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カスタマーサクセスとは? 立ち上げから運用までの取り組みと施策例

2022.01.17 Mon.

カスタマーサクセスとは? 立ち上げから運用までの取り組みと施策例

キャッシュレス決済にコンテンツのデータ配信など、社会のデジタル化は急速に進んでいます。
そんなデジタル化によるビジネスの変化=デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れを受けて、新たなアプリ・デジタルサービスとして継続利用型、サブスクリプション型のビジネスに取り組む企業も増えています。
この記事では、そんなデジタル新時代において、サービスの利用継続率を高める「カスタマーサクセス」について解説します。

カスタマーサクセスとは? 言葉の意味と誕生の経緯

カスタマーサクセス(Customer Success)とは、そのまま直訳すると「顧客の成功」ですが、実際にビジネス上で使われている意味は「顧客の望む成功の支援」です。これは、考え方や行為だけでなく、職種や組織、業務内容を指すこともあります。

Salesforce社の創業者 Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が広めた概念で、顧客を獲得してもすぐに流出する状況を憂い、既存顧客のフォローを手厚くすることでサービスの利用を継続させることに成功しました。

カスタマーサクセスの教本と呼ばれる『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』(通称、青本)では、カスタマーサクセスを「CS=CO+CX」と定義づけています。COは顧客が得た成果や結果(Customer Outcomes)、CXは顧客が得た体験(Customer Experience)を表しています。

例えば、顧客がサービスを利用して売上目標達成という成果を得たとしても、その結果に至るまでに苦労し、物凄く時間がかかっていれば、顧客体験は好ましいものではないため、自社サービスより使いやすいものが出てくれば解約される恐れがあります。カスタマーサクセスでは、十分な成果と良質な顧客体験の両方が重要なのです。

カスタマーサクセスの重要度が増した背景

米国ではすでに一大潮流を生み出し、日本でも先進的な企業が次々に始めているカスタマーサクセスへの取り組み。その背景には、ビジネスモデルの転換が大きく関わっていました。

社会のデジタル化が進んだ結果、消費者は「モノを買う」だけでなく、「サービスを利用」できるようになりました。分かりやすい例としては、Amazon社が提供するPrime Videoや、音楽ストリーミングサービスのSpotifyなどです。

こういったサービスはSoftware as a Service(SaaS)と呼ばれるもので、従来は製品として売られていたものが、現在はインターネットを通じて利用できるようになりました。先ほどのPrime VideoやSpotifyを例にとると、ビデオやDVD、音楽CDなどが従来の製品にあたります。

サブスクリプション、フリーミアムビジネスの台頭

SaaSには月額○円のように固定費がかかる「サブスクリプション型」や、導入時は無料でも便利なオプションにはお金がかかる「フリーミアム型」などがありますが、どちらも共通するのはサービスを利用し続けてもらうことで収益を得ているという点です。

SaaSの契約や継続の決定権は、当然ですが顧客側にあり、不満があればすぐに解約(チャーン)されてしまいます。このようにSaaSでは、この解約率(チャーンレート)をいかに削減できるかが重要になります。

カスタマーサクセスと顧客ロイヤルティの関係

解約率を削減するには、顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)を高め、ロイヤルカスタマーを増やすしかありません。顧客ロイヤルティは、顧客が企業や特定の商品に対して心から信頼して感情的な深い結びつきを持っている状態を指します。

顧客ロイヤルティを生み出すには、「顧客がどう思っているか」をつねに考え、定量・定性の両面で分析し、可視化する必要があります。つまるところ、カスタマーサクセスは顧客ロイヤルティを生み出すための手段と言い換えることができます。

他部署との違い・繋がりからみるカスタマーサクセスの役割と目的

日本でもカスタマーサクセスの概念が広がり、2018年ごろから取り入れた企業にて専用の部署が作られるようになりました。
このカスタマーサクセス部署(以下CS)は、似たような目的で顧客と接する営業やカスタマーサポートと、どんな役割の違いがあるのか。
CSと他部署との効果的な連携も含めて解説していきます。

