化粧品・健康食品の研究開発、製造、販売を手がける株式会社ファンケルは、インターネット黎明期からいち早くEC事業をスタートさせ、現在も売上の大部分を通販事業から創出し続けています。同社は、無添加化粧品や健康食品・サプリメントの通販サイト「ファンケルオンライン」の体験価値向上のため「UXグロースOps Lite」を導入。なぜUXグロースOps Liteを選んだのか、どのような効果があったのか。ECサイトに携わる3名の方にお話を伺いました。
株式会社ファンケル
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- グループIT本部
情報システム部
部長 - 長谷川 敬晃 様
- グループIT本部
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- グループIT本部
情報システム部
事業サポートグループ 係長 - 岸田 満 様
- グループIT本部
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- 通販営業本部
コミュニケーション部
オンライン企画運営グループ - 平山 達也 様
- 通販営業本部
独自の価値を打ち出し、ユーザに寄り添うUXへ
ーファンケル様は長年EC事業に取り組んでおられますが、なぜ今回新しい分析手法を取り入れたのでしょうか。
長谷川 敬晃様(以下、長谷川様):1番大きな理由は、独自の価値を打ち出すためです。
今はコロナの流行がきっかけで、これまでインターネットを使っていなかったお客さまがECサイトの活用を始めています。そんな方々にとって、インターネット上の情報は「多すぎ」で、代替となる他社商品の選択肢も多く、せっかくファンケルを見つけてもらえても、そのままご購入いただけるかどうかは以前よりも難しくなってきたと思っています。
“1アクセスの重要性”が増しているなか、新規ユーザを獲得するには「注文のしやすさ」「注文をする楽しさ」が非常に重要です。「多少わかりにくくても買ってくれるはずだ」という考え方は、通用しなくなっています。
具体的には、多くのユーザがご利用されるウェブサイトの改善が重要となりますが、これまでの定量的なデータ分析手法だけでは有効な改善策の立案は難しいのが実情です。ユーザの行動をPVやUUといった数字で見るのではなく、「どんな行動をとっているのか」「どこで離脱しているのか」などをより具体的に把握する必要があると感じていました。
ービービットのサービス「UXグロースOps Lite」を導入された経緯を教えてください。
岸田 満様(以下、岸田様):実はもともとシステム部として、データ活用を加速させたいという思いがありました。どのような選択肢があるのか部内で話し合うなかで、長谷川が言ったような顧客インサイトをつかみ、サイトのUXを向上させることが重要なのではという結論に至りました。そこで、ツールやサービスを探すうちに辿り着いたのが「USERGRAM」でした。
USERGRAMはユーザ一人ひとりの行動の順序や流れを見える化できます。定量的な分析に限られている既存ツールと比べてより細かい粒度での分析が可能になるため、UX向上にぴったりだと感じました。そこで、USERGRAMの活用からCVR改善施策の提供までをサポートしてもらえるUXグロースOps Liteの導入を社内で提案し、その提案が通ったという形です。
新たな分析手法の定着と、ECサイト改修に同時に取り組む
ー具体的にどのようにUXグロース活動を進めているのでしょうか?
