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【UX LIBRARY】AI時代、UXデザインやサービス開発はどこまで内製できるか

2026.09.17 Thu.

【UX LIBRARY】AI時代、UXデザインやサービス開発はどこまで内製できるか

【UX LIBRARY】AI時代、UXデザインやサービス開発はどこまで内製できるか

「UX LIBRARY」とは?

「UX LIBRARY」は、ビービットがこれまで発信してきたUXに関する知見・情報を厳選し、コンパクトに再編集してお届けするシリーズです。

1分で分かるこの記事のポイント

今回は、レポート「UX先進企業のひみつ CXとプロダクトをつなぐ組織論」を再編集してお届けします。

この記事には以下の内容が含まれます。

●AIの普及により、UXデザインやサービス開発を内製するハードルが低くなった一方、各部署・個人がばらばらにUX活動を進めると体験の一貫性が崩れるリスクがあるため、UX活動を全社に浸透させることが重要になる

●UX活動を内製化し全社へ浸透させていく過程は、以下の4フェーズから構成される
フェーズⅠ.特定の事業部のみでUXが重視されている
フェーズⅡ.特定の事業部の取り組みが経営層に認められている
フェーズⅢ.UX向上チームが社内コンサル的に各事業部を支援している
フェーズⅣ.CX統括組織が全社体験を管理している、かつ各事業部にUX人材が所属している

●代表例として挙げる平安保険グループの組織体制の場合、上記のフェーズⅣに相当し、経営層主導の「CX委員会」とグループ企業内の「UX組織」を設置することで、体験品質向上とLTV向上を実現している

イントロダクション:AIで加速するUX内製化と、その指針を示すロードマップ

AI技術によって、市場・ユーザ調査、サービス企画、コーディング、UIデザインなど、さまざまなプロセスを内製するハードルが低くなっています。しかも、開発・デザインに関わる専門部署のメンバーだけでなく、あらゆる部署・部門のメンバーがそうしたUX活動に参入できるようになっています。

一方、各部署・個人がばらばらにUX活動を進めているだけでは、大きな成果につながりません。ともすると、役割や機能が重複した接点が乱立したり、コミュニケーションのトーンが不揃いになったりと、接点全体で提供する体験の一貫性が崩れてしまう危険もあります。そのため目指すべきは、UX活動が特定の部門に閉じず、全社に浸透した状態です。

そこでこの記事では、UX活動が特定の部署・個人を起点に全社へと浸透していくまでの過程を描いたロードマップを紹介します。このロードマップは、UXインテリジェンス協会(※)が、会員企業の組織構造・活動状況や、グローバルな先進企業の事例を参考に作成したものです。

※ UXインテリジェンス協会:ビービット代表取締役の遠藤直紀が理事長を務める一般社団法人。「UX検定」の主催やUX事例の発掘・研究など、より自由で豊かなUXの普及を促進するため、さまざまな活動に取り組んでいる。

企業の状況によって具体的な活動内容は変わるものの、ロードマップを通じて「自社はどこまで内製を進められているのか」「次に目指すべきはどのような状態なのか」の大枠を把握しておくことで、UX活動の全社浸透に向かって着実に前進できるようになるはずです。

それでは「UX LIBRARY」本編をお楽しみください。

全社規模のUX内製化へと至るロードマップの概要

まず初めに、ロードマップの全体像を示す。UXインテリジェンス協会の会員企業やグローバル先進企業の事例から、UX活動はおおよそ以下4つのフェーズを経て全社へ浸透していくことが判明している。

フェーズⅠ.特定の事業部のみでUXが重視されている
フェーズⅡ.特定の事業部の取り組みが経営層に認められている
フェーズⅢ.UX向上チームが社内コンサル的に各事業部を支援している
フェーズⅣ.CX統括組織が全社体験を管理している、かつ各事業部にUX人材が所属している

図1:UX活動が社内に浸透していく過程を描いたロードマップ

このロードマップでは、複数の事業を抱える大企業を対象とし、企業の構造を経営層と事業部に大きく二分したうえで、UX活動が社内に浸透していく過程を示している。以下、各フェーズを具体的に解説する。

フェーズⅠ:特定の事業部のみでUXが重視されている

まずフェーズⅠは、特定の事業部がUXに課題意識を持ち、その向上・改善に積極的に取り組んでいる状態に対応する。

例えば、特定のサービスを担う事業部の一部メンバーが、サイト経由のCV数向上を目的としてUX改善に取り組み始めるようなケースがそうだ。外部デザイナーを雇う・社内メンバーが担当するなど、進め方のオプションはいくつかあるが、UX先進企業への道のりはまずこのフェーズから始まる。

フェーズⅡ:特定の事業部の取り組みが経営層に認められている

フェーズⅡは、フェーズIを経た事業部がUX改善によって成果をあげることで、経営層がUXの重要性を認識し、事業部の動向を評価している状態だ。

経営層の理解が得られれば、さらに大がかりな組織変革への着手も容易になるため、このフェーズではUXに対する経営層の期待や関心を強めることが鍵となる。

そのための有効な方法の一つとして、UXに関する経営層向けのレクチャー・勉強会を開催することや、デジタル先進環境を視察することなどが挙げられる。例えばビービットでは、クライアントの経営層を対象に、UXを取り巻くグローバルな情勢や最新テクノロジーについて知見を共有している。そうしてUXに対する経営層の期待や関心を高めることができれば、フェーズⅢへの移行はすぐそこだ。

