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マーケティングにおけるリテンションとは

2022.07.22 Fri.

マーケティングにおけるリテンションとは

マーケティングにおけるリテンションとは?

リテンション(retention)とは、「保持」「維持」を指す単語です。
例えば人材業界では自社人材の定着率を高める取り組みをリテンションマネジメントと呼びます。
マーケティングにおいては既存顧客の定着を指します。
ですので「リテンション向上施策」とはすなわち「既存顧客と良好な関係性を維持していくための施策」のことを指します。顧客の定着を促し、離反を阻止し、かつリピート購入や購買単価の向上も狙うマーケティング施策なども含む総称です。
類似の呼称としてカスタマーマーケティング、CXマネジメントなどがありますが、顧客を定着させるためにリテンションレート(リテンション率)に着目することが分析手法として広く普及しています。リテンションレートの求め方については別章にて後述します。

一般的に既存顧客の維持を目的とした施策は、新規開拓よりもターゲットが明確なうえに効率良く収益を伸ばせるため費用対効果が高いとされます。
くわえて、新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持するより多くのコストが必要です。
両者のコストは差にして約5倍にものぼる、とする1対5の法則として日本では広く知られています。
もちろん、実際の数値差は各業界、各サービスごとにおおきく異なります。耳目を集め覚えられやすいワーディングは往々にして正確さ (1) を犠牲にしており、この"法則"もその一種です。
しかし「いかに既存顧客の維持が重要か」を伝えるうえでこのキャッチーさは大変有効なため、今後もこの"法則"は引用され続けるでしょう。
なぜなら、コストを抑えつつ利益を上げるためにリテンション向上が重要であること自体は間違いないのですから。

(1) 正確さを求める方は、1:5の法則の元ネタとされるFrederick Reichheldの1990年のコラム、業界別の継続年数別の既存顧客利益を図示している記事Zero Defections: Quality Comes to Services をご参考ください。
ちなみに、“1:5の法則”が典拠としているのは記事内の ❝ in the credit card business, a 10% reduction in unit costs is financially equivalent to a 2% decrease in defection rate. ❞ という記述だと考えられます。
当時の米国クレカ業界を例とすると、離反率の2%低下(4年リテンションの2%維持)は獲得単価の10%削減に匹敵していた、というわけですね。
貴社における割合はどれくらいでしょうか?既存顧客の離反による損失は思っているよりも大きいかもしれません。
LTVの算出に加えて、どのタイミングでどれほどのユーザが離脱しているかの割合が分かれば、注力するべき領域が見えてきます。

リテンションが注目されてきた背景

デジタルマーケティングにおいては短期的なアクティベーション施策が採用されがちですが、ビジネスの長期的な成長のためにはリテンション向上への取り組みが必要です。
たとえば、2021年6月に米国ニールセンが発表したホワイトペーパーでも包括的なマーケティングを実施するには新規獲得に偏重しすぎないバランスが不可欠だと指摘しています。これは、GAP、adidas、Tripadvisorなどの多国籍ブランドが2019年後半に長期的なブランドエクイティを構築し維持する必要性を公式に発表したことからも読み取れます。

https://www.nielsen.com/us/en/insights/report/2021/take-command-of-your-brand/のスクリーンショット
https://www.nielsen.com/us/en/insights/report/2021/take-command-of-your-brand/

リテンションを分析する方法の例

N日リテンション

新規ユーザがプロダクトを初回に利用した日を 0日目とし、N日後に戻ってきてプロダクトを使用したユーザのパーセンテージをN日リテンションと呼びます。
SNS、ニュース、ゲームなどユーザが定期的に利用するプロダクトでよく用いられています。
実例として、Statista社が2020年に発表したアプリの業界別リテンション率調査を見てみましょう。
31業界平均でアプリのインストール当日のリテンション率(1日リテンション)は約25%だとわかります。30日リテンションとなると約5.7%にまで低下します。
この数値からも、ユーザのサービス利用には導入後のアクティベーション / リテンション向上をどう促すかが重要だとわかります。

日単位にこだわりすぎる必要はなく、サービスの利用実態にあわせて、週単位、月単位、4半期など必要に応じて間隔を広げて測定しましょう。
長編映画をメインに取り扱うストリーミングサービスの場合、ゲームよりも利用頻度は自然と落ちるはずです。
プロダクトによって利用頻度は異なるわけですから、プロダクトに独自の利用サイクルがある場合には測定間隔をカスタマイズする必要が出てくることもあります。
たとえばPinterestでは「初回ユーザー登録した後から 1 - 7日目の間」と「28 - 35日目の間」のリテンションに特に注目しています。 (3)

http://jwegan.com/growth-hacking/27-metrics-pinterests-internal-growth-dashboard/のスクリーンショット
(3) http://jwegan.com/growth-hacking/27-metrics-pinterests-internal-growth-dashboard/

Unbounded リテンション

定期的に利用されないプロダクトの場合、「その日以降」に戻ってきたユーザー数を見るのが適切です。
また、チャーンレート(解約率)の把握にも役立ちます。

リテンションを高めるにはUXが有効

このようにリテンション率を求めることができればサービス利用時の各場面でどのような打ち手が必要かも見えてきます。
そのなかでも特に基本となる点として、まず気をつけていただきたいUXのポイントが2つあります。
それは「オンボーディング」と「疑問解消」です。

「オンボーディング」と「疑問解消」がリテンション向上に有効
「オンボーディング」と「疑問解消」がリテンション向上に有効

弊社でも数多くの業界におけるリテンション向上を支援してきましたが、施策を成功させるにはUX(ユーザ体験/顧客体験)の把握が重要だと痛感しています。
ある企業では、リテンションレートをもとに離脱要因となりがちな利用場面とWebページをセットで突き止め、そのページのファーストビューにユーザが見落としがち / 忘れがちな情報を掲載しました。たったそれだけの小さな改修ですが、この改修によるUXの改善は思いの外おおきく、結果としてその利用場面での離脱を5割ほどに防ぐことができました。
このように、改善で意識すべきはその規模ではなくユーザがなにに困っているかの特定です。リテンション向上のための施策が成果を生むかどうかはUXを適切に把握できているか否かが分水嶺となります。

リテンションの向上ならUXグロースOps

弊社は幅広いデジタル領域をコンサルティングで支援してきました。
ユーザ行動観察調査で培った知見をもとに、近年は特にデジタルにおけるユーザの行動データ分析に注力して各企業様の支援を行っています。
リテンション向上へ取り組まれる方は、ぜひUXグロースOpsをご検討ください。
まずは気軽にお声掛けください。
理想のUXをどう定義するかなどのお悩みについても、どのような支援が考えられるかのご相談から対応いたします。