事例

その「ユーザ」本当にいますか?ユーザ像を検証してUX改善に活かす

2022.03.11 Fri.

その「ユーザ」本当にいますか?ユーザ像を検証してUX改善に活かす

Webサイトにおける適切なコミュニケーションを実現し売上を伸ばすためには、訪問してくるユーザの特徴や傾向を掴む必要があります。
本稿では、想定していたユーザ像が実態と異なっていた事例を紹介しつつ、Webサイトにおけるユーザ像の検証の仕方について深堀りします。

貴社のWebサイトを訪れているのはどんなユーザ?

Webサイトに訪れるユーザは多種多様です。
それぞれのユーザごとに最適なコミュニケーションが異なるなかで、どのページで・どのセグメントを優先し・どのような情報を掲載するか、を考えることは一苦労です。
なかでも、WebサイトにおけるUX(顧客体験)を考えるときには、特にペルソナ(ユーザ像の仮説)がよく利用されます。
というのも、WebサイトのUX(顧客体験)を考えることはまず「どのような人にとって使いやすいのか」の仮定から始まるからです。
ペルソナを資料として整理していなくても、「サービスを利用するユーザがどんな人なのか」を考えたことがない企業やWeb担当者はいないかと存じます。
しかし、往々にしてその「ユーザ像」は実態と乖離しがちです。
弊社においても、多くの企業様をUXグロースコンサルティングで支援するなかで、いかにも妥当そうなユーザ像の初期仮説が実態とは異なっていたケースにしばしば直面します。
くわえて、ユーザを取り巻く環境が社会的にも技術的にも変化するなかで「当時は正しかったユーザ像」が現在でも通用するのかを継続して検証する必要があるのです。
対応すべきユーザの想定が異なれば、当然適切な施策も異なります。
ユーザ像への確信がなければ、目指すべきUX(顧客体験)の理想像も描けないのです。

本稿では、ユーザ像の策定にあたって、もともとのユーザ像仮説が実態と異なっていたことを分析によって発見し、施策を改善し成果につなげた事例をご紹介します。

Webサイトにおける適切なコミュニケーションを実現し、UXの改善による成果向上のためにも、ぜひ他山の石としていただければと思います。

※なお、一般的な心理探究型のペルソナ手法における問題点については下記の記事で紹介しています。
これまでの顧客理解ではUXは作れない?【『UXグロースモデル』から限定公開!】



事例1 アパレルEC ~ SSサイズの商品を買うユーザの検討軸とは?

「SSサイズ」や「LLサイズ」などのサイズの服は、一般的に「Mサイズ」や「Lサイズ」の服よりも流通量が少なく、「SSサイズ」の服を探すユーザは買い物にやや苦労します。
デパートやファッションビルなどで「SSサイズの服」コーナーを見た覚えのある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

あるアパレルのECサイトでは、SSサイズの服を求める方々のために、「SSサイズの服特集」というページを組みました。服を検討するフックになれば、という狙いでした。
そして、過去に「SSサイズ」の服を購入したことのあるユーザに、メールマガジンでその特集を告知することとしました。

「SSサイズ服特集のお知らせメルマガ」の開封率はイマヒトツだった

ターゲットを「過去にSSサイズの服を購入したことがあるユーザ」に絞り、「探しづらいSSサイズの服を楽に見つけたい」というユーザニーズに合致するはずのメールマガジン。

「開封率も、クリック率も、いい数字を出すんじゃないか!」
担当者は期待してメールマガジンを送信しました。

ところが。

「SSサイズ服特集のお知らせメルマガ」の開封率もクリック率も、全体向けの一般的なメールマガジンと同じか、少し下回る程度でした。

「なんでなんだろう...」

期待が外れたということは、何か思い違いがあったということ。
担当者は、今後のより良い特集企画やメールマガジンのために、「SSサイズ」を購入するユーザを正しく理解する必要性を強く感じました。

SSサイズの服の意外な買われ方

そこで、「SSサイズ」を購入するユーザの行動をUXチームクラウド USERGRAMを用いて分析してみることにしました。

すると、「SSサイズ」の服を購入するユーザの購入方法には2パターンあり、実は「サイズでは服を選ばないユーザ」がいることが明らかになりました。

1つは、「SSサイズ」というサイズの中で、様々なブランドの商品を見ながら商品を選ぶタイプ、すなわち「サイズから選ぶ派」。
もう1つは、「好きなブランド」が決まっていて、その中で「SSサイズ」の服を探して購入するタイプ、すなわち「ブランドから選ぶ派」でした。

同じ商品の購入者でも「検討のきっかけ」は異なる

「サイズから選ぶ派」のユーザにとっては、「SSサイズ特集」のメールは検討のフックになる良い告知だったと思います。
一方で、「ブランドから選ぶ派」のユーザにとっては、ブランド横断で商品を紹介される「SSサイズ特集」のメールは魅力的なものではありません。むしろ「自分のことを分かっていない」と感じられ、好感度の低下さえ招きかねないものでした。

