ネオファースト生命保険株式会社様アプリ利用登録率2倍超え。新しい保険サービス「Neoコーチ」が実現した、UXグロースやユーザ中心の開発とは?

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健康診断の結果を入力することで、健康改善のためのサポートをチャット形式で受けられるネオファースト生命提供のアプリ「Neoコーチ」。リリースから1年で7万件を超えるダウンロード数を達成し、ユーザの健康増進に貢献しています。
しかし保険会社であるネオファースト生命は、ユーザを中心にしたデジタルサービスの立ち上げやその後の体験改善(UXグロース)、それに関わる組織運営に関する知見がないことが悩みでした。
そんな中、ビービットの著書「アフターデジタル」シリーズをきっかけに方針を定め、開発とグロースの両方のフェーズでビービットと一緒にプロジェクトを推進。
当初課題だったアプリ利用登録率が2倍超になるなどの成果を出しているNeoコーチの開発・グロースのプロセスについて、初代プロジェクトリーダーの倉上 英之様と、現プロジェクトリーダーの田中 伸吾様、プロジェクトメンバーのキョウ 振様、鈴木 圭祐様にお話を伺いました。

ネオファースト生命保険株式会社
CXデザイン部

  • CXデザイン戦略推進課
    ラインマネジャー
    田中 伸吾 様
  • CXデザイン戦略推進課
    アシスタントマネジャー
    キョウ 振 様
  • CXデザイン戦略推進課
    アシスタントマネジャー
    鈴木 圭祐 様


企画総務部

  • 経営戦略企画課
    ラインマネジャー
    倉上 英之 様

「顧客主導型のリスク対応」時代の保険のあり方を考えて生まれたアプリ、Neoコーチ

ーまずは、Neoコーチの提供に至った背景について教えてください。

倉上 英之様(以下、倉上様):昨今のAI・ビッグデータ解析等のテクノロジーや医療技術等の進歩は目覚ましく、近い将来には一人ひとりが自身の疾病リスクを把握できるようになり、そのリスクを能動的に抑制していく行動をとるトレンド「顧客主導型リスク対応」が起こりえるといったリサーチ結果があります。当社はそこに注目し、今後のお客さまの価値観・行動の変容を想定して、将来の生命保険の目指す姿からバックキャスティングし、ユーザ調査を繰り返しながら顧客体験のシナリオを描きました。

伝統的に生命保険会社が提供してきた価値は、保険加入により、万が一のリスクに「備える」ことです。今後はそれだけではなく、その前段階にあるリスクを「把握・理解する」こと、そして健康改善でリスクを「抑制する」ことまで含めたお客さまニーズに応えること、つまり顧客主導型リスク対応を支えることが重要な価値となると考えました。その価値をシームレスに提供すべく、社内で「Wellnessプロジェクト」を立ち上げ、Neoコーチを開発することにしました。

ネオファースト生命保険株式会社 企画総務部 経営戦略企画課 ラインマネジャー 倉上 英之 様

ーNeoコーチでは、どのように顧客主導型のリスク対応を支えているのでしょうか。

田中 伸吾様(以下、田中様):Neoコーチには、健康診断結果を入力すると気をつけるべき疾病等を示してくれる「健診アドバイザー」という機能があります。健診結果に加えて生活習慣に関するアンケートに答えることで、Neoコーチ専属のヘルスコーチである「ウェル美」が健康改善に向けたチャレンジを提案してくれるというものです。

生活習慣の改善は「続けること」がとにかく重要です。Neoコーチでは、継続のモチベーションを上げるための複数の仕組みを取り入れています。例えば、日々のチャレンジ実施をウェル美に報告することで、ウェル美からフィードバックコメントを得ることができたり、継続度にあわせてプレゼント抽選券が配布されたりといった小さな達成感を得られる体験をつくっています。

Neoコーチに健診結果を入力すると、その人のリスクや改善点に関するアドバイスが確認できる(画像左)ほか、
専属ヘルスコーチ「ウェル美」とトークをしながらチャレンジを進めたり(画像中央)、
健康増進に関するコンテンツを読んだりすることができる(画像右)

また、健診結果から一人ひとりのリスクや備えたい疾病にあわせた医療保険の選び方を提案する「健診結果de保険ナビ」という機能も提供しています。

これらによりお客さまが、リスクを「把握・理解する」、健康改善によって「抑制する」、そしてそれでも抑えることができないリスクに対して保険で「備える」といった顧客主導型のリスク対応を支えています。

ーBtoCアプリの提供という挑戦に、どのように取り組んでいかれたのでしょうか。

倉上様:「こういう体験をつくりたい」というコンセプトは明確だったのですが、アプリというデジタルサービスの立ち上げは私たちにとって初めての挑戦だったため、どのようにサービスとして具現化すればよいのかわかりませんでした。書籍「アフターデジタル」の影響も受け、プロジェクト開始当初からユーザ体験を大切にしたサービスをつくりたいという想いが強かったので、コンセプトを具現化する初期の企画段階からビービットさんにパートナーとして支援に入っていただきました。

