反中 望
友人紹介キャンペーンを用いることで自社サイトの会員数を増やそうと考えている人は多いと思います。
普段はウェブとユーザの二者間のコミュニケーションを考えていますが、友人紹介キャンペーンには「紹介される人」という第3の人を意識する必要があります。
そこで今回は、ユーザと紹介される人のコミュニケーションが少しの仕組みの違いで180度変わってしまうという例を見ていきます。
(以降紹介する人を「ユーザ」、紹介される人を「友人」と呼称します。)
友人紹介としてたとえば次の二つの方法が考えられます(図1、図2参照)。
図1は企業のウェブサイト上で友人のメールアドレスを登録するもの、図2は企業のウェブサイト上にある紹介券を友人に送るものです。
一見これらはささいな違いしかないように見えますが、ユーザの視点から見ると大きな違いがあります。
それは、前者は「企業に友人の情報を与える」のに対して、後者は「友人に有益な情報を与える」という違いです。
これによってどういう行動の違いになるか、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。
図1の例の場合、ユーザは友人の個人情報を企業に教えてしまうことになるので、紹介しても良いか友人に確認をとるという手間を与える可能性があります。
このときユーザは、ウェブで紹介キャンペーンを見た後ウェブの外で友人に登録してもよいか確認したうえで、再度ウェブまで登録しに来なければなりません。(図3参照)
二つ目の場合ユーザは、有益な情報を友人に教えることになるので、あまり躊躇なく紹介することができると想像できます。また再度ウェブに登録する手間もありません。(図4参照)
つまり図1の例では
- 企業に友人の情報を提供することを後ろめたく感じる
- わざわざ友人に確認してから登録しなおすという手間がかかる
- 友人に有益な情報を提供することに満足感を覚える
- 友人に情報を教えるだけなので手軽に行える
実際にユーザ行動観察調査においても、図1の例をイメージして、「紹介キャンペーンは友人を売るような感じがするからやりたくない」という発言が何度も見られました。
図2の例であればこのような発言は出ないと考えられます。
今回の例のように少しの仕組みの違いでユーザの気持ちが180度変わってしまうことがあります。
特に紹介キャンペーンのように第三者が関わってくるようなときは、ウェブサイトの外でユーザがどのようなコミュニケーションをとるかについても十分に検討するようにしてください。