カスタマーサクセスと営業はどう連携するべきか

CSの立ち上げにおいて、よく議題にあがるのが「営業とどう連携するべきか?」というテーマです。
CSは新しい概念で作られるだけに、顧客からの信頼はもちろん、社内からの理解も得にくい部署です。そこで、まずは営業に同行して顧客に紹介してもらい、コツコツと支援実績を作るところから進めるのがおすすめです。そして、段々と支援メニューも充実してきたところで、営業のリソースを新規開拓に集中させるために新規顧客の活用支援をCSに移行させ、既存顧客も段階を経てその体制に移行していくようにしましょう。

しかし、ここで注意点があります。活用支援をCSが対応するようになってくると、営業の中に「あとはCSがなんとかしてくれるだろう」という“チャーンの責任はCS”のような部署間の乖離が生まれる恐れがあります。そうなった際は、解約分析と活用顧客像の連携を強化し、営業とCSの担当者を同一人物にすることで解消していきましょう。

さらにフェーズが進めば、サービス更新をうながす営業もCSが担い、最終的に新規契約以降の活用支援や契約更新は、すべてCSが行うことになります。
この際、バックオフィスとも連携し、事務手続きに生じる負担も軽減するようにしましょう。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

多くの企業は、CSと名称が似ている“カスタマーサポート”という部署がすでに存在しているかと思います。カスタマーサクセスが新しい概念だけに、理解が不足していると「顧客をサポートする」という1点の共通項だけでCSとカスタマーサポートを混同しかねません。この2つは、どこが違うのでしょうか?

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
引用元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2103/15/news025.html

最大の違いは、顧客対応の積極性です。
顧客からの問い合わせに問題解決の手助けをするカスタマーサポートに対し、CSは能動的に顧客の目標達成のサポートをします。
また、カスタマーサポートが問題解決までの短い接点に対し、CSは顧客とのかかわりが中長期的で、連続性を持つことも特徴です。

カスタマーサクセスで重要な指標・KPI

CSを成功させるには、KPIの設定が重要となります。
営業の場合は訪問件数や解約数などがKPIに設定され、CSでも解約率(チャーンレート)が最重要KPIに設定されがちですが、これだけをダイレクトに追っても結果がともなわないことが多いです。

カスタマーサクセスで重要な指標
引用元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2103/15/news025_3.html

なぜなら、CSは経営に効果が現れるまで、半年や1年、顧客によっては3年といった長い時間がかかります。最重要KPIに解約率や成功した企業の数などを設定するとして、その目標に向けて確実に進めているかを測る中間KPIも設定したほうが良いでしょう。以下にCSにおすすめしたい中間KPIの例を挙げておきます。

オンボーディングの実施数

オンボーディング(導入支援)はKPIの中でも重要な部類に入ります。というのも、いざ契約に至っても、顧客側がサービスを使って成功体験を得られるイメージができない、得られたとしても時間がかかる場合、解約される可能性が非常に高まります。
適切なタイミングでのオンボーディング実施は、顧客に成功体験を積んでもらい、サービス利用に対するモチベーションを維持することに繋がります。
実施数をKPIに置くことで、解約リスクを最小限に抑え、なおかつ顧客理解を深めることができるのです。

ヘルススコア・定着率

ヘルススコアとは、サービスを契約した顧客が、そのまま使い続けてくれるかどうかを数値(スコア)化した指標です。ここにはサービスへのログイン回数、機能の利用頻度といったデータがデータとして含まれます。ヘルススコアを決めることで、「ヘルススコアが○点以下になったら最優先でサポートする」「△点以上の顧客にアップセルの提案をしてみる」といったルールができ、適切なカスタマーサクセスの提供が可能になります。

アップセル・クロスセルの件数

アップセルはより上位のサービスを、クロスセルは関連する商品を組み合わせて購入してもらうことを指します。特にサブスクリプションビジネスは長期的な関係を築きやすい特性を持ちます。もしその期間の間にサービスによって良質な体験を得られていたのであれば、他の製品や上位機能を試してみたくなるはずです。そのため、カスタマーサクセスの指標として、アップセル/クロスセルの件数が存在することはそう不思議な話ではありません。

