第47回 複数回のユーザ接触を想定したシナリオ設計
サイトへの複数回訪問を通じて商品・サービスに対する動機付けを高めるためのシナリオ設計のポイントを解説します。
本コラムのサマリ
- 保険などの金融商品、あるいは高額な商材など、検討期間が長い商材を扱うウェブサイトでは、ユーザは複数回訪問する中で徐々に検討度合いを深めることを前提としたユーザシナリオを組むことが重要である。
- 即決型のユーザと、長期検討型のユーザの両方が存在することを踏まえ、両方に対して最適な見せ方ができるサイトをつくる必要がある。
ユーザが初回訪問からコンバージョンまでにかかる期間は様々
まずは下のグラフを見てください。これは、ある商材のコンバージョンと広告接触(広告を何回クリックしたか)回数を集計したデータです。
1回の接触でコンバージョンへといたるユーザは、実は全コンバージョンの半分にも満たないことが分かります。
※このグラフは広告からの訪問で回数を計算しているので、ブックマーク等を含めると、さらに複数回訪問しているユーザの割合が増加します。
もちろん商材にも依存しますが、保険などのサイトでは、初回接触からコンバージョンまでの期間が1ヶ月近いことも珍しくありません。
- 比較的価格が高い商材
- 投資商材などリスクを伴う判断が必要な商材
などの場合は特に、1回のサイト訪問で説得が可能なユーザと、複数のサイトを使ったり、何度もサイトを訪れたりしながら意思決定を行うユーザの両方の行動特性を踏まえた対策が必要です。
そのため、コンバージョンを最大化させるためには
- 1. 即決型ユーザ
その場(1回の訪問)でコンバージョンへいたるユーザ。
サイト訪問段階で既に目的が明確になっており、納得のいく情報があればその場で申込への説得が可能。 - 2. 長期検討ユーザ
まだ検討の初期段階にあり、今後比較や情報収集を行うユーザ。
複数回の訪問の中で、じっくりと説得する必要がある。
という、最低でも2パターンのユーザ行動が存在することを理解し、両者に対応できるウェブサイトを作ることが重要になります。
集客経路も含め、複数回の訪問を最適化する「一気通貫型」シナリオ
このような複数回の訪問に対して、「広告」と「ウェブサイト」の施策が別々に走っていては成果の最大化は見込めません。
サイトの中だけを見て改善を進めるのではなく、「どのような手段でユーザに初回接触を行うか」に始まり、「いかにユーザに再訪し、最終的なコンバージョンへと導くか」まで、サイトの外部の集客手段も含めた「一気通貫型」シナリオ設計が必要です。
ユーザの立場からすれば、広告を目にしたその瞬間からすでに商品検討のプロセスがスタートしているということを忘れてはいけません。
「一気通貫」ユーザシナリオの例:ビービット銀行「投資信託」
この例では、「投資信託」「資産運用」といったまだ初期検討段階のユーザに対しては積極的にサイト内のコンテンツへ誘導して自社について詳しく知ってもらうことを目的とし、ビッグワードの検索状況に応じた広告受けページを用意しています。
しかし、その後意欲が醸成され、「ビービット銀行」と指名検索を行って訪問してくるユーザは前提となる検討内容が異なるため、今度はコンバージョンへの誘導に特化したページを用意し、口座開設への最適化を図っています。
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執筆者:今木 智隆
株式会社ビービット ユーザビリティコンサルタント