なぜBtoBビジネスでのユーザ理解は困難なのか?UXを企業の「意思決定メカニズム理解」に応用するAI活用法
本記事は、無料動画『UX×B2B!AIで突破する、toBリサーチの限界』のダイジェスト版です。動画内にはより詳細な解説に加え、実際にAIを動かしながら進める実践パートも用意していますので、併せてご活用ください。
- こんな方にオススメ
- ・BtoBビジネスにおいて、自社の扱う有形商材もしくは無形商材の「販売」や「利用促進」、あるいは「導入後の問合せ対応改善」などをミッションに持つ方
・特に、UX / CX改善のプロセスを法人向けに応用することで、ターゲットとなる法人の行動変容を起こすことや、そのための生成AI活用にご関心のある方
- この記事の要約
- BtoBビジネスにおけるユーザ理解は、法人特有の「意思決定メカニズム」を掴むことが成功の鍵となります。しかし、必要な情報の多くが非公開であるという構造上の障壁があるため、実ユーザ調査の精度を高める最初のアクションとして、AIを活用した広範な情報収集とキーパーソンの擬似的な再現(ロールプレイ)が有効です。
BtoBビジネスにおけるユーザ理解とは? toCとの共通点・相違点
「UX」「ユーザ理解」という言葉や概念は、多くの場合エンドユーザ=一般消費者の体験に関わる文脈でよく現れます。しかし、商品やサービスに触れる相手の状況を理解し、達成しようとしている目的や抱いている懸念に沿った内容・形式のコミュニケーションを取ることは、消費者が相手であっても、「クライアント」や「取引先」と呼ぶような企業が相手であっても有効です。
そのため、ユーザ理解の方法論は、一般消費者と相対するtoCビジネスでなくとも活かすことのできる、応用力の高いものであると言えます。
とはいえ、この記事を読んでいるあなたや書いている私がそうであるように、一般消費者として振る舞う場面と、法人の一部として振る舞う場面とでは、たとえ同じ人間であっても選択する行動やその背景・原理に差異が存在しています。「ユーザ理解」が重要であることや、理解すべき要素は同じでも、理解の鍵を握る要素は微妙に異なります。
以下の表は、toCのユーザ理解とtoBのユーザ理解を比較して、共通点と相違点を整理したものです。
| 共通点:理解すべき要素 | 相違点:着目すべきこと | |
|---|---|---|
|
toCの ユーザ理解 |
|
ユーザを取り巻く環境 + それに影響されるユーザの意思や葛藤 |
|
toBの ユーザ理解 |
|
法人を取り巻く環境 + 法人内部のメカニズムや決定フロー 例)キーパーソン、組織構造、各自の役割、規則など |
ユーザ理解がBtoBビジネスにもたらす効果(モデルケース)
BtoBビジネスにおけるユーザ理解では、ターゲットとなる法人を取り巻く環境も押さえた上で、その内部にある意思決定のメカニズムやプロセス、キーパーソンを含む各構成員の関心などを掴むことを目指します。理解した内容を施策立案やコミュニケーションに反映することで、売上の向上やコスト削減などの成果創出に貢献します。
ここでは例として、工場向けの製造用機械の営業活動を行う場合を考えてみましょう。営業活動の目的は、全国に工場を持つメーカー本社の生産技術本部にアプローチすることで、各工場での製品置き換えを実現することです。
ある日、営業担当者は、製品資料をダウンロードした生産技術本部の担当者と面会し、自社の工場用機械を紹介しました。その場での反応は良好で、「老朽化に伴い置き換えを検討しているので、候補のひとつにしたい」という声を聞いた営業担当者は、現在、先方からの回答を待っています。定期的に社内での検討状況についてメールや電話でやりとりをしているものの、「自分からも確認はしているが、社内での議論が停滞しているようです」という趣旨のまま、回答の変わらない状況が数か月継続しています。
こうした状況では、先方にとっての不安材料を理解していることが優位に働きます。たとえば、不安材料が「現場作業員が、新しい工場用機械にすぐ適応できるか」だった場合、「現場責任者への無料講習の提案」が議論を前進させるかもしれませんし、「機械の置き換えによる加工精度の低下」に懸念があった場合、「要望を聞いてテスト加工を実施し、成果物とデータを提供する」ことで判断材料を増やすことができるかもしれません。
自社がターゲットとする法人全般にありがちな構造や懸念点を理解し、さらにそれを土台にしてターゲットごとに個別の状況を理解することで、精度の高い施策を打ち出すことができます。同様のプロセスは、開発や調達、マーケティング施策の立案、購入・導入後のサポートといった複数の分野において、商材が有形であるか無形であるかを問わずに応用することができます。
BtoB事業におけるUX活動のプロセス
一般的なUX活動と同様、BtoB事業におけるUX活動は以下のようなプロセスで進みます。
1. 一次情報の収集
2. ユーザ仮説の立案
3. 実ユーザへの調査
4. 調査結果の分析・モデル化
5. 施策への反映
6. 施策の効果検証
このうち、「3. 実ユーザへの調査」を行う際、普段取引のある法人どうしでは忖度が発生する可能性が高いため、より実態に近い行動や回答を収集するためには中立的な第三者による調査が効果的です。
なお、実際に活動を進める際は、ユーザ仮説や施策仮説の立案と検証を複数回繰り返すことで、より精度の高い理解、効果的な施策を目指します。
