多様化する資産運用ニーズに応じ、質の高いコンサルティングを提供するSMBC日興証券株式会社。個人のお客さまに対して、口座開設から最適な金融商品のアドバイスまで、幅広いサポートをおこなっています。デジタルマーケティングの最適化を目指し、もともとビービットが提供するユーザ行動分析ツール「USERGRAM」を導入していた同社は、成果創出に向けてUXのプロフェッショナルが伴走するサービス「UXグロースOps」を追加で導入しました。追加導入に至った背景は何か、どのような効果があったのか。デジタルマーケティング部の3名にお話を伺いました。
SMBC日興証券株式会社 デジタルマーケティング部
マーケティング推進課 課長 美根 幸子 様
マーケティング推進課 蓮川 慎治 様
マーケティング推進課 榊原 里歩 様
※所属・役職はインタビュー当時のものです。
ユーザ拡大に伴い、対面からデジタルへ。オフラインの知見をオンラインで活用できないか
ーSMBC日興証券さまは2023年3月から「UXグロースOps」を導入されています。あらためて、その背景を伺えますでしょうか?
美根 幸子 様(以下、美根様):近年、新NISAなど国全体として資産運用立国に向けた動きが本格的にスタートした影響もあり、証券口座を開設する個人のお客さまが急増しています。これまで主軸だった支店での対面接客では、対応できるお客さまの数にも限界があり、デジタル活用が不可欠でした。
ただし、単にデジタル上のチャネルを持てば良いというわけではありません。お客さまが資産運用に取り組む背景はさまざまであり、そうした個々の状況を踏まえたコミュニケーションをとる必要があります。そこで、デジタル上のお客さまの行動を、個のユーザとして定量かつ定性的に見ることができるツール「USERGRAM」を2019年から導入しています。
導入当初は「デジタルをどのように顧客接点として活用していくか」を検討するフェーズでしたが、段々と会社から期待される成果が大きくなっていきました。また、同時並行で他のプロジェクトがあり、改善活動の時間創出ができず、リソースやノウハウも不足している状況でした。そのような中、企画から成果検証までのPDCAをしっかり回せるよう、ビービットのコンサルタントが伴走するサービス「UXグロースOps」の追加導入が決定しました。
ー実際にデジタル施策の実行に携わるお二人は、なにか課題感をお持ちだったのでしょうか?
蓮川 慎治 様(以下、蓮川様):当部のメンバーは、実店舗での営業経験があり、長年対面で培った「いろんな背景をもったお客さまの状況を把握し、それに応じたコミュニケーションをとる」ためのノウハウを強みとしています。しかし、それらをデジタル上で活用しきれていないところに課題感がありました。本来は、デジタルのスキルやツールの知識を補うために学ぶ時間を確保したいのですが、美根が言うように、他の業務にも追われていたため十分な工数を割けられない状況でした。
榊原 里歩 様(以下、榊原様):蓮川と同じ課題感です。対面営業ではお客さまの反応を見てどのようにコミュニケーションをとると良いかを考えていましたが、デジタル上ではお客さまの顔と声が直接届くわけではなく、数値で判断しなければならないため、反応をくみ取ることに苦労していました。
美根様:これらの課題感は重々承知しておりました。社内でリソースとノウハウが不足している中、成果を上げるには、外部のプロフェッショナルに分析業務を中心に伴走していただき、共に推進して行くのが最適だと考えました。
手が回らなかった施策の効果検証が実施可能に。ユーザの「なぜ」がわかるから判断がスムーズに
ー実際にどのようにUXグロース活動を進めているのでしょうか?また、社内だけで完結させることと、ビービットの支援を受けるのとではどのような違いがありますか?
