独自の光ファイバーネットワークを利用し、ネット、電話、テレビ等、人々の快適な通信環境を支えるオプテージのFTTHサービス「eo光」。主力サービスである「eo光ネット」は約170万世帯の利用者を誇り、関西地区最大級の戸建てシェアを獲得している同サービスの裏には、お客さまの安全で快適なサービス利用を支えているカスタマーサポートの存在がありました。
しかし、電話で問い合わせを受けるコールセンターやWeb上のサポートサイトなど、お客さまとの接点であるチャネルが多様化する中、一連の顧客体験を高めていくUXグロースには課題がありました。
そこでオプテージは、ビービットとともにサポートサイトの改善に着手。
どのように顧客体験を向上し続けられるサポートサイトを設計し、改善の業務サイクルを構築したのか。お客さまサポート部の川尻 拓也様とメディア運営部の渡辺 唯様に、このプロジェクトの狙いと業務サイクル構築後の変化についてお話を伺いました。
株式会社オプテージ様
-
- 株式会社オプテージ
コンシューマ事業推進本部
お客さまサポート部 サポート統括チーム
サブマネージャー - 川尻 拓也 様
- 株式会社オプテージ
-
- 株式会社オプテージ
コンシューマ事業推進本部
メディア運営部 メディア制作チーム
プロデューサー - 渡辺 唯 様
- 株式会社オプテージ
「お客さま起点」のサポートサイトにつくり変えたい
——これまでもサポートサイトの改善に取り組まれていたと思いますが、今回のプロジェクトの狙いは何だったのでしょうか。
川尻 拓也(以下、川尻)様:狙いは、お客さま満足度の向上を目指し、自分たちでデータを見ながら改善を重ねられるサポートサイトにつくり変えることです。
背景には、「“お客さま起点”で考える」という会社としての取り組み姿勢があります。デジタル化が進み、情報収集の方法一つをとってもお客さまの志向が大きく変化している今、選ばれ続けるサービスでいるためには、お客さまとの接点も時代の変化に合わせて設計し直す必要があると考えています。お客さまのお困りごとを解決するカスタマーサポートでは、これまで主軸だったコールセンター運営だけではないデジタル接点の強化が急務でした。
そこで、複雑化していたサイト構造自体にメスを入れ、顧客行動を軸にしたサポートサイトにつくり変えることにしたのです。
渡辺 唯(以下、渡辺)様:複雑化していた導線のシンプル化はもちろんのこと、リニューアルを機にまず変えるべきだと私たちから問題提起したのが、KPIです。
これまでのサポートサイト改善では、サイトを見ても問題解決されずコールセンターに電話が入ってしまう割合である入電率の低減をKPIとしていました。しかしそれだけでは、本当にお客さまがスムーズに問題解決に至ったのか、追跡するのが難しい状態だったのです。そのため、施策の振り返りを満足に実施できず、何を軸に改善検討を行えば良いかも定まっていませんでした。
効率的な改善サイクルを回せるようにするためのファーストステップとして、お客さま満足度を測るKPIを策定し、KPIに基づいたデータが取得できるサイトの構築を目指すことにしました。
KPI設計から運用業務の構築・伴走まで、一気通貫でビービットがサポート
——具体的にどのような取り組みを行ったのですか。
川尻様:チャネル横断の共通指標の策定、そして策定した指標をデータとして取得し、分析・改善に活かせるようサイト設計・業務設計を行いました。ビービットには、KPI設計やユーザ行動観察調査などの土台づくりからコンサルティングに入っていただきましたね。
KPIは、そもそも回答ページまでたどり着けているかを測る「離脱率」、課題解決に至ったかを測る「解決率」、スムーズに解決できたかを測る「CES(Customer Effort Score)」、他チャネルの負荷軽減ができているかを測る「入電率」の4つを定めています。
これらのデータについては、これまで部分的にしか取得できていなかったものが多かったため、構造的に整備し直しました。その後やっと、こうしたKPIを用いて、ネット・電話・テレビ関連の問い合わせなど課題テーマ別に目標数値を置き、月次で振り返りを行えるようになりました。
サイトリニューアル自体は2020年の10月頃にひと段落し、現在はビービットの伴走支援サービス『UXグロースOps』を導入し、ユーザ行動分析ツール『USERGRAM』を用いてお客さまの行動を観察しながら継続的な改善を行うUXグロースのサイクルを回しています。
分断した顧客行動を『USERGRAM』でつなげる
——サイトリニューアル前からビービットのユーザ行動分析ツール『USERGRAM』を導入されていらっしゃいますが、その背景を教えていただけますか。
川尻様:『USERGRAM』を導入したのは2019年のことでした。
オプテージでは、電話・Webサイト等、お客さまとのコミュニケーションチャネルごとに組織が分かれていて、各部問がそれぞれのチャネルの保有データで分析・改善を行っていました。業務効率を考えた分業化によって個別最適化は進みますが、本来重視すべきお客さま体験の全体像が見えていない状態だったのです。
Webサイト側はどのページにアクセスが多いかを把握し、コールセンター側はどのようなお困りごとの電話が多いかを把握していますが、それらのデータを横串しで見ることができていないため、他チャネルでの案内と内容が乖離してしまうなど、逆にお客さま満足度が低くなるリスクもはらんでいました。
そこでデータ統合を進めつつ、担当チャネルごとの課題解決ではなく、お客さまの課題に向き合った業務改革を実施したのです。
この時のペインポイントにマッチしたのが、『USERGRAM』でした。
渡辺様:『USERGRAM』を活用することで、一人ひとりのお客さまがお困りごとを抱えたときから、解決策を得るまで、お客さまの行動全体を時系列で追うことができます。サポートサイトに訪れるお客さまは様々な状況におかれていますが、その中でも最もつまずきやすいポイントを的確に把握することができるため、仮説として確度の高いものを導き出せるのです。
また、『USERGRAM』のUIはシンプルで、誰にとっても使いやすくなっている点も重要でした。分析ツールによっては専門スキルが必要になり、どうしても属人化してしまうことがありますが、『USERGRAM』は直感的な操作が可能なので、組織として使い続けられるツールだと思いました。
実はこのサイトリニューアルも、『USERGRAM』によるお客さま理解と分析がきっかけになったんですよ。膨大な数の改善ポイントを発見してしまい、これは小さな改修だけで対応するのは難しいと判断した結果、構造から大きく変えるリニューアルの実行を決定したんです。
ビービットの支援で回りはじめた、データドリブンな改善活動
——現在はビービットの伴走支援を受けながらUXグロースのサイクルを回しているということでしたが、どのように進められているのでしょうか?