担当者は今後、「SSサイズ特集」のメールマガジンは「サイズで選ぶ派」のユーザにのみ送付することにしました
具体的には、「『3ブランド以上閲覧』かつ『SSサイズの服を閲覧』」という条件に合致するユーザにのみメルマガが送付されます。
そして、「ブランドで選ぶ派」のユーザには「ブランド別の特集」のメールマガジンを送付することにしました
結果として、開封率が向上し、メール経由の売上も増加させることができました。

最終的に同一商品を購入したユーザでも「探し始めるきっかけ」が異なれば「適切な入り口(特集)」も異なります。
この事例のように、施策の結果からユーザ像を検証することで、適切な施策へとつなげられます。



事例2 ヘルスケアサービス ~ 「サービスを利用する会員」と「利用しない会員」の差異を発見

オンラインで医師と相談できるという、オンライン医療相談サービスの事例です。

サービスリリースからしばらくは、会員数をKPIに設定し、とにかく会員数の増加に注力をしてきました。

やがて会員数が増えたとき、次は会員のサービス利用率が課題になってきました。
会員登録はしてくれるものの、一度も利用をしてくれないユーザ、すなわち「休眠ユーザ」が一定数存在したのです。

会員登録だけをしてサービスを利用しない「休眠ユーザ」の率はなるべく下げて、サービスを継続利用してもらいたいですよね。
利用する会員と利用しない会員の行動の違いを発見し、休眠率低下の施策につなげられた事例です。

サービスを利用する会員と利用しない会員の違い

担当者、休眠率の低下施策を検討するためユーザの行動データを確認しました。

すると、会員登録を行うユーザの行動として以下の3パターンが見えてきました。

Aパターン、Bパターンのユーザは医療相談の事例や担当する小児科医のプロフィールを一定閲覧しているのに対し、Cパターンのユーザは、会員登録手続きだけを行い、それ以外のページは全くみていませんでした。

そして、各パターンの休眠率を比べた時、Cパターンは、Aパターン、Bパターンに比べて休眠率が高かったのでした。

「会員」はサービス内容を必ずしも知らない

会員登録手続きだけを行うCパターンのユーザは、もしかしたら広告など他媒体でサービス内容を知ってくれていたのかもしれません。でも、他媒体だとサイトに比べて情報量は限られています。

「会員であればサービス内容を知っているだろう」と思い込んでいましたが、実はそうではないのかもしれないと気づきました。

「会員」にもサービス内容を伝える

サービス内容を知らない、あるいはあまり知らずに登録だけしていたら、サービスを忘れ去られていても不思議はありません。会員登録時や会員登録完了後に、サービス内容を知ってもらえたら利用を伸ばせるのではないか。
会員登録前にサービス情報をあまり見てくれなかったユーザに、いつサービス内容を伝えられるのか、担当者は考えました。

まず、会員登録のタイミングは、少なからず顧客が自社サービスに関心を持ってくれているタイミングです。「会員登録完了画面で、サービス紹介を行う」「会員登録完了メールでサービス内容を紹介する」という施策は効果があるのではないかと考え、実装を決めました。

また、定期的に会員に送付していたメールマガジンも見直すことにしました。
それまで、「会員であればサービス内容を知っているだろう」という思い込みのもと、主に最新の更新情報をメールマガジンで会員に送っていました。
今回の発見を踏まえると、メールマガジンでも定期的に基本的なサービス内容や利用方法を紹介すると効果があるかもしれないと考えたのです。

この事例のように、担当者は行動データをもとにサービス利用率向上施策を考えるヒントを得ることができました。

貴社サイト/アプリにおいても、「利用定着するユーザ」と「休眠ユーザ」の行動の違いを観察してみると適切な施策が企画できるかもしれません。



まとめ

2つの事例どちらも、ユーザの行動データの分析によって当初のユーザ像仮説が実態とは異なっていた事に気づき、施策をアップデートすることで成果を向上させることができました。
貴社のWebサイトは「どのような人」を想定して設計していますか。
そのユーザ像が実態と異なっていると、UX(顧客体験)を向上させようにも、まとはずれな施策ばかりになってしまいます。
もしWebでの成果が伸びていない場合、下記のステップで検証を行うのがおすすめです。

  • 現状のWebサイトの各ページが誰向けなのかを整理する
  • 実際のユーザと差分がないかデータと突き合わせて確認する
  • 差分があれば、その原因を推察する( = ユーザが悩んでいること・求めていることを考える)
  • 原因にあわせた改善を行う

想定しているユーザ像が思い込みになっていないか、行動データをはじめとする各種データから確認していきましょう。



ユーザ像の策定を支援するUXグロースOps

弊社では創業以来アプリを始めとして幅広いデジタル領域をコンサルティングで支援してきました。
ユーザ行動観察調査で培った知見をもとに、近年は特にデジタルにおけるユーザの行動データ分析に注力して各企業様の支援を行っています。
自社サイトのユーザ像を検証したい方、サービスの目指すべき理想のUXを定義できずにお困りの方は、ぜひUXグロースOpsをご検討ください。
まずは気軽にお声掛けください。どのような支援が考えられるかのご相談から対応いたします。

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