蓮川様:ビービットの担当コンサルタントに、ユーザの行動分析、コンテンツ企画から検証まで、一気通貫で伴走いただいています。改善領域の設定、課題分析、施策立案、実装・振り返りを1.5ヶ月の周期で行っており、各サイクルのテーマは、成果創出の観点より、取り組む必要性の高い案件から優先的に選定しています。ミーティングは、活動の内容に合わせて週次、または、隔週で実施しています。
榊原様:ビービットに入っていただき大きく変わった点は、さまざまなデジタルマーケティング施策が「やって終わり」にならないところです。これまでは施策の効果検証まで手が及ばないことがありましたが、今は出した施策に対するユーザの反応をみることができています。施策をただ打ち続けるのではなく、打ったものに対する振り返りをしっかり行い、今後の施策立案に学びを活かすというサイクルを回すことができています。
また、新しい施策に対してだけでなく、これまで打ち出した施策の課題を把握することができています。これにより、成果創出の考え方として、施策を一から新たに打つことのほかに、既存の施策をより効果的なものにするという方法と文化が組織に浸透しているように感じます。
美根様:他にも、自社だけでは気づけない客観的なユーザ視点を補ってもらえることに価値を感じています。自社だけでは、どれだけ考え抜いたつもりでも、ユーザ目線が不足した部分が出てしまうものです。支援に入っていただくことで、我々がもつ証券会社としての知見と、ビービットのデジタル・UXの専門性といった互いの強みがうまく融合できていると感じます。
蓮川様:ビービットの提案資料には必ずユーザ視点によるデータに基づいたロジックが添えて記載されており、非常に納得感があります。背景や理由がわかることで、自社で立案した施策との差分がすぐにわかり、どのように進めるべきかの判断がスムーズにできています。後から「なぜこうなっているのか?」を確認する手間も省くことができ、制作スケジュールも短縮できています。
榊原様:ユーザ視点という共通言語は、部内での活動推進時だけでなく、上層部や他部署と連携する際の社内コミュニケーションにも有効です。当部が出すコンテンツは弊社が公式に出すものになるので、社内の各所で確認が発生します。デザインやコンテンツの判断の根拠を伝えることができ、追加修正などもスムーズに進められています。
案内メール経由の投資信託の買付件数が2.5倍に。UXのプロならではのユーザ視点で施策を改善
ーUXグロース活動を通じて、現時点で実感している成果があれば教えてください。
美根様:口座開設や積み立て投資のランディングページのコンバージョン率向上など、いくつもあります。とくに大きかったのはNISA口座を利用した投資信託の取引額の増加です。
活動を進めている中で、NISA口座をお持ちのお客さまの「2回目以降の買付(追加購入)」について、改善の余地が大きいことがわかりました。弊社は、有効なリスク対策として投資先を複数のファンドに分散させることを推奨していますが、お客さまの投資先が一箇所に集中してしまっていました。初回取引を終えたお客さまが複数ファンドを持つメリットを認知し、銘柄検討、買付へとステップを進めることが理想だと考えています。この一連の体験を向上させる目的で、施策の企画から実装までを行いました。
最初に着手したのは、既存ユーザ宛のメール内容の改善です。弊社では、追加購入の後押しとなる情報をお伝えするため、お客さまに人気ファンドをランキング形式で紹介するメールをお送りしています。しかし、ユーザの行動を見てみると、メールを開封いただいているのに、2割程度のお客さましかファンドの詳細ページに遷移していないことが判明したのです。
もともとの施策では、人気ファンドのランキングを提示する際に「非課税枠の上限を賢く使うためにランキングを参照しよう」というメッセージを訴求していましたが、ビービットから「一度ファンドを購入したお客さまは、そもそも複数ファンドをもつべきだと認識していない」という指摘をいただきました。
そこで、追加購入すべき理由として「複数ファンドを保有することでリスクを分散させる」という内容を強調するメッセージに変更しました。その結果、人気ファンドのページへ遷移するユーザ数は2.1倍に伸び、メール経由での買付件数は2.5倍に増加しました。
デジタル活用のナレッジを蓄積し、社内へ積極的に共有する
ー今後の展望について教えてください。
蓮川様:現状は分析業務の多くをビービットにお願いしているのですが、いずれはUX改善のサイクルを自社の力で回せるようにしていきたいです。そのためにも、自分たちが分析をした内容にフィードバックをいただくなど、引き続き伴走支援を通じて方法論を習得していきたいと考えています。
美根様:デジタルを活用しようという意向は、今まで以上に会社全体で強まっており、部門間で連携した成果創出の仕組みづくりができればと思っています。これからもユーザ起点のデジタル活用を進め、今よりさらにお客さまから選ばれる証券会社になれるよう、引き続き精進してまいります。
担当コンサルタントからのコメント
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- UXインテリジェンス事業本部 UXグロース部
村西 純奈
- SMBC日興証券で働かれている皆さまには、お客さまを大事にされている「文化」があると感じています。それを「文化」に留めることなく、サービスを利用するお客さまからのインプットを活かした施策を通して、SMBC日興証券のユーザ体験向上に寄与できることを大変嬉しく思っています。
- UXインテリジェンス事業本部 UXグロース部