多くの企業において「リソースが限られる中、改善の優先度を決められない」「WEB・アプリのどこに改善余地があるかわからない」というお悩みがあります。
この記事ではどうすれば限られた工数の中で課題認識をチームで揃え、改善を実践するべきかの判断を下せるようになるかを解説します。
限られた工数の中で課題認識をチームで揃え、UX改善業務を実践するべきかの判断を下すために必要なのは既存のデータを根拠とした仮説立案です。
まず、効果の高い改善施策とはなにかを考えてみましょう。
改善すべき有効な箇所とはすなわち、現在のサービスにおけるボトルネックです。
ボトルネックは、既存の解析ツールで取得しているアクセスデータから定量的に導き出すことが可能です。
しかし、ただデータを見るだけではボトルネックはなかなか見えてきません。
そこで必要となるのが「理想とする顧客体験」の絵姿です。
ユーザがCVにいたるまでの検討状況の推移や気になるポイントをマッピングしていくことで、サービス側が提供すべき情報や、ユーザが離脱するタイミングや理由が見えてきます。
この「理想とする顧客体験」と現状のサービスとのギャップを元に、改善ポイントを明確にすることができれば、会員数・CVR・解約率などのサービス運用における重要な指標をもとに、UX改善に取り組んだ際の売上インパクトを試算も可能になります。
この試算を自チームおよび他部署に共有することで、改善に取り組むことの重要性を示せます。
また、改善ポイントが明確になれば、次の打ち手を決めることも容易になります。
抽出された問題点からボトルネックの発生要因についての仮説を出しましょう。
仮説に応じた改善案は複数考えられるケースが多いですが、その取捨選択においても、事前に描いた「理想とする顧客体験」が基準となります。
具体的に、個別の施策で改善すべき領域を特定できた事例をご紹介します。
事例:個別の施策においても効果の高い改善箇所は見落とされがち。既存データから有効箇所を発見することが重要。
ECサイトにおいて、有効な改善領域を見極めることで、新商品の売上が140%になった事例を紹介します。
あるコスメECサイトでは、肝いりの新商品をリリースしたことに伴い、キャンペーンページを作成しました。
そして、もっともPV数の多いトップページの上部に、キャンペーンページへの誘導バナーを大々的に設置しました。
しかし、結果はふるわず。
購入に至らないどころか、そもそもキャンペーンページにアクセスするユーザでさえ少ない状態でした。
ユーザはトップページをほとんど見ていなかった
成果が出なかった理由はなにか。成果を出すにはどこを変えるべきか。
クリエイティブの問題なのか、バナーを出したタイミング(領域)がよくなかったのかを特定するために、担当者はWebサイト上の各ユーザの行動を確認することにしました。
特に、キャンペーンページを閲覧したユーザの行動に絞って観察してみると、ユーザは想定していなかった行動を取っていました。
ユーザの多くはトップページに流入したとしても、トップページでの滞在時間はとても短く、すぐにページ右上のハンバーガーメニューをクリックし、購入履歴やいつも購入する商品カテゴリページに移動していました。
その後にたまたまトップページに戻ったユーザだけがキャンペーンバナーをクリックすることがある、ということが実際には起きていたことだったのです。
改善すべき箇所を見極めて、売上が1.4倍に!
つまり、トップページはPV数は多いものの、商品を探すページではなく、別のページにすぐに移動するページでした。
百貨店に例えるなら、トップページはメインエントランスのような場所であり、商品を探す商品棚ではなかったのです。
ユーザにとって商品を探したり比較検討する商品棚のような場所は、このサイトにおいては各カテゴリページでした。
であれば、クロスセルを訴求すべきタイミングも見えてきます。
くわえて、施策を打つ前に、現時点のカテゴリページで離脱してしまっているユーザの割合を出し、伸びしろがありそうか否かも確認しました。すると、離脱者の割合が特に高かったため、改善の優先度が高いこともわかりました。
そこで、担当者はキャンペーンページへのバナーを商品カテゴリページに置くことにしました。
すると、キャンペーンページの閲覧がぐんぐん伸び、キャンペーン商品の売上が40%もアップしました。
この事例では、もともと注目していた箇所よりもユーザがより行動を喚起できる箇所を見つける事ができました。
このように、改善すべき領域の特定には行動データやGoogle Analyticsのデータが大変役に立ちます。
むやみに施策を重ねてもなかなか成果が出ないというのがデジタルマーケティングの難しいところです。
しかし、データをもとに仮説を立て、検証を繰り返していくことで、ユーザの姿が見えてきます。
見えてきたユーザの姿を元に「理想とする顧客体験」を描き、現状のギャップとなっているボトルネックを洗い出していけば、改善の優先度も判断できるようになるのです。
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