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サイトリニューアル責任者に必要な事前チェック項目4点 ~「ゴール」を定めきれていますか?

2022.03.31 Thu.

サイトリニューアル責任者に必要な事前チェック項目4点 ~「ゴール」を定めきれていますか?

デジタルチャネルでの売上を作るうえで、Webサイトにおけるコンバージョンポイント(購入・問い合せなどの導線)を主要な利益源としている企業は大変多いです。
Webサイトの運用を続けていくなかでかならず議題に上がるのがサイトリニューアル。
この記事では、サイトリニューアルをするにあたって事前に気をつけておくべきポイントをご紹介します。

サイトリニューアルで気をつけるべきポイントとは?

一般的に、Webサイトのリニューアルが行われるきっかけとなるのは主に下記の背景です。

  • 注力商材やサービスの変更などによるブランディング
  • 社会的/技術的変化に伴う、ビジュアルやコーディングなどの定期的な更新
  • 基幹システム変更などに伴うデータ取得方法などの移行
  • ターゲットとするユーザがサービスを用いる上で、現状では不足していると考えられる機能の追加
  • ツギハギのように更新を重ねられてきた既存ページ群を、サービス全体の体験を統一するために再構成する

いずれの背景においても、結果として売上向上を目指すことがほとんどです。
しかし、サイトリニューアルにおいては、ミスなく遂行することが意識されすぎて、「なにを達成すべきか」がおろそかになってしまいがちです。
ですので、サイトリニューアルをする前には必ず下記の4つのポイントを意識してください。

  • リニューアルのゴールとして「理想のユーザ体験」を据えること
  • 定めるゴールは、現状の課題に立脚したものであること
  • 定めたゴールから脱線しないこと
  • リニューアル後にもゴールを達成できているかの検証を続ける体制を準備しておくこと

しかしながら、Webサイトのリニューアルでは往々にして、定期的なビジュアル上のレイアウトを整備する活動に終止してしまう側面があります。
というのも、デジタルリテラシーに関係なく誰でもわかりやすい観点がビジュアル上の変化であるため、もっとも意識されやすいのです。
しかし、サイトリニューアルには高額な費用がかかるのですから、デジタルチャネルでの売上の増加に活かさないのは大変もったいないことです。
サイトリニューアルによって成果を伸ばすために必要なのが先述の4つのポイントです。
それぞれ、なぜ留意すべきかを解説します。



ポイント①:リニューアルのゴールとして「理想のユーザ体験」を据えよう

サイトリニューアルにおいても、ゴールを定めることは大変重要です。
どんな施策でも当たり前のポイントではありつつ、しかし「サイトリニューアルを無事終わらせること」があたかも目的のようにすり替わってしまうケースも多々あるので、あらためて留意し、明文化して掲げておくべきです。

とはいえ、リニューアルの背景は各社異なり、かつWebサイトも多種多様なため、達成すべきゴールの具体像もそれぞれ異なります。
そして、達成すべきゴールの具体像を描くには、現状把握が必要になります。

では、Webサイトのリニューアルにおけるゴールにはどのようなものを据えるべきでしょうか。
ここでは参考情報として、UXの観点でのリニューアルの指針をひとつご紹介します。
それは、「サービス利用者のユーザ体験を改善すること」です。

サイトリニューアルのゴールに含むべきUXの観点とは「サービス利用者のユーザ体験を改善するために、リニューアルで対応するべき具体的な問題点を洗い出したリストの達成と、継続した検証」だと言えます。
この指針はどのサイトでも共通します。

例をもとに説明します。

たとえば、Web上にCVポイントがあるECのようなサイトで、売上の向上を目指してサイトリニューアルを行う場合を考えてみましょう。
この場合、見た目のよさを追うよりも、下記の2点を達成できるような情報配置の再デザインや機能追加・削除が求められます。

・いま来ているユーザの利用頻度を増加させる
・これから獲得したいユーザに受け入れられる

すなわち、顧客の定着新規獲得です。
この2点を達成できるような具体化と実装がすなわちリニューアルの内容となります。
次に必要なのはリニューアルの内容の具体化です。
具体化のためには、下記の把握が必要です。

  • 現状のユーザはどのような人か
  • ユーザはなぜこのサービスを利用するのか・サービスの強みはなにか
  • サービスに定着するようになるきっかけはなにか
  • サービスから離脱する原因やきっかけはなにか

顧客の定着と新規獲得のどちらにおいても、この現状把握こそが、ゴールを定めるためのスタート地点となります。
具体的な現行Webサイトの課題点を洗い出し、リニューアルで解決するか否かの優先度をつけるための立脚点が現状把握です。

しかし、このスタート地点を固めることなく、これまでの運用で顕在化してきた個別の問題ばかりがリニューアルのスコープになるケースも多く見られます。
けれども、そうした個別の問題点とはすなわち、『「サービス利用者のユーザ体験の理想像」と現状との間にあるギャップの一部』と換言できます。
であるならば、散在する個別の問題点にそれぞれ対応するよりも、「サービス利用者のユーザ体験の理想像」を定めたうえでそれぞれの問題への対応も決めるべきです。
このように考えると、そもそも「ユーザにとっての現状の課題点」を解決する手法にリニューアルが適しているか否かにも立ち返ることができます。
というのも、解決しなければならない問題点の解像度が高くなると、実はWebサイトのリニューアルまでしなくとも、ちょっとした導線や文言の工夫などで解決できることに気がつくことも多々あるからです。