時期で分けるカスタマーサクセスの施策・取り組み

カスタマーサクセスの施策や取り組みは、部門の運用時期によって、顧客への適切な対応の仕方が異なります。ここからは、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つの手法を、どの位置で用いるのが適切なのかを解説していきます。

カスタマーサクセスで重要なタッチポイント
https://bebit.co.jp/?blog=after-digital-0305_01

立ち上げ期、まずはハイタッチを意識

立ち上げ期には、顧客の声をしっかりとプロダクトに反映させることが重要なため、必然的にハイタッチとなります。この時重要なのは顧客が自社サービスを活用して成功するまでの道筋(成功モデル)をチームで把握・共有することです。
「“顧客が成功している”とはどういった状態か、またそこに至るまでにどんな困りごとが生じ、どうすれば解決できるのか」を持つことで、今後の施策における仮説の精度が大きく変わります。

運用初期、テックタッチで1対多の対応を

クライアントが増え、サポートする範囲や人数が増えてきたら、1対多の対応が必要になるのでより効率的に対応できるテックタッチに移行します。
説明動画やFAQの充実といった、多数の顧客の困りごとを効率よく解決できる手法を取り入れていきます。
中期に差し掛かると、テックタッチで人気のあるコンテンツをロータッチで扱う、または、ハイタッチ・ロータッチで作成されたもの(提案資料やウェビナーなど)を展開することも可能になります。

運用中期~、ロータッチでコミュニティへ

顧客へのヒアリングやオンボーディングがある程度進み、運用中期にさしかかったら、多数の顧客を相手にしたロータッチへ移行します。
テックタッチと違って人間が実施することを意識し、セミナーやウェビナーを開催したり、カスタマー同士が話し合うコミュニティを立ち上げたりします。
この際、ロータッチは集合対応にすることで効率をアップするものなので、多人数を意識した顧客の課題解決を手助けする企画やコンテンツを用意することが重要です。

ただ「運用中期になったからハイタッチはやらなくてもいい」ということではありません。ここで示したのはあくまで、カスタマーサクセスの部署を立ち上げる時にどこから始めるかの話であって、この時期はこれだけやればいいわけではありません。バランスよく取り組む必要があるのです。

顧客の状況に合わせた支援で顧客体験を最適化

カスタマーサクセスを進めるなかで、とくにやりがちな失敗の1つが「顧客の話を鵜呑みにする」ことです。実際にビービットであった事例として、顧客から「他社事例が知りたい」という要望を多くいただいたので、まとめて事例を紹介するセミナーを開催したのですが、なぜか集客がふるいませんでした。

その後、冷静に振り返ってわかった真実は、顧客の本当の望みは「自社での活かし方を知りたい」だったのです。それを他社事例からヒントを得ようとしたため、「他社事例が知りたい」という発言になってしまったという真相でした。こちらの画像は理想的な顧客対応をフレームとしてまとめたものになります。

顧客対応のフレームワーク
引用元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2103/15/news025_2.html

このように、顧客へのヒアリングは大切ですが、必ずしも要望が適切に言語化されているとは限りません。
顧客の状況やニーズを正確に理解し、それに合わせた支援で顧客体験を最適化することが大切です。

リアルとデジタルの行動データを組み合わせる

顧客の状況を知るには、ヒアリングに加えて行動の観察も大切になってきます。顧客のリアルでの行動はもちろん、SaaSにおいてはデジタル上の行動が状況を知るための非常に重要な情報になります。

たとえば、顧客はなぜウェブ上で決済ページまで進んでいながら離脱してしまったのか。ツールに関する疑問点を知るためにFAQにアクセスしたのに、なぜすぐにブラウザを閉じてしまったのか。リアルを含め、これらの情報を組み合わせて考えることで、顧客が本当にしたいことが浮かび上がってきます。

USERGRAMで進化するカスタマーサクセス

ビービットが提供するUXチームクラウド USERGRAMは、シーケンス分析に特化した業務プロセス支援ツールです。
ユーザの状況を順序立ててとらえることで、ユーザの置かれた状況を正確に分析します。

カスタマーサクセスにおいては、顧客の正確な状況をつかむことが、最適な支援を実現するために必須となります。
カスタマーサクセスの課題でお悩みの方、ぜひ一度お気軽にお問い合わせください。

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