フェーズⅢ:UX向上チームが社内コンサル的に各事業部を支援している

フェーズⅢは、ユーザ理解力やUX構想力などのいわゆる「UXスキル」をもったメンバーからなる、全事業部を対象としたUX向上支援チームが結成されている状態である。

こうしたチームを置くことで、ここまで組織変革の起点となってきた事業部だけでなく、他の事業部にもUXへの取り組みが浸透していく。支援チームは、社内コンサル的な役割として設置されたり、グループ会社に置かれたりする。

フェーズⅣ:CX統括組織が全社体験を管理している、かつ各事業部にUX人材が所属している

最後にフェーズⅣでは、経営層直下の「CX統括組織」が設置され、かつ各事業部にもUX人材が所属している状態が実現されている。

CX統括組織の役割は「CX」、つまり複数の接点や事業にまたがる全社横断的な顧客体験を統括・管理することだ。対して、各接点・事業が提供する体験は事業部に所属するUX人材が企画・実装することになる。このようにして、接点・事業単体の体験と、複数の接点・事業を横断する体験の両方が向上していく。

フェーズIVの実現例:平安保険グループ

優れた顧客体験を提供することで圧倒的な成功を収めた中国の総合金融グループ「平安保険グループ」は、2018年時点ですでにこのフェーズIVに相当する組織体制を採用しており、それにより各グループ企業のUX品質管理の組織化と、グループ全体のCX品質・LTVの向上を実現している。

平安保険グループの組織体制は、「経営層」「CX委員会・横ぐしUX部門」「金融サービスを提供するグループ企業のUX組織」から構成されている。このうち「CX委員会・横ぐしUX部門」「UX組織」の果たす役割を詳しく解説していく。

図2:平安保険グループの組織体制概略

フェーズⅣの「CX統括組織」に対応する組織は、平安保険グループの場合「CX委員会」と呼ばれる。CX委員会は、同グループの創始者で会長でもある馬明哲(ピーター・マー)氏を含む経営陣約10名から構成される組織だ。

この組織では年に2回、NPS(Net Promoter Score、顧客推奨度)の調査結果をもとに方針を議論する場が設けられ、平安保険グループ全体のCXに関する改善方針を策定する。策定された方針は、横ぐしUX部門が推進していく。

さらに平安保険グループでは、保険・銀行・信販といった実際の金融事業を手がける各グループ企業にも、100人を超える大規模なUX組織を設置している。具体的には、UX組織とコールセンターを密接に連携させることで、UX改善サイクルを高速で回せるようにしている。

例えば平安クレジットカードでは、フィードバックの評価が低かった顧客に対して、翌営業日中には専任の担当者がフォローコールを行い、低評価の原因を特定すると同時に、顧客の課題解決に即座に取り組めるようになっている。

このように平安保険グループでは、経営層が直接コミットしてCXの方針を決定する強大なCX委員会・横ぐしUX部門と、各グループ企業のUX組織が機能的に並存していることで、UX品質の管理体制を構築し、グループ全体のCX品質・LTVを向上させることを可能にしている。

フェーズIIIからフェーズIVへの移行の要件

フェーズⅢからフェーズⅣ、つまり「経営層直下の『CX統括組織』が設置され、かつ各事業部にもUX人材が所属している状態」への移行は困難を極める。というのも、この移行を実現するということは、以下2つの異なる性質を持った組織変革を双方ともに成立させるという、大規模な改変を意味するからだ。

●各事業部が企画・開発するプロダクトの体験品質を統括し、顧客に一貫した体験を提供するための横ぐしCX統括組織を新設する

●プロダクトを企画・開発する各事業部を、プロジェクト駆動型の組織からプロダクト駆動型の組織に変革する

どちらか一方ではなく両方を実現することで、CX統括組織が複数の接点・プロダクトをまたいで提供する横断的体験と、各事業部が接点・プロダクトを通じて提供する個別的体験を、バランス良く磨きこむことが可能となる。

UX LIBRARYは以上です。レポートの本編では、複数接点を統合する体験戦略の策定および体験品質の管理を担う「横ぐしCX統括組織」の活動内容と、プロダクトの体験品質を継続的に磨きこむ「プロダクト駆動型組織」について詳しく解説しています。どちらも、記事で紹介したフェーズⅣの実現には必須の組織ですので、ぜひ本編にてご参照ください。

Appendix:このテーマが気になった方におすすめの資料

今回ご紹介した「UX先進企業のひみつ CXとプロダクトをつなぐ組織論」は、UX活動の内製化・全社浸透をテーマにしています。このテーマに関心がある方には、以下2つのコンテンツもおすすめです。

レポート「顧客理解文化を組織にインストールする」
あらゆる企業活動にUXの観点やプロセスを練り込んでいくためには、精度の高い顧客理解が必須になります。一方、「顧客理解から始めよ」という文化を醸成する活動にはさまざまな困難が伴います。本レポートでは、顧客理解文化の醸成が上手くいかない原因・背景と、文化を「仕組み」に落とし込む方法を解説しています。

レポート「開発とUX なぜ分断されるのか」
AI技術によって開発・デザインの内製化が進められている一方、使われるサービスをつくるためには、ユーザ理解活動や受容性検証を必須工程として組み込むなど、開発プロセス全体をUX起点で整備する必要があります。本レポートでは、従来型の開発プロセスに潜む問題点と、UX起点で進める理想的な開発プロセスを解説しています。

ビービットでは、UX活動の内製化やUX組織の立ち上げなどさまざまなご支援を提供しています。ご関心をお持ちいただけましたら、弊社サービス「UXデザインコンサルティング」の紹介資料をご一読ください。また、ご質問やご不明点がございましたら、問い合わせ窓口までお気軽にご連絡ください。

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