先日、顧客体験について顧客体験(CX)とは? ~体験価値の再設計が組織を変えるの記事にて重要性が高まっている背景を解説しました。
公開後、このサイトの記事のうちでもっとも反響をいただいており、ご質問も頂戴しました。
その質問への応答として、この記事ではオンラインでの顧客体験の向上にどう取り組むかについて解説いたします。
「顧客体験を向上させる」には「お客様にどんな体験をしてもらいたいのか」をまず考えよう
頂戴したご質問は下記のとおりです。
顧客体験を向上させることが重要と言われてもどう進めればいいかわからない
同様のお悩みを、多種多様な業界のWeb担当者の方々からしばしばお伺いします。
顧客体験向上の取組のためにはなにから始めればよいのでしょうか?
まず取り組むべきは、「お客様にどんな体験をしてもらいたいのか」を考えることです。
この「お客様にとっての理想のサービス体験」を明確にすることこそが、サービスのその後の改善の方針を明確にすることにつながります。
顧客体験の向上は目指すべき理想像があってこその取組です。
では、その取組をどう進めていくか。
その進め方を具体化するためのひとつの手法として、まず2つの定義の設計から着手していく取組み方をご紹介します。
顧客体験の向上に取り組むために必要な2つの設計
そもそも「顧客体験が向上した」か否かは、どのようにして読み取っていけばいいのでしょうか。
読み取るためには、下記2つの設計が必要です。
- A.「よい顧客体験」を定義する
- B.「よい顧客体験」と紐付いた数値指標をKPIとして据える
AとBそれぞれの設計の仕方を解説します。
A.「よい顧客体験」はどう定義するか
そもそも顧客体験とはなんでしょうか?
以前、BIツールベンダーの担当者に「貴社ツールの『よい顧客体験』とはなんですか?」との質問をしたことがあります。
担当者は「このBIツールを使っていただくことで従来よりも、負担なく、属人性を排除し、役に立つデータをチームで活用していただくことです。」と答えました。
よくある誤解なのですが、この担当者の回答は「よい顧客体験」ではなく「プロダクトのコンセプト」を指してしまっています。
実は、先述の「『よい顧客体験』とはなんですか?」という質問はちょっと意地悪な質問です。
というのも、「よい顧客体験」はひとことで述べきれるものではないからです。
顧客体験とは、サービス / プロダクトコンセプトよりももっと細かい、各利用場面でのユーザの体験の集積を指します。
ですので、「よい顧客体験」を聞かれたのならば、そのツールを使うユーザの、場面ごと、目的ごと、背景ごとに異なるさまざまな理想の利用体験のリストを提示する必要があるでしょう。
この「さまざまなユーザの各利用場面」をそれぞれ観察していき、よりよい形に改善をしていくことが「顧客体験の向上」であり、「よい顧客体験を実現する」ことなのです。
では「ユーザの各利用場面」はどのように把握するか。
いくつかの手法をご紹介します。
たとえば、ユーザのWeb上の行動データを用いる方法。
ファン体験の改善を重視しているヤクルト様でも、Web上の行動データの活用を進めていらっしゃいます。
ヤクルト球団は、業界に先駆けてNPS®(Net Promotor Score)を事業活動指標として導入するなど、ファン体験の改善にいち早く取り組んできたプロ野球球団です。しかし、コロナ禍で球場への来場制限を迫られ、従来のビジネスモデルに限界を感じるようになりました。ファンとの新しい接点のあり方を模索した結果、リモートワークや外出自粛を背景とするオンラインショッピングの需要増に着目し、まずはECサイトを軸にファン体験の改善と成果創出に取り組みました。
その中で「ファンの属性データは豊富に持っているが、1人ひとりの行動データを取得できていない」ということが明らかになりました。さらに、ユーザ1人ひとりがECサイトでどのような体験をしているのかわからず、ファンの体験改善のための企画にデータを活用できていないという課題が浮き彫りになってきました。
ほかにユーザ調査も有効な手法です。
ユーザ調査にもいくつかの種類があるのですが、特に推奨しているのはユーザ行動観察調査です。
ユーザ行動観察調査とは、デプスインタビューとプロトタイピングを組み合わせた形式の調査です。
ユーザ行動観察調査の詳細については下記の記事で解説しています。
ユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)の必要性
ユーザ調査のうち、ユーザのマルチデバイス・マルチメディアにまたがる行動を把握するためには、リアルタイム・エクスペリエンス・トラッキング(Real time Experience Tracking: RET)も有効です。
リアルタイム・エクスペリエンス・トラッキング手法の詳細については下記の記事で解説しています。
ユーザのマルチデバイス利用行動を理解する:リアルタイム・エクスペリエンス・トラッキングとは?
他に、バリュージャーニーを描くという手法もあります。
バリュージャーニーは、カスタマージャーニーとは異なります。
カスタマージャーニーと、バリュージャーニーが違う点は以下になります。
・人々のどの「状況」をターゲットドメインとするかが規定されている。
・ビジネス側のプロセスもあわせて検討され、そのうえでどこをキャッシュポイントとするかが計画されている。
バリュージャーニーの詳細については下記の記事で解説しております。
カスタマージャーニー、アフターデジタル時代で変わる設計思想
また、これらの手法を複合的に組み合わせたUXグロースという方法論も存在します。
このようにいくつかの手法がありますが、いずれの手法をもちいるにせよ、現状の利用状況を踏まえて改善を積み重ねるための足がかりとなす点は共通しています。
これらの観察手法を用いて、利用場面ごとの「よい顧客体験」の具体的な理想像を集積し実践していくことが、「顧客体験を向上させる」ことなのです。
事例:「よい顧客体験」を目指すKDDIさまのau PAY【ホワイトペーパー配布中】
顧客体験の向上を目指すKDDI様では、UXグロースという方法論を採用することで「よい顧客体験」を明確化し実現する取組をされています。
取組の背景などを実務担当者のおふたりに直接インタビューしたホワイトペーパーを無料で配布しておりますので、ぜひご参考くださいませ。
B.「よい顧客体験」と紐付いた数値指標をKPIとして据える
顧客体験が向上したかを判断するためには「よい顧客体験」と紐付いた数値指標をKPIとして据える事が必要です。
ユーザの利用場面と紐付いた改善であれば、かならず定量的な変化が現れます。
指標を定めるためには、まずロイヤルユーザ化するまでのステップを定義することがおすすめです。
そのうえで、ロイヤルユーザを増やすために次のステップに進んでもらうためにはどのような「よい顧客体験」を提供するべきかを考えましょう。
そして、そのステップの遷移率や基準と置いたCV数を指標として確認していきます。
改善の成果が指標に反映されているか否かを参考に、改善のもととなった仮説を検証していくことが重要です。
まとめ
- 顧客体験を向上させるには「よい顧客体験」の定義が必要
- 「よい顧客体験」は各ユーザの各利用場面ごとに定義される
- 「よい顧客体験」を定義し、実装していくための方法論としてUXグロースなどの手法がある
- 顧客体験の向上を把握するにはロイヤルユーザ化のステップに沿った指標を用いるのがよい
顧客体験向上を支援する "UXグロースOps"
弊社はサイトリニューアルをはじめ幅広いデジタル領域を支援してきました。
ユーザ行動観察調査で培った知見をもとに、近年はデジタル領域でのユーザ行動データ分析に注力しています。
顧客体験の向上にお困りの方は、ぜひUXグロースOpsをご検討ください。
まずは気軽にお声掛けください。
理想のUXをどう定義するかなどのお悩みについても、どのような支援が考えられるかのご相談から対応いたします。
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