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【UXトレンド】OpenAI、デジタル田園都市構想、UX求人3年5倍など

2023.06.16 Fri.

【UXトレンド】OpenAI、デジタル田園都市構想、UX求人3年5倍など
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UX関連ニュースや記事を国内外からピックアップしました。

ピックアップをしていると、UXに関わるケイパビリティを持った人材への注目や重要度が大きくなっていることがわかります。

UXへの注目や期待がますます高まっていますので、会社やチームの人材育成方針に、また自分自身のスキルアップに、ぜひ参考にしてみてください。

1. 2021年アメリカ企業が求めるスキルの5位に「UXデザイン」

2021年に実施されたある調査において、アメリカの企業が人材に求める「ハードスキル」のランキング5位に「UXデザイン」がラインクインしました。

(出典:https://amesite.com/blogs/skill-gap-2021-top-5-soft-hard-skills-companies-need-now/)

ここでは、「UXデザインとはユーザ体験を最大化する方法であり、ビジネスの成功にとってUXが非常に重要」だとされています。なぜなら、他にいくらでも選択肢がある現在、UXが劣悪なサービスを使い続けるユーザはいないからです。

このニュースでは特にオンライン体験の設計においてUXデザインのスキルが求められるとしていますが、正しいUXのケイパビリティを持っていれば、店舗の運営や対面営業など、オフラインの業務においても活躍の幅は広がります。ユーザの状況を捉え、その時その時の最適な体験を提供するという点では、オンラインもオフラインも変わらないからです。

ちなみに、このランキングの1位から5位は、こんなスキルが並んでいました。いずれも、次々に登場する新しい技術をビジネスに活かすためのスキルだということができそうです。

1位:クラウドコンピューティング
2位:AI
3位:データ分析
4位:デジタルマーケティング
5位:UXデザイン

2. 経産省「デジタル人材育成プラットフォーム」

経済産業省の「デジタル人材育成プラットフォーム」においても、「UX/UIデザイナー」が育成すべきデジタル推進人材として位置づけられています。

(出典:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_jinzai/pdf/006_03_00.pdf)

ここでのUI/UXデザイナーの定義は「顧客との接点に必要な機能とデザインを検討し、システムのユーザー向け設計を担う人材」とされていて、ビジネスアーキテクトやデータサイエンティストなどをあわせた5職種の人材を、5年間で230万人育成する計画だそうです。

この計画は、デジタルの力で地方の個性を活かしながら社会課題の解決と魅力の向上を図る「デジタル田園都市国家構想」にも組み込まれており、国を上げて本気でこれらの人材の育成を目指していることがわかります。

詳細な計画はこれから、という部分も大きいようですが、関係する資格取得に対する支援など、UXに関する学びに取り組みやすい環境が整備されるのではないかと期待できますね。

3. 「UX」関連の求人数は3年で5倍

大手人材紹介サービス「doda」によると、UX関連の求人数はこの3年で5倍になっているそうです。

(出典:https://doda.jp/kyujin/pickup/sp221107.html)

上の図の「関連職種」とは、UXデザイナーなどのいわゆる専門職ではなく、UXの観点やケイパビリティを持った人材(例えば商品企画、経営戦略、人事など)を指していて、そうした「ユーザ視点で仕事ができる一般人材」の需要が現在急速に増えている、とのことです。

このニュースではこうしたUX関連求人が増加している原因について、コロナ禍でウェブサービスが隆盛したり、新たなサービス・製品が次々登場していることを挙げ、「顧客体験」がサービス・製品の価値を決める時代に、ユーザ視点で仕事ができる人材の受容が高まっているとしています。

4. ChatGPTのOpenAI日本担当者もUXケイパビリティに注目

今話題の生成AI、ChatGPTを運営するOpenAIの日本担当者であるシェイン・グウ氏も、AI時代において重要な役割を果たす人物として、UXデザイナーに注目しています。

(出典:【落合陽一】「ChatGPT」強化学習リーダーは、日本生まれで6カ国渡った元Google Brainの研究者。OpenAIのシェイン・グウが語る、”生成AI時代”の日本の「強みと新たな可能性」とは?https://newspicks.com/news/8063086/body/ )

生成AIは、これまでは使いこなすのに専門的な知識や技術が必要で、一部の専門家やごく先進的な人たちだけが使うものでした。また、発展の方向性や使い方のコツなども、そうしたコミュニティの中だけで議論がなされてきました。

しかし、自然言語、つまり我々が普段話しているような言葉で生成AIを使うことができるようになった現在、その門戸はデジタルデバイスを操作できる全ての人に開かれたと言っていいでしょう。

ここから本当の意味でAIが一般的に使われるようになるためには、誰にでも使いやすいUI・UXを設計したり、そのための課題発掘やユーザ理解をしたりするためのUXケイパビリティを持った人材が必要とされているのです。

5. デジタル先進企業では2021年の段階で「全員がUXを重視」

中国で圧倒的なシェアを誇るタクシー配車サービスを提供する「DiDi」では、UXに関する教育を徹底していて、全社員がUXを重視しているそうです。

DiDiのHead of Designである程峰氏は、2021年に開催されたイベント「L&UX 2021」において、次のように語っています。

「PCインターネットの時代はUXもあくまで画面デザインを指していました。しかし、モバイルやリアルが絡むと、多岐に渡るユーザ接点を扱わなければならないため、UXを担保するにはもはやデザインの問題だけではなく、全ての社員が自ら担当しているユーザ接点のUXを意識しないと、UXの品質担保は不可能になりました。」

DiDiのサービスでは、UXがオンラインとオフラインにまたがって多岐に渡るため、全社員がそれぞれの担当業務の中で顧客接点の品質を保つことで、サービスの全体のジャーニーが良くなりユーザに評価されるのだ、ということが組織として染みついていて、UXを重要視しない社員は一人もおらず、UXに関する教育も全社に徹底しているそうです。

程峰氏が出演したセッションを含む「L&UX 2021」の全てのセッション内容は、こちらの書籍にまとめられています。詳しい内容が気になる方は、ぜひチェックしてみてください。

アフターデジタルセッションズ 最先端の33人が語る、世界標準のコンセンサス - L&UX2021


先日ビービットが出したこんなプレスリリースも、このような潮流の中に位置づけられるかもしれません。

ベネッセ、グループ全体のUX設計・体験価値創出力強化に向け、 ビービットと資本業務提携を締結

ベネッセは、教育や介護の領域を中心に、学習用タブレットを提供したり、独自のAIを開発したりと、デジタルに大きな強みを持っていて、早くからUXに力を注いでいる企業の1つです。

教育業界を代表するベネッセがグループ全体にUXを浸透させるという意思決定をしたことは、23年間UXを広めているビービットとしても、とても感慨深いことです。



今回は以上です。UXへの注目や期待がますます高まっていることが、ご紹介したニュースや記事を通して見て取れるのではないでしょうか。