プロジェクト初期は、仮説をもってユーザへのインタビューを重ね、プロトタイプを作り直す日々でした。机上で自分たちだけで考えたことと実際のユーザの反応は、やはり違います。実際のユーザに対する理解が深まるにつれ、プロジェクトメンバー全員で「ユーザがどのような心理でアプリを利用するのか」をいつも考えていました。

「ユーザ憑依」というのは、ビービットさんに教えていただいたことですが、まさに自分にユーザが乗り移ったかのように考え、細部にこだわってテストと修正を繰り返した結果、今のNeoコーチがあります。おかげでリリースして間もない段階でもユーザからポジティブなフィードバックが得られています。

アプリ利用登録率2倍超も。積極的な社内発信でスピード感のあるグロース活動を実現

ーアプリをリリースした後のグロース活動は、当初からやることを決めていたのでしょうか。

田中様:プロジェクトを通じて、「アプリはリリースしたら終わり」ではなく、むしろリリース後こそユーザからのフィードバックを得て体験を改善させていく「UXグロース」の活動が重要だと理解しました。

しかし、どうやって行うのか。基本的に保険商品は、提供開始後に形が変わっていくことはあまりありません。ローンチ後にサービス・体験を成長させていくというのは、これまで当社で取り組んだことのない挑戦であり、難しさを感じていました。

ネオファースト生命保険株式会社 CXデザイン部 CXデザイン戦略推進課 ラインマネジャー 田中 伸吾 様

倉上様:さらに、その当時はまだメンバーの大半が兼務でプロジェクトに入っている状態で、グロースにあたっては改めて専任の組織をつくらねばと考えていました。しかし、この新しい業務を行う新しい組織に何が必要なのかがわからず、ビービットさんに相談をしていました。相談するなかで、UXグロースの重要性を教えてくださり、私たちやNeoコーチ、そのユーザについての深い理解があるビービットさんにお願いするのが一番の近道だと思い、再び支援を依頼することにしました。

ー 現在は、具体的にどのように進めているのでしょうか。UXグロース活動を通じて何か定量的な成果は出ましたか。

キョウ 振様(以下、キョウ様):活動開始時にNeoコーチで目指す姿やUXグロース指標を共通認識化し、改善領域の優先順位を定めたうえでビービットさんに改善施策を提案いただいています。デジタルサービス上のユーザ行動を分析できるツール「USERGRAM」を用いて実際のユーザの体験を確認しながら、打ち合わせで解決すべき課題や提案いただいた施策について議論し、実行施策の成果検証を行っているという流れです。現在は内製化に向けて、少しずつ自分たちで課題分析・施策を考えてみようとしているところです。

鈴木 圭祐様(以下、鈴木様):一例として、Neoコーチを利用するためにはユーザ登録が必須ですが、当初はユーザ登録率が非常に低く、大きな課題でした。これに対して、ビービットさんにUXの観点だけではなく様々な角度から分析をしていただいて、登録に必要なステップ数を減らすなどの改善案を実装した結果、登録率が倍以上に改善されて本当にびっくりしました。

ー既に成果が出ている施策もあるのですね。改善すべき点を見つけてもなかなか実行に移せない組織も多いと思いますが、ネオファースト生命さんがスピード感を持って施策実行ができている秘訣があれば教えてください。

鈴木様:もちろんリソースには限界があるので、全ての施策を実行できるわけではありません。したがって、課題が曖昧だとやった方がいいのか、やるにしてもどういう優先順位でやるべきか判断ができなくなります。でもビービットさんからは「もともとの想定がこうで、現実とのギャップがこうで、ここが課題です。なので、こうしたらよいのでは」と課題の重要性も含めてはっきりと伝えていただけるので、実行に移すことに関しては迷うことがありません。

キョウ様:グロース活動を開始する前に、目指すべき指標をビービットさんと一緒に具体的に設定していたので、「この施策はこのKPI向上につながる」と数字を見て判断し納得することもできました。

倉上様:それに加えて、会社からNeoコーチのことは私たち「Wellnesプロジェクト」に完全に任せてもらっていることが大きいと思います。

逆に任せてもらっているからこそ、Neoコーチの目標、達成できていること、課題になっていることはオープンに経営層も含めて、全社に発信しています。先程お話したユーザ登録率にしても、以前から課題だと理解してもらっていたので、改善策を実行する際にも、社内に意思決定を阻害する要因がなかったんです。

ワンチームで進めたプロジェクトで体得した考え方、次は全社浸透へ

ービービットに感じてくださっている価値はどんなことですか。

鈴木様:感じている価値は、大きく分けて3つあります。「ユーザ起点で課題を分析・可視化する力」、それに対して「的確な施策を提案する力」、そしてそれらが「メソッド化されている」という点です。

