報や、PV・UU・CVなどのログデータを見ることができます。
しかし、年齢層や購入の時間帯、場合によってはお名前までわかったとしても、そのお客様がどんな人で、なぜその商品を買ったのかをイメージできるマーケターがどれだけいるでしょうか。また、PVなどのまとまった数字を見て、サイトで何が起きているかをイメージできるマーケターも、同様に少ないと思います。
例えばコンビニやドラッグストアの店舗のように目の前にお客様がいれば、どんな人たちがどんな商品を買っていくのかの肌感があって、その上で商品配置を変えてみたり、キャンペーンエリアを作ったりできますよね。
デジタルでは、それがわからない。この時間帯に購入する人が多いからトップページに告知を載せてタイムセールをしよう、という企画があったとしても、実はその時間帯に購入する人はメルマガから流入するヘビーユーザで、トップページはほとんど誰も見ていない、なんていうことが日常的に起こり得ます。
お恥ずかしい話ですが、ビービットのコーポレートサイトも、USERGRAMを入れてみて初めて、流入してからすぐにお問い合わせなどのコンバージョンをする方が多いということがわかったくらいです。BtoBサービスなので、多少なりとも回遊して情報収集をするだろう、という思い込みがあったんですね。
お客様を見る、という意味では、例えばグーグルアナリティクス(Google Analytics、以下GA)のようなアクセス解析ツールもありますよね。USERGRAMとは何が違うんでしょうか。
先ほどの「流入してすぐにコンバージョンする人が多い」ということも、そういう目で見れば、GAでも根拠となるデータを出せたのだろうと思います。
しかし、GAに貯まっているデータは、ただ見ているだけでユーザに関する気づきを得たり、検証すべき仮説を見つけられるようなものではありません。
USERGRAMはユーザのモーメント(置かれている状況)が容易に類推できるように作られていますので、特に導入直後のクライアント企業様には、何か疑問に思ったことがあったときに都度USERGRAMで確認するクセをつける、ということをお勧めしています。
1つ、事例をご紹介しましょう。
いくつものホテル・レジャー施設を運営されているある企業様では、ウェブサイトは東京本社が管轄する領域と、各施設が担当する領域に分かれていました。
ある日、東京本社のサイト担当者様のところに、1つのホテルから相談がありました。そのホテルでは「日替わりランチ」に力を入れていて、部屋に置いた日替わりランチのチラシを見てレストランに来てくれるお客様が多いので、サイトにも毎日ランチメニューを載せたいと思うのだが、どうだろうか、というものです。
でも、毎日変わるメニューをサイトにアップし続けるのは大変ですよね。
そうなんです。そこで本社のご担当者様はUSERGRAMを開き、「宿泊当日に、宿泊先のウェブサイトを見ている」というモーメントにあるお客様がどれだけいるのかを確認したのです。
その結果わかったのは、宿泊当日にサイトを見るお客様は少数派、見ているコンテンツもホテルへのアクセス情報など限られたものだけ、ということでした。ということは、当日のメニューを掲載しても、実際にそれを必要とするお客様に見ていただける可能性は低いということです。
検討の結果、宿泊予約時によく見られるページに「日替わりランチをやっています」というご案内だけを掲載する、という方針が決まりました。これなら、毎日メニューの情報を更新する必要もなく、予約段階で日替わりランチがあることを伝えることができます。
不要な労力をかけることなく、効果を最大化できたわけですね。
我々が提唱する「モーメント分析」とはまさにこういった行為です。
ここで考えたいのは、もしこの検証をせずに毎日のランチメニュー掲載を実施して、あとからアクセス解析ツールで定量的な効果検証をしたら、PVは一定集まって施策は成功だった、という評価になっていたかもしれないということです。
情報が掲載されれば、それに気づいてページを閲覧する人は増えると思われます。PVは一定数集まるでしょう。でもそれが、本当に届けたい人、今回の場合でいえば宿泊当日のお客様に届いているかは、わからないままなのです。
そうではなく、モーメントを捉え、お客様の真の状況に寄り添うことが必要だと思います。
デジタルマーケターは皆さん多忙です。数値だけ見て、CVが多いから残す・少ないからやめる、という短絡的な判断や、上司の思いつきで降ってくる施策に振り回されることも多いでしょう。
我々が提案したいのは、その施策に効果は見込めそうなのか、実施した施策は本当に狙い通りの効果を上げたのかを、USERGRAMでシンプルにお客様の行動を見て状況を把握することで、手軽かつ確実に見極めていくという業務の進め方なんです。
USERGRAMでデジタル領域に顧客実感を
USERGRAMは、どんな企業に向いているのでしょうか。
施策について、確かな根拠に基づいて判断し、改善していきたいとお考えの企業様には、業種や規模に関わらずお役立ていただけると思っています。
その中でも、お客様と長期的な関係を築くような企業様や、カスタマージャーニーの中でデジタル接点の占める割合の多い企業様は、特に価値を感じていただきやすいですね。ECサイトはどちらも当てはまりますから、すでにご活用いただいているクライアント企業様も多いですよ。
例えば、以前取材させていただいたフェリシモ様は、老舗ECを運営されている企業様です。
最近は、前回取材させていただいた段階からさらに、チーム全体でUSERGRAMを活用する文化が浸透しているそうです。ことあるごとにUSERGRAMでお客様を見ているので、上長様に施策の提案をするときも「ほんとにそんなお客様いるの?」と聞かれるくらい、組織がユーザ中心になってきているとか。
施策の企画が持ち上がったときに、「USERGRAM見てから考えた?」と言い合えるチームになるのが、我々が描いている理想状態です。フェリシモ様は、まさにそれを体現してくださっている形ですね。
最後に、今後のUSERGRAMについて教えてください。
AI・ビッグデータ解析を強みにしていた株式会社トライディアとの統合以降、開発スピードは加速しましたし、データサイエンスの技術基盤の上で、検討できる機能の幅も広がりました。
具体的には、今よりもっと「見たい・見るべきユーザを簡単に見られる」ようにする機能や、蓄積したビッグデータを有効活用した解析・集計機能、AIによるモーメントサジェスト機能、チーム内での共有・ディスカッションを活発にするような機能を考えています。
繰り返しになりますが、チーム内・企業内で何かにつけてUSERGRAMを見るという状態が理想です。「単なる数字としてのデータ」に留まらない、ユーザそれぞれのモーメントを捉えることで、企業・組織全体でユーザ中心に物事を考えるようになっていくと考えています。もちろん実際にお使いいただいているクライアントの皆さんのご意見も伺いながら、どんどん便利にしていきたいですね。
これからの世の中は、ますますデジタルの仕事が増えていくと考えられます。そのときに顧客実感のない仕事が増えていくと、今のデジタルマーケティング業界のような、効果のわからない業務を大量にこなさなければいけない人たちが増えることになります。
そうならないために、デジタルでも顧客実感をもって仕事ができるようにしていくのが、USERGRAMの果たすべき役割だと思っています。
組織全体で、いろいろな人がそれぞれの理由でUSERGRAMを使って、顧客の一次情報を見ながらコンセンサスをとったり発見を共有したりして、顧客を中心に仕事がぐるぐるまわっていく。そんな世界観を目指して、これからもUSERGRAMは進化していきたいと思っています。