第11回 顧客志向とユーザビリティ

ユーザビリティを高めるためには、どれだけ『顧客志向』であるかが重要なポイントになります。

ユーザビリティを高めるためには、どれだけ『顧客志向』であるかが重要なポイントになります。と書くと当たり前のように聞こえるでしょうが、実践しているサイトは多くはありません。

例えば「このコンテンツは読み物として順番に見せていきたいからFlashで動画にする」という場合があります。しかし、ユーザはピンポイントにコンテンツを見たいと思うことが殆どでしょう。
常に急いでいるインターネットユーザは、悠長に文章を読んだりはしないのです。

つまり、意思決定者がユーザの利益を優先できるかどうかで、サイトのユーザビリティの高さが左右されます。
ユーザの利便性よりも、部署間の利害や提供者側の論理に捕われていると、結果はユーザにストレスを強いるユーザビリティの低いウェブサイトを生み出すことになるのです。

世界一の顧客志向 amazon.com

会社として「顧客志向」を標榜していることで、サイトでも高いユーザビリティを実現している企業に、世界最大のオンラインブックショップのamazon.comがあります。amazon.comのユーザビリティの高さは、ユーザビリティ分野の大家ヤコブ・ニールセン博士も認めるところです。

amazon.comのミッションは、「the world's most customer-centric company - 世界で一番顧客志向の企業」です。

会社全体として顧客志向を高らかに謳う会社だからこそ、あれだけのサイトを作り上げることができたといえるでしょう。

ウェブサイトだからユーザの視点が大切だというわけではなく、会社として顧客の立場に立てるかが、全ての活動の鍵となることをこの例は物語っています。

ユーザビリティが高い = つまらないウェブサイト?

私は、日常のユーザビリティ向上の業務を通して「ユーザビリティを高めると、つまらないウェブサイトができるのでは?」というご指摘を受けます。

しかし、真にユーザの立場に立ったサイトはユーザにとっては「いいサイト」「便利なサイト」「おもしろいサイト」であって、決して「つまらないサイト」ではありません。

動画がなかったり、機能がなければ「つまらないサイト」と思うのは、これまたサイト運営者側の勝手な論理に過ぎないことが多いのです。

ウェブサイトのユーザビリティのみならず、質の高いサービスを提供していくには、運営者側の理論を捨て、徹底的に顧客志向であろうという姿勢が重要になるのです。