1点目の「ユーザ起点で課題を分析・可視化する力」についてですが、ビービットさんは、ユーザ行動を時系列で追っていくことで、定量調査だけでは見えてこないリアルなユーザの状況や課題を可視化してくれます。インタビューによるユーザ行動観察調査だけではなく、USERGRAMによって一人ひとりのユーザの細かな行動まで見ることができ、それを組織内で共有することができるので、ここが確かに課題だという共通認識を持つことができることが強みだと感じています。

2点目の「的確な施策を提案する力」は、ユーザ行動からのインプットによってまさにユーザを憑依させ、ボトルネックが何かを徹底的に考えた上で、改善案を提案してくれる点です。単なる思いつきやセンスによるものではないから、とても納得感があるんです。

倉上様:私たちだけでは、ユーザの課題がわかってもそれをサービスとして具現化する力が不足していたので、そういった部分でも、ビービットさんは引き出しが豊富でとてもありがたかったですね。

鈴木様:そして3点目の「メソッド化されている」という点。課題を分析して、施策を立案するまでのプロセスが方法論として確立しているため、私もそれに倣うことで、一定のレベルで再現できるようになってきている実感があります。それってすごいことだなと。今はまだまだですが、自分たちだけでUXグロースをまわせるようになることが今後の目標です。

田中様:同感です。あと私が感じているのは、皆さん私たちと同じレベルで「このアプリを良くしたい」と思ってくださっているということです。

私たちがやりたいことや課題をとてもよく把握してくださっていて、私たちも気づいていない課題を見つけてくれるなど、常にNeoコーチのことを考えてくれているんだなと感じることがよくあります。

キョウ様:最初のジャーニー設計フェーズから、ビービットさんの資料は私たちの目指すところをきちんと汲んでまとめてくださっているなと感じていました。打ち合わせでの私たちの発言も細かいことまで拾ってくださって、次の打ち合わせで「前回こういう発言がありましたが、次回はこういうことをやってみませんか」とすぐ提案をしてくれることが多く、驚きました。

鈴木様:リアクションも本当に早いですよね。しかも、押し付けじゃない。課題認識を私たちと共有しているので、一緒に議論することができると思っています。

ネオファースト生命保険株式会社 CXデザイン部 CXデザイン戦略推進課
アシスタントマネジャー 鈴木 圭祐 様(左)、アシスタントマネジャー キョウ 振 様(右)

田中様:コンサル会社とのプロジェクトでよくあるのが、私たちの意見をそのまま鵜呑みにされてしまうことで…。

でも、ビービットさんは考え抜いた提案を持ってきてくださるので、ちゃんと意見をぶつけ合えるんですよね。いい意味でクライアントの言いなりにならないというか。それができるから、1つのチームとして一緒に取り組んでいけるんだと思います。

引き続き、Neoコーチで最高のUXを提供できるよう、サポートいただきたいと思っております。

ー最後に、今後の活動の展望について教えてください。

田中様:Neoコーチの提供開始から1年が経過しました。その中で見えてきたユーザの動きや心理をしっかりと把握し、UXグロース活動を通じてよりユーザの皆さんの本質的な目的である「健診結果の改善」のために使っていただけるアプリにしていきたいと考えています。より長く使っていただくために「楽しく、ストレスなく」という点に気を付けていきたいですね。

さらに、生命保険会社としてこれまでにない保険の選び方を体験していただくことで、多くのお客さまにご安心をお届けできるようにしたいと思っています。

倉上様:当社は「Wellness~“もっと自分らしく”~を応援する。」という中長期ビジョンを掲げていますが、Neoコーチは社会的にとても意義のある取り組みだと考えています。

Neoコーチは、ユーザが自身の健康改善に関する知識を得て、それを行動に移すところまでをサポートしていきます。一人ひとりの健診結果の改善サポートが、健康寿命の延伸や健康格差の是正といった社会的な課題の解決につながっていく。そうしたところにもっと寄与できるように、アプリをグロースさせていきたいです。

そのためにも、医療・ヘルスケアなどの周辺領域の企業とのコラボレーションなども含めて、よりお客さまへの体験価値を高めていけたらと考えています。

田中様:また、私たちCXデザイン部はNeoコーチだけではなく、会社全体の顧客体験価値をどう高めていくかの戦略立案をしている部署です。その先駆けとして、今までにない「UXグロース」の考え方を取り入れながらこのプロジェクトを推進しています。

生命保険は契約することがゴールではなく、そこからお客さまとの長期的なお付き合いが始まります。その中で、住所変更などのお手続きや給付金のお支払といった多くの顧客接点があり、こういった顧客接点も現在は多くがデジタル化してきています。

今までは企業目線で「お客さまはこうするだろう」と勝手に想像しながら進めることが多かったのですが、Neoコーチのプロジェクトを通じてユーザを憑依させて考えるという方法がチーム内で馴染んできました。今度は、このUXグロースという考え方を全社に浸透させていくのが次のミッションだと思っています。