長谷川様:基本的にはUSERGRAMを使った分析・改善を自社で行いつつ、ビービットさんにも毎月1回の定例会議で決めたテーマに沿った分析結果の共有や改修策の提案をしてもらい、少しずつスキルを身に着けてきました。平山と連携しながら実施した「ファンケルオンライン」の健康食品カテゴリの改善も取り組んだテーマの1つです。
平山 達也様(以下、平山様):健康食品カテゴリトップの修正へ注力するきっかけになったのは、岸田のUSERGRAM分析において、健康食品カテゴリトップのCVRが他カテゴリより低いというデータと、カテゴリトップに来たユーザが各商品ページへ遷移する率が低いという、ビービットさんからの分析結果でした。合わせて改修案もご提案いただいたので、効果がありそうなものを実装していきました。
ー進めながら感じた難しさがあれば教えてください。
岸田様:USERGRAMの導入を推進したのは我々情報システム部ですが、実際に分析を進めるのは営業部門だったので、とくに最初はサービスの良さや使い方について理解してもらうのに苦労しました。新しい手法に慣れないうちは、どうしても使い勝手が悪く感じられてしまうので、いかに簡単に使えるものなのか、使ってもらうことで何ができるようになるのか、丁寧に説明することを心がけました。
ー社内にUSERGRAMを浸透させるため、工夫した点があれば教えてください。
岸田様:USERGRAM活用のハードルを少しづつ下げていったことです。
たとえば社内での質問を取りまとめたり、USERGRAMのディスカッション機能を利用して担当者に共有したりしていました。また、月次の定例会の場でビービットさんから使い方やその効果についてレクチャーしてもらいました。他にもUSERGRAMを利用していくつも自分で仮説を立て、営業部門にプレゼンし効果をアピールしたり...使い手に利用するイメージを持ってもらうために、思いつくことは全て実施しました。
平山様:取り組み開始前は、ルーティンとしてUI/UX改善にも取り組んでいるなか、新しい分析手法を活用するのは大変そうだなと思いました。ただ、実際に使ってみると操作は簡単で、ユーザ一人ひとりの行動を直感的に分析できることがわかりました。
カテゴリトップページからのCVRが約7%向上
ーUXグロース活動を通じて、現時点で実感している成果があれば教えてください。
平山様:健康食品カテゴリのトップページから各商品ページへの遷移率が低いという指摘をいただき、カテゴリトップページの改修をしたところ初動の結果でカテゴリトップからのCVRが約7%アップしました。
実施したのは、大規模な改善ではなく、ちょっとしたUIの改善です。USERGRAMの分析を通して、健康食品カテゴリのトップページに来るユーザは「明確な悩みを持っていて、その悩みを解決するための商品を探している」と仮説を立てました。その仮説のもと商品の探しやすさに特化したページになるよう、各要素の掲載位置の見直しや必要情報の整理を行い、カテゴリトップページから商品ページへのアクセスを約10%UPさせ、結果としてCVR向上につながりました。
ーUXグロースOps Liteに感じている価値を教えてください。
岸田様:1人のお客さまの行動の分析から課題を特定し、改善案を考えるという考え方自体が唯一無二の価値だと感じています。
平山様:同感です。一般的なアクセス解析ツールだと数字を出して終わりですが、USERGRAMの場合は無限にお客さまの解析ができます。ユーザの行動を追いかけるなかで、これまで意図していなかった発見もあり、どんどん新しい仮説が生まれるところが魅力だなと感じています。
長谷川様:月に1回、ビービットの担当者と分析結果についてディスカッションができることも非常に価値があると考えています。
お恥ずかしい話ですが、これまで無意識のうちに「自社のサイトのことは我々が一番理解している」と考え、外部のコンサルタントがいくら提案をしてくれても、我々の持つ仮説には及ばないと過信していました。しかし、ビービットさんの提案は我々のサービスに寄り添ってくれ、それでいて質が高く、長年ウェブサイトに携わってきた私も素直に驚きました。我々が気付かずに縛られていた固定観念に気付かされ、新しい視点をインストールしてもらえたと感じています。
USERGRAM活用の社内定着を目指したい
ー今後の展望について教えてください。
岸田様:引き続きECサイトの改修に携わる現場メンバーたちに、USERGRAMを活用してもらえるよう取り組みを続けたいと考えています。平山がつくってくれた成功体験も材料にしながら、自社の新しい手法として確立させていきたいです。
平山様:私も社内のもっと多くのメンバーにUSERGRAMの活用を広めたいと思っています。ウェブサイトのUI/UX改善は所属グループのミッションの一つに位置づけられているので、USERGRAMを使える人が増えれば、その達成の近道にもつながると感じています。
長谷川様:同感です。N1のユーザ行動データ分析は、数字だけで判断をするのと比べて、どうしてもひと手間かかります。ただ、そのひと手間が、結果的には大きな成果につながると確信しています。ユーザの購買体験を向上させる視点で、今後もUSERGRAMを活用した分析を続けたいと考えています。