プロジェクトの成果: 1次改善で成約率(CVR) 1.3倍
▶プロジェクトの概要
タイヤ販売&取付予約サイト「タイヤフッド」の成約率向上のお取組みでは、タイヤ交換ユーザの実態を明らかにした上で、そのようなユーザの状況とタイヤフッドの強みを繋ぐ指針を打ち出し、指針に基づく一貫した体験設計を行いました。 結果として、1次改善だけで成約率1.3倍を達成しました。
▶取組みの前提
サイト来訪者の成約率向上が、カーフロンティア様の課題意識
タイヤフッドはタイヤの購入と、取付のための店舗予約を一度の手続きで行うことができる、今までにないワンストップのタイヤ交換サービスです。全国のガソリンスタンドをはじめとする取付店と提携しており、近場で手間なくタイヤ交換をすることができます。
ネット完結の手間のない取付予約をもっとたくさんの方に体験してもらいたいという課題意識から、ビービットに支援の機会をいただきました。
▶調査での発見点
ユーザはタイヤを「ちゃんと選ぶべきだと思うけど、選ぶのが面倒だし選べない」
ビービットがタイヤ交換ユーザに調査を行ったところ、タイヤ交換をするユーザの状況には大きく以下の2つの課題が明らかになりました。
- タイヤは比較的高価かつ命にも関わりうる買い物であるため、ちゃんと選ぶべきだと思っている。
- しかし、ほとんどのユーザはタイヤについて興味も知識もない。
つまり、「ちゃんと選ぶべきだと思うけど、選ぶのが面倒だし知識もないから選べない」という相矛盾する状況に置かれていたのです。
結果として、「店舗に行ってプロに言われたものを買う」「国産有名メーカーで安すぎないタイヤを買う」という次善の策に落ち着いてしまうユーザが多くいました。
このようなユーザにタイヤフッドを利用してもらうと、「そもそもタイヤを選べない」という課題が大きく、サイトを離脱してしまうユーザが多くいました。
タイヤフッドの強みである「購入から手間のない取り付け予約」を体感する前に体験が終わってしまっていたのです。
▶改善内容
ユーザの課題とタイヤフッドの強みを繋ぐ「徹底的に思考・手間・時間のコストを省いたタイヤ交換」という指針のもと、一貫して体験を設計
こうしたユーザインサイトを踏まえ、ビービットは「思考・手間・時間のコストを省いたタイヤ交換」という指針を提示し、その指針の元で一貫した体験の設計を行いました。
具体的には、以下の改善施策をご提言しました。
- タイヤを「選びやすくする」ではなく「選ばせない」
"選べない"ユーザに大量の選択肢から無理に選ばせるのではなく、簡単な質問に答えることで適切なタイヤを提示し、"結果として選んでいる"状態に。 - 強みを「言葉で理解」ではなく「体感」してもらう
「サイト流入→タイヤ決定→店舗予約」の流れを極限までシンプルに。
ワンストップを言葉で伝えるのではなく体験の中で実感出来る形に。
■タイヤを「選びやすくする」ではなく「選ばせない」
本プロジェクトでは、たくさんあるタイヤの中から適切なタイヤを選ぶことができないというユーザの課題に対し、情報を足して選びやすくするということは行いませんでした。
「徹底的に思考・手間・時間のコストを省いたタイヤ交換」というコンセプトをもとに体験を設計した結果、店舗に行ってプロのアドバイスを受けたかのように、ユーザ自身の知識でタイヤを選ぶ必要がない体験を実現しました。
具体的には、ユーザに簡単な質問に答えてもらい、条件にあったタイヤを提示する形でタイヤ選びの手間や時間を省きました。
■強みを「言葉で理解」ではなく「体感」してもらう
サイト流入時のユーザの状況を捉えることも重要です。他のサイトも利用しているユーザは、他社サイトと同様、タイヤフッドのサイトでもタイヤを選ぶつもりでサイトに訪れます。
サービスのメリットをいくら説明しようとしてもユーザは読まず、すぐにサイトでタイヤを探し始めます。そのようなユーザの行動を前提にすると、実際にステップを進めていく中でメリットを体感してもらう必要があります。
サイト流入→タイヤ決定→店舗予約をシームレスにつなぎ、最短で完了してもらうことによって「簡単なタイヤ交換」を体感してもらうようにしました。
「ワンストップのタイヤ交換」というタイヤフッドのサービス特性を活かした上、さらに検討の負荷を減らす形で体験設計を行いました。
結果として、タイヤフッドの強みであった「タイヤ交換が楽にできる」という特徴が強化され、なおかつ感じられる形になったと言えます。
▶取組みの結果
今回の取組結果を踏まえた1次改善により、タイヤフッドのサイト訪問者の成約率(CVR)は改善前と比べて1.3倍を達成しました。
さらに、今回の取組に基づいた改善は今後もリリースされる予定です。
▶取組みの意義
顧客視点からコンセプトを定義し、一貫して体験設計
今回の取組みには2つ大事なポイントがあるとビービットは考えています。
1つは、「自社の強みをどのように伝えるか」ではなく、「自社の強みでどのようにユーザの役に立てるか」という観点で思考することが重要であるということです。
「ワンストップという強みをいかに理解してもらうか」、ではなく、「ワンストップという強みを活かし、ユーザに価値のある体験をいかに提供できるか」、という発想をすることで、自社の強みが顧客にとっての価値に姿を変えると考えています。
逆に、どんなにユニークな特徴を持ったサービスであっても、それを顧客にとっての価値に繋げられなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
そして、サービス特性と顧客価値をつなぐ際のキーになるのが、ユーザの置かれている「状況」です。「状況」を的確に捉えることで、ユーザに対して真に提供すべき価値は何か、そこに対して自社のサービスは何ができるのか、ということが見えてくると考えます。
ポイントの2つ目は、体験の中で価値を感じてもらうためには、体験を一貫させることが重要だということです。
体験がある指針の元に一貫して設計されていることで、一連の体験に強いメッセージ性が生まれ、「ユーザが価値を実感する」ようになります。この、体験設計の際の指針をビービットでは「コンセプト」と呼んでいます。
まとめると、今回の改善の要点は以下のようになります。
- 顧客の置かれている「状況」を捉える。
- 「状況」をふまえて自社のサービスと顧客価値をつなぐ「コンセプト」(体験全体を貫く指針)を明確にする。
- 「コンセプト」に基づいて一貫した体験を設計する。