ユーザ理解は何から始めるべきか? 仮説立案の意義と障壁
ユーザ理解を深めるには、観察やインタビューで実ユーザと接することが効果的ですが、十分な学びを得るためには事前に仮説を立てる必要があります。しかし、BtoBのビジネスにおいては、ターゲットに関する仮説立案に必要な情報の多くが、非公開かつ法人別に異なるという構造上の困難があります。
-仮説のあるユーザ調査と、仮説のないユーザ調査の違い
「ターゲットとなる法人は製品選定の過程で、こういう懸念を抱いているのだろう」「キーパーソンはこの人物で、特に困っているのはこの部分だろう」といった仮説を持ってユーザ調査を行うと、その仮説と異なる動きをユーザが見せた際に鋭く気づくことができます。
しかし仮説立案が不十分だと、漫然とユーザの行動を眺めるだけに終始してしまい、「ユーザはこうやって行動するのか」「だいたい思ったとおりだった気がする」と曖昧に納得してしまいます。同じ時間とコストをかけて行うユーザ調査から、少しでも深い気付きを得るためには、仮説が不可欠であると言えます。
-BtoBビジネスでユーザ理解を始めにくい、構造的な理由
法人内部のメカニズムは、企業規模や文化、資本関係などの多元的な要素によって形作られているため、同じ業界や業種であっても個別に異なる場合がほとんどです。このことは、「自分たちの会社はこういう構造だから、先方も同じだろう」という類推を困難にしています。
また、営業担当者のようにターゲットと直接対峙するメンバーにとっても、ターゲット内部の事情がすべてありのままに入ってくるわけではない点や、ターゲットの構成員全員が法人の全体像を把握しているわけではない点などに見られるように、「法人」という大きな構造の輪郭を掴むために必要となる膨大な情報は、多くの場合網羅的に収集することが困難です。
そのため、ユーザ調査の準備として仮説を立案しようとしても、十分な示唆をもたらすような精度の高い仮説が立案できないというケースが少なくありません。
BtoBビジネスでユーザ仮説を作るための最初のアクションとは
自分一人ないしは自社のみで情報を揃えることが難しく、かつ率直な声を集めることの難しいBtoBビジネスでの仮説立案には、生成AIによる広範な情報収集と、AIによる擬似的な「ユーザ」の再現からなるアプローチが有効です。社会一般に対する知識を広く有するLLMを用いれば、ターゲットとなる業界の概要の整理からキーパーソンの特定、さらにはそのキーパーソンを再現する過程のすべてを、低コストかつ高速で実行可能です。
具体的な指示や回答の内容は、生成AIと実際にやりとりする様子をご覧いただけると簡単にイメージできます。
無料動画『UX×B2B!AIで突破する、toBリサーチの限界』の約23分13秒から始まる実践パートでは、AIと対話しながら、ターゲットとなる法人の内部構造とその中のキーパーソンに対する仮説をつくる過程をご覧いただけます。各ステップで必要なプロンプトだけでなく、AIとの対話の効果をユーザ理解活動において最大化するためのポイントも解説していますので、ぜひ動画を見ながら、お手元でAIとの対話をご実践ください。
なお動画では、AIとの対話を経た後に必要な、生身のユーザを対象とする調査のポイントも紹介しています。ぜひ、ユーザ理解に向けた最初のアクションとして、本動画をご活用ください。
UX×BtoBをもっと知りたい方へ
- Q. ユーザ理解に有効なツールはある?
- A. デジタル上のユーザ行動は、『USERGRAM』などのツールで取得、分析できます。ただし、行動データを分析して改善策を考えるには、ユーザがサイトなどを訪れる目的や抱えている困りごとを理解している必要があるため、やはりユーザ仮説の検討・検証は欠かせません。
解析ツール『USERGRAM』については、本ページのヘッダー内「ソリューション」からご参照いただけます。AIによる分析補助機能も提供しておりますので、課題やご関心に合わせてお問合せください。 - Q. ユーザ調査はどの規模で行うべき?
- A. 精緻な仮説をもとにした行動観察調査の場合、1セグメントにつき必要な被験者は3~5名程度です。調査の目的やターゲットとなるユーザに応じてセグメントの数は異なるため被験者の総数も前後しますが、ビービットで行う調査で最も規模が大きいものでも、そのボリュームは20名程度です。100人単位の大規模な調査を行わなくとも、各ユーザの行動や回答とその背景となる状況を分析することで、再現性の高い客観的なインサイトを得ることが可能です。
- Q. ユーザ理解活動のパートナーやコンサルタントはどう選ぶべき?
- A. 協業パートナーの選定においては、自社がユーザ理解を何に活かしたいのかを考えることが重要です。ユーザ理解は、既存接点の改善や、新規接点の構想・開発、全社方針における戦略策定などに活かすことができますが、ユーザ理解そのものに専門的な知見を持つパートナーとの協業では、そのすべてを網羅できます。
ビービットは2000年の創業以来、多くの大手企業と協業しながらユーザ理解をビジネスに落とし込んできました。toC、toB、BtoBtoCといったさまざまな業態の企業様に対するご支援・講演の経験が豊富にございますので、ユーザ理解にお困りの際はお気軽にお問合せください。
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