個別の問題点が複数あり、かつそれぞれの問題点への打ち手にも複数の解があるなかで、リニューアルでどのような絵姿を目指していくか。
その判断のうえで、問題群全体で共通する基準となるのがWebサイトの目的(目指すべきUX)「サービス利用者のユーザ体験の理想像」です。
この基準に沿うことで、顧客の定着新規獲得も結果的に達成できます。
データ移行や技術更新においても、サービス利用者のユーザ体験を阻害してはなりません。
だからこそ、リニューアルにおけるUX観点での指針は「サービス利用者のユーザ体験の理想像」にどれほど近づけられるかと言えるのです。



ポイント②:定めるゴールは、現状の課題に立脚したものであること

「サービス利用者のユーザ体験の理想像」を描くには、まず現状把握が必要になります。
では現状の課題を把握するためにはどうすればよいのでしょうか。
まず観察すべきは、いまWebAサイトに来訪しているユーザです。
いくつかの手法があり、消費者アンケート、ユーザ調査、Web行動の分析などが挙げられます。
こうした取組の出発点としては、ユーザ調査が有効です。
ユーザ調査のうち、FGI(フォーカスグループインタビュー)よりデプスインタビュー(1対1のインタビュー)のほうがよりユーザの実態に近づけます。
また、意見ではなく事実を聞くべきです。検討行動のシナリオを追うのが推奨されます。
ヒアリングの他に、リニューアル後のWebサイトのプロトタイプを利用してもらうのも効果的です。
ユーザの実際の利用行動を確認する調査は、ユーザ行動観察調査と呼ばれます。

ユーザ行動観察調査については下記の記事で解説しています。
ユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)の必要性



ポイント③:定めたゴールから脱線しないこと

リニューアルでは複数の部署が絡みがちです。
というのも、システム上の制約を踏まえた調整にくわえ、それまでの運用における不満などを解消する機会にもなっているためです。
しかし、リニューアルにおいて優先して達成すべきゴールが定まっていなければ、各部署それぞれの意図を統一できずに、総花的なWebサイトになってしまいがちです。
狙いがボケているWebサイトは成果につながりにくく、くわえてその後の改善においても指針を立てづらくなってしまうため、せっかくのリニューアルがむしろ成果を下げる要因になってしまうケースも往々にしてあるのです。
関係各所に対して、定めたゴールへの共感を呼ぶには、ゴールが、実在するユーザに立脚した仮説であることが有効です。
根拠を用意することによって、また解決すべきユーザのお悩みをわかりやすく示すことで、リニューアル作業のなかでブレがちな「リニューアルのゴール」を堅持しましょう。



ポイント④:リニューアル後にもゴールを達成できているかの検証を続ける体制を準備しておくこと

成果を伸ばし続けるには、リニューアル後の検証も非常に重要です。
どれほど精緻に準備や整備をしても、ユーザが変化していく以上、仮説と実態とには大なり小なりのギャップが生じていきます。
リニューアルの狙いを達成できているのか、大きく改変した部分については接触ユーザの前後の行動を見て確認しましょう。

検証と改善においておすすめなのはWebサイトでのABテストです。
模範的な事例として、リニューアル前の調査リニューアル後の高速改善の両者をくみあわせてリニューアルに成功した企業の事例をご紹介します。

ユーザの状況に寄り添い成果2.4倍 – 日本財託様との全面的なUX改善事例

日本財託様でのリニューアルは、先述の2つのステップ、すなわちリニューアル前の調査リニューアル後の高速改善のそれぞれで成果を上げることができました。

リニューアル前の調査では、新サイトの指針となるような大きな発見を得ました。
それは、時代の変化によってユーザが情報への不信感を高めていたこと。リニューアルではこの不信感の払拭がゴールに据えられました。
リニューアルで解くべき課題を事前に精緻に捉えていたことが成果につながったのです。
また、調査によって、Webサイトの最適化だけでなく、お客様の新しいニーズが発見され、Webサイトの改善にとどまらないビジネスのプラスアルファのヒントも得ることができました。

リニューアル後の高速改善では、サイトリニューアルのきっかけだった「お客様のニーズとのギャップ」をいかに継続するかを課題に据えました。
自社内でのUX企画力を高めることによる継続的な改善体制の構築のために、ユーザの行動データを確認することにしました。
結果としてこのリニューアル後の改善においても成果を向上させることができました。



まとめ

以上、Webサイトのリニューアルをする前に留意すべき4つのポイントを紹介いたしました。
ぜひ、貴社サイトのリニューアルの際に確認いただき、ユーザにとっても使いやすく、企業にとっても成果につながる取組として成功させましょう。

  • ① リニューアルのゴールとして「理想のユーザ体験」を据えること
  • ② 定めるゴールは、現状の課題に立脚したものであること
  • ③ 定めたゴールから脱線しないこと
  • ④ リニューアル後にもゴールを達成できているかの検証を続ける体制を準備しておくこと

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弊社はサイトリニューアルをはじめ幅広いデジタル領域を支援してきました。
ユーザ行動観察調査で培った知見をもとに、近年はデジタル領域でのユーザ行動データ分析に注力しています。
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