デロイトの2021年12月調査によると、定額制動画配信(SVOD ストリーミング・ビデオ・オン・デマンド)サービスのグローバルにおける有料サブスクリプションのキャンセルは1億5,000万件にのぼり、各市場でのサービス解約率は最大30%になると予測されています。
たとえばNetflixの場合、2021年の第1四半期に解約率が高まりましたが、その主要因はコロナ禍によって高まった在宅での娯楽需要が一段落してきたことだと見られています。
このような外的要因による解約を阻止するためには、アプリの使用負荷の軽減などのサービス内での小手先のUX改善だけではなかなか太刀打ちできません。
Netflixはこの対応のひとつとしてアカウント共有の制限を検討していると言われています。
このように、外的要因による解約の場合、単に利用体験を改善するだけではなく、その要因を特定した上で適切な打ち手を検討することが必要です。
リソースは有限であるため、解約阻止施策を実施するにあたっても❝成果が見込める効率のいい領域❞に資金や工数を投下すべきというのは当然ですが、その❝効率のいい領域における適切な打ち手❞を見つけるには解約の原因をデータから見極めることが必要になります。
この記事では、データを元に、ユーザの解約理由を見極め適切に対応した事例を2つご紹介します。
事例1 VODサイト
ビジネス番組を提供するVODサービスでの事例です。
とある広告施策をスタートした数日後、会員数が激増したが、即座に解約するユーザも同時に増えました。
これは広告施策によるものなのかそれとも違う要因なのか分からず、解約防止策を打つべきなのか否か判断できない状態でした。
そこで、直近の解約ユーザの行動を確認することに。
最初から特定番組のキーワード検索から流入し会員登録し、その番組を視聴した後すぐに退会、という動きがほとんどでした。
どうやら、インターネット上で炎上して話題になっていた特定の番組を見に来ているだけと思われました。
特に課題視する必要の無い退会がほとんどであることが分かり、無駄な退会防止策に注力せずに済みました。
事例2 レストラン予約サイト
高級レストランの予約サービスサイトでの事例です。
アフィリエイト経由の入会が多いが退会も多いという課題があり、いかに歩留まりを上げるかが鍵でした。
チュートリアルの実装などを検討しており、そのために退会したユーザがどこまで使っているのかを可視化して退会要因を把握しようと考えていました。
アフィリエイト経由で入会した後に退会した人を100人ほどサンプルとして抽出して観察しました。
すると、解約ユーザの多くが入会から退会の間に一度も予約サービスを利用しておらず、チュートリアルを設置するページにすらたどり着いていないことがはっきりと分かりました。
アフィリエイト経由のユーザは「ポイントがもらえるから入る」というだけの理由で入会していたためすぐに退会していたのです。
そうしたユーザがいることは想定してはいたのですが、まさかこれほど多数のユーザがまったくサービスを利用しないとまでは考えておらず、担当者は驚きました。
この施策によって掬い上げるはずだった「入会したから試してみようかな」と考えるユーザは、現実にはほぼいなかったのです。
上長にもユーザのデータを共有し、このアフィリエイト施策は廃止することに決めました。
解約の原因を明らかにして、リソースを適切に配分しよう
阻止施策が有効か否かの判断には、ユーザの流入チャネルと行動データが有効な場合も多いです。
ユーザの解約が阻止できるものか否かを見極め、施策実施可否を判断し適切にリソースを配分しましょう。
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