第20回 マナーとしてのアクセシビリティ

さまざまなユーザの身体的・認知的特徴をおさえた上でアクセシビリティの高いサイト制作が、ますます重要となってくるでしょう。

今年の注目ポイントの3つ目は、アクセシビリティに関してです。

2003年もインターネットの普及が進み、ユーザの裾野はさらに多くの子供から高齢者、また障害者まで広がっていくと予想されます。これらのユーザは、若年層が問題なく使用できるサイトで戸惑ったり、またそもそもそのサイトが使えなかったりすることが多くあります。これからは、それぞれのユーザの身体的・認知的特徴をおさえた上でのサイト制作が、ますます重要となってくるでしょう。

高齢者への配慮

特に、在宅が多い高齢者ユーザは今後益々増加することが予想されます。

高齢者ユーザは、年齢の増加に伴い視力が低下したり、また思うように指先が動かないなどの身体的特徴を抱えることが多く、モニタ上の小さな文字が読めなかったり、細かなマウス操作が難しい場合があります。そのため、文字サイズはユーザが自由に変えられるようにしておきましょう。また、リンク範囲は十分に取り、簡単にクリックできるようにしておきます。

特に、FlashやDHTMLを使いマウスオーバーによってメニューが表示される形式は、正確にクリックするのにミリ単位のマウス操作を必要とします。これは、普通の道にでこぼこがあったら、誰でもつまずいてしまうのと同じで、高齢者にとっては多大なストレスを与えるのみならず、若いユーザにとってもミスを誘発してしまう可能性があります。できる限り避けた方が無難です。(詳しくは、シニア向けサイト構築【前編】シニア向けサイト構築【後編】参照)

マナーとしてのアクセシビリティ

ここで、自分が運営するウェブサイトのターゲットユーザは若いから、このような対策は必要ない、という意見もあるかと思います。もちろん、ターゲットユーザを設定し、そのユーザにとって必要な情報を提供するのが大前提です。

しかし、できる限り多くの人がアクセスできるよう、読みやすさ、操作しやすさに配慮しておくことは、誰がアクセスするか分からないインターネットという世界におけるマナーだと考えるべきではないでしょうか?

少なくとも高齢者の方は、「自分は高齢だから、高齢者向けのページ以外は見るのをやめよう」とは考えていません。若年層と同じように、興味のある様々なページを見たいと考えるでしょうし、そうでなければインターネットが楽しいとは思わないはずです。これは子供でも障害者の方でも同様です。実際、私の知り合いの60歳になる方は、「MSN」や「2ちゃんねる」を閲覧しているそうです。

今後の動き

アメリカでは、このような考えに基づいたウェブサイト制作ルールが法規制化されています(リハビリテーション法508条)。日本においても同じような動きが予想されますので、今の段階から最低限のルールはきちんと理解しておきたいところです。

設計時に少しの配慮を行うだけで、使用可能ユーザ数を伸ばすことができるメリットがあるのも事実ですので、義務的な側面からだけではなく積極的に取り組みを進めると良いでしょう。

以上