川尻様:企画から実装、振り返りまでのPDCAを1テーマにつき3か月のサイクルでまわしています。具体的には、まずビービットのコンサルタントからお客さま行動分析に基づいた改善提案をいただき、その仮説の有力性を確かめるために社内メンバーで『USERGRAM』を用いてお客さま行動を追体験します。その後、その改善案をWebサイトやコールセンターなどさまざまな部門が集まったワーキンググループの週次会議で議論。さまざまな観点をもったメンバーで「偏った施策になっていないか」「お客さま起点になっているか」を議論しブラッシュアップします。そして実際に、どの順番で何に着手すべきかを決め、実行に移すのです。
渡辺様:ビービットからは質が高く、そして実現性の高い改善提案がいただけます。ページ単体で見るのではなく、サイト全体の構造、さらにリアルの接点を含めた導線を把握した上で提案いただけるのは本当にありがたいですね。
自分たちだけで検討していると偏った意見となりがちですが、UXのプロフェッショナルからの客観的な示唆をもらえることに加え、実装後も『USERGRAM』によって実際のデータで検証し二次改善まで検討できるというのが、効果的なPDCAサイクルを回せているポイントだと思っています。
「事業軸」から「顧客軸」への転換
——どのような成果があったのか教えてください。
川尻様:離脱率、入電率、お客さまの自己解決率など、複数の指標が改善しています。例えば、サポートサイトの導線の改善によって、テレビに関連するお困りごとの入電率が約50%も低減しました。
渡辺様:他にも、メール内容の見直しによって回答ページに至るまでの離脱率が大きく低減しましたね。
定期的に送付しているお客さま向けのメールで、サポートサイト上のページに誘導しているものがあるのですが、UXグロース活動開始後、案内したページの離脱率が明らかに高いことが判明したのです。要因を分析すると、過去から定型文を用いて同じページに案内することが慣習化しており、お客さまのお困りごとに合った解決策を提示できていませんでした。その結果、離脱につながっていたようです。
これまでは「メールで案内する」までがKPIだったのが、「その後お客さまがどうなったのか」を追い続けたことで、見逃していた大きな穴をふさぐことができたのです。
施策としては小さいものですが、こうしたことの積み重ねがお客さまの体験価値の向上に大きく影響すると考えています。
川尻様:定量的な成果が見えてきていることはもちろんですが、今回の取り組みの本質的な成果は、改善のPDCAサイクルを確立し、自分たちの業務を「事業軸」ではなく「顧客軸」に転換できたことだと捉えています。
これまでは各部門が別々の指標を追っていましたが、今では「お客さまの満足度向上」という共通の目標を持てたことで、同じ方向を向いて議論できるようになりました。施策を実行に移すスピードが確実に早まりましたね。
渡辺様:本当にそうですね。全ての関連部門が自分ごととして改善に取り組むことができるようになったと思います。これまで知らなかったお互いの知見・ノウハウを持ち寄って議論できているので、施策の質も高まっています。
全員の共通言語ができたことで、会社の上層部へのインプットもスムーズにできるようになり「これまでバラバラだった報告が、共通の軸で評価ができるようになった」とも言ってもらえるようになりました。
「点」から「線」に、そして「面」で新しい体験提供を
——最後に、今後の展望について教えてください。
渡辺様:お客さまの多様なニーズに対応するため、オムニチャネル化を順次進めていく方針です。現在私たちはサポートサイトを対象に改善活動を行っていますが、マイページ、サービスサイトなど、お客さまとの定常的な接点は他にもあります。サイトを遷移したとたん分断されてしまいがちな体験を一気通貫でつなげていかなくてはいけません。接点ごとの改善ではなく、「お客さま起点」で一連の顧客行動を捉え、横断的なサイト導線の設計を行うことが、UX向上のキーになると考えています。
川尻様:そうした時、チャネル横断で行動を可視化し、同じ指標をもって改善し続けるUXグロースの方法論は、とても有効です。今後他のサイトと連携していく時にも今回のプロジェクトで培ったノウハウを適用していけたらと思っています。
チャネルごとの点ではなく、「線」をつなげ、「面」としてより良い体験を提供していきたいですね。そうすることで、これまで見えていなかったニーズに対して新たな価値を提供できるようになると考えています。
まだまだ課題はありますが、ビービットには、今後も伴走支援をいただきながら、当社のUXリテラシーの向上をサポートいただけるとありがたいです。