2010年03月02日
リスティングを活用したテストマーケティングのススメ
ユーザビリティコンサルタント
酒巻 厚志
リスティング広告をうまく活用できていますか?
定期的に成果をチェックし、効果を上げるために日々の改善を繰り返されている方も大勢いらっしゃると思います。
今回は、リスティング広告を、直近の売上向上のための広告媒体としてだけではなく、すこし長い目で見たウェブ戦略を考える上で、テストマーケティングの場として活用するメリット・考え方をご紹介します。
そもそも、なぜリスティング広告なのか?
シナリオ(コミュニケーション)別の評価がしやすい
リスティング広告は下記の2点の特徴を持っています。
(1)ユーザの商品・サービスとの接触時のニーズを端的に表している
リスティング広告=ユーザが検索時に入力したキーワードであり、その瞬間のユーザのニーズを端的に表しているといえます。それゆえ、「どのような状態のユーザに接する(狙う)のか」をキーワード選定により、企業側が絞ることができます。
(2)キーワードに対して、受け皿を任意に設定できる
リスティング広告では、出稿側が受け皿(ランディングページ)を任意のページに設定することができます。したがって、キーワード別に適切なページの誘導、各ページからサイト内の適切なコンテンツへの誘導が可能です。
上記により、”ユーザの状況別“に、”企業が意図するコミュニケーション“を設定することができるため、コミュニケーション別の評価がはっきりと目に見える形で行えるようになり、テストマーケティングの場としては最適な媒体となりえるのです。
クイックに実行できる
現在、サイト内に用意されていないコミュニケーションを新たに設置するのは、サイト全体の構造を変えることもあり、短期間で実施するのは難しいことが多いでしょう。その際、新たにコミュニケーションをとるランティングページ(あるいはページ群)を作成し、リスティングからランディングページへ誘導することで、サイト内に手をいれるよりもクイックに実行できます。
以降、リスティング広告を使ってテストマーケティングを行う場合の考え方のポイントを2つご紹介します。
ポイント1 - シナリオとコミュニケーションの妥当性を検証する
シナリオ別のコミュニケーションを考える重要性と、ユーザ行動観察調査によってコミュニケーションの妥当性を確かめる重要性については、弊社のユーザビリティコラムでも何度か取り上げています。
- 不況時代に適した費用対効果重視型ウェブサイトリニューアル手法(ユーザビリティコラム 第45回)
- シナリオとユーザ行動観察調査を用いたネット広告の有効活用(ユーザビリティコラム 第44回)
定性的な調査で得られたコミュニケーションをリスティングを使って実現した上で、マーケットの反応を見ての改善を行うことで、より精度の高いコミュニケーションが実現できます。
ポイント2 - シナリオ別のインパクトを検証する
定性的な調査で、有効そうなシナリオが2つ見つかったが、どちらを優先すべきか?定性調査だけでは確証をもって選べない場合もあります。
例えば、他社と比べると「スペックは充実しているが、価格で負けてしまうようなネットブック」を売るときに、有効そうな下記の2つのシナリオがあったとします。(図参照)
シナリオA:PCについての知識が無いユーザに対するシナリオ仮説
- まずは軽さ、持ち運びの便利さ、インターネットがどこでも使えることなどの基本的な機能を訴求することが重要。
- そのあと、価格以外で考えるべきポイントを啓蒙すれば、購入に導けるのではないか。
シナリオB:PCの知識が高いユーザに対するシナリオ仮説
- 既にネットブックが何かを知っているので、基本的な使い方の説明は不要。
- OSのエディション、CPUのチップ、大容量SSDであることを訴求すれば、良さがわかってもらえるので購入してもらえそうだ。
しかし、自社の社名(仮に、「ビービット電器」とします)で検索してくる人たちはどちらが多いのか、そしてどちらのシナリオを優先して実現させるべきかはは実際に試してみないとわかりません。
その際にはリスティング広告「ビービット電器」に対して2つのコミュニケーションをA/Bテストするなどし、その結果、コンバージョン率や、コンバージョン数(ボリューム)をみた上で、売り上げに最もつなげるためには
→Aシナリオを採用する
→Bシナリオを採用する
→AとBとを融合する
などのうち、どの選択肢が一番良さそうなのかを判断することなどが必要になります。
上記2点のポイントを押さえてリスティング広告をテストマーケティングの場として使うことで
- 優先すべきユーザは誰か?
- 商品の訴求の方向性としてどれに定めれば良いのか?
- 新しい訴求を考えたが、うまくいくのか?
などを、実際の市場を使って検証することができます。
これは、普段のマーケティング活動の中で実施していくことはもちろん大切ですが、それだけではなく、サイト内の全面リニューアルや一部改善の際にも有効な手段となります。コンセプトが決まったタイミングで実施すると、改善インパクトや、訴求の優先度などを数字で予測し、今から作ろうとしている新しいサイトに反映できるのです。
精度の良いコミュニケーションを作り、インターネット上のマーケティングを効率的に進めていく上でも、リスティング広告を単なる広告媒体としてのみ捉えるのではなく、テストマーケティングの場として活用することも推奨します。
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