第37回 住民基本台帳法改正がもたらすマーケティング革命【前編】
ダイレクトメール(DM)が打てなくなった代わりにウェブを活用した顧客獲得手法に注目が集まっています。
住民基本台帳法改正がもたらすインパクト
住民基本台帳の閲覧を制限する改正住民基本台帳法が2006年11月1日に施行され、これまで原則公開だった地方自治体の住民基本台帳が、今後は原則非公開に変更されました。
これまでの住民基本台帳の閲覧では、住所・氏名・生年月日・性別の4情報の閲覧が可能でしたので、この情報をもとに、例えば今年7歳になる女児がいる家庭に対して「お嬢様に七五三用の着物はいかがですか?」といったダイレクトメールを送ることができていました。
つまりこの法改正は以下のようなダイレクトメールに依存していたビジネスに大きなインパクトを与えていることになります。
- 学校(私立幼稚園、中学、高校、大学など)
- 学習塾・予備校
- 自動車学校
- 呉服(七五三・成人式)
- 人形(雛人形、五月人形)
- 不動産会社
- 化粧品 など
このように「地域」「年齢」「性別」がキーになるビジネスにとっては、今後ダイレクトメールによるプッシュ型の新規顧客獲得ができなくなるため、新たなマーケティング手法の開拓を余儀なくされています。
この状況で注目を浴びるのがインターネットの活用です。早いところでは1年以上前から対策に乗り出している企業も少なくありません。
*参考データ
住民基本台帳:住民の住所などを公に証明する公簿。氏名と住所、生年月日、性別は誰でも閲覧を請求できる。総務省の調査では、2004年度に全国の自治体が受けた閲覧請求は約150万件。公的機関を除くと、目的の70%はダイレクトメールなど営業活動、11%が市場調査、8%が世論調査だった。
インターネット活用施策検討のポイント
インターネットを活用した顧客獲得を検討する際には、ターゲットとするユーザのニーズ顕在化度合いがポイントになります。
◆顕在化したニーズが有る場合:プル型営業によるユーザ獲得
例えば、「娘の七五三用にそろそろ着物を買おうか」といった顕在化したニーズがユーザにある場合、情報収集の過程でウェブサイトを使う可能性が十分に考えられるため、その受け皿をきちんと設けておく必要があります。いわゆるプル型営業と呼ばれるスタイルです。
ユーザニーズとシナリオに沿ってサイトを整備するとともに、関連するキーワードで検索された際、検索結果に確実にサイトが表示されるよう検索エンジン対策やキーワード広告購入などを検討すると良いでしょう。
特に、インターネット上で自社サイトが認知されるためには、ユーザがどんなキーワードでその商品を探すのかを調査し、そのキーワードにあわせた対策を取ることが重要です。キーワードが会社名や自社商品名であれば自社サイトに辿り着いてもらえる可能性も高いですが、これまでダイレクトメールに依存していた企業は限定的なターゲットにのみ認知を取ればよかったため、一般的な知名度が高くないことも多いはずです。
この場合、
- 一般的な商品名称 (例)「子供用着物」「七五三」
- 商品に関するノウハウ (例)「七五三 着物 選び方」
- 知名度のある競合企業の名前
などで検索される可能性が高く、この時に自社を認知してもらう仕掛けが必要になります。
例えば、自社サイトにこのようなキーワードと関連するコンテンツを新設したり、関連サイトとの提携、また場合によっては関連サイトの新規立ち上げなども検討できるでしょう。いずれの場合も検索エンジンを利用する潜在顧客をターゲットとするため、検索エンジンで上位に表示されることが必須です。
また、関連コンテンツの掲載やノウハウ提供サイトを立ち上げる場合、自社商品・サービスをアピールしすぎてしまうと結果的にユーザに倦厭されることになるので十分な注意が必要です。
例えば、ユーザは「(公平な観点から)着物の選び方が分かる」という期待でサイトに訪れたにも関わらず、ある特定企業ばかりが目立つようになっていた としたら、すぐに"宣伝・やらせ"であることが分かり、その企業に対して悪い印象を抱くことになります。第三者的な立場からノウハウを提供するのであれば、自社商品のメリットばかりでなく、デメリットや他の観点もきちんと明記するなどユーザの期待に応える配慮も重要になります。
このようにユーザニーズに沿った施策を行うことで、一般的な認知の低い企業や商品であってもウェブ上での勝機を手にすることができるようになるでしょう。
次回(後編)では、ターゲットとするユーザに顕在化したニーズが無いと考えられる場合に、企業がとるべき施策についてご紹介します。