池田 朋弘
スマートフォンでの情報収集・意志決定をサポートするための手段として、快適なアプリの提供がますます重要になってきています。
今回の実践メモでは、弊社コンサルタントによる住宅情報アプリの利用調査から、アプリ設計時の3つのポイントをご紹介します。
前提:「スキマ時間」の利用シーンを念頭におこう
携帯やスマートフォンなどのポータブルデバイスは、移動時間・昼休憩・就寝前など、ちょっとした空き時間(スキマ時間)に利用されます。これらの利用シーンには、・ 利用が断続的である(1回の利用だけで完結しない)
・ 1回の利用時間が短い
・ 通信環境が不安定
という特徴があります。今回の住宅情報アプリの調査でも、行き帰りの電車内や会社の昼休憩などのちょっとした時間にアプリを使うという行動パターンが見られました。
アプリを設計する上では、ユーザのこのような利用状況を念頭に置く必要があります。
【ポイント1】前回の利用状況が復元できる
住宅情報の検討では、初回以降は「この前の続き」という心理でアプリを起動しています。ユーザにとって1回1回は独立した利用体験ではなく、「住宅を探す」という連続的な行為なのです。 この心理を踏まえると、アプリ起動時には前回利用していた状況がなるべくそのまま引き継がれている等の配慮が重要になるでしょう。●事例1: 前回の利用状況から使える(HOME’S)
「HOME’S」では、アプリを一度閉じてホーム画面に戻った後でも、アプリを再起動すると前回開いていた画面が復元できます。断続的な利用には欠かせない配慮と言えるでしょう。アップル標準アプリも基本的に利用状況が復元されるようになっています(メール、Safari等)
【ポイント2】ショートカットしやすい
住宅情報を探す際は、地域をある程度絞った上で、同じ条件で何度も検索したり、他物件と比較するために同物件をチェックするのが一般的な行動パターンです。これらを短時間で行えるかどうかで、利用満足度も大きく変わってきます。●事例2: 検索履歴から再検索できる(HOME’S)
先ほどもあげた「HOME’S」では、検索履歴が「地域・家賃・間取り」など詳細に保存され、タップすると同条件の結果を表示できます。住宅情報は同じ条件でも物件が頻繁に入れ替わるため、大変便利な機能です。
●事例3: ブックマークできる(SUUMO)
「SUUMO」では、物件ブックマーク機能が提供され、同じ物件に再アクセスしやすくなっています。複数の情報を見比べる商材の場合には欠かせない機能と言えるでしょう。
【ポイント3】オフラインでも利用しやすい
スキマ利用は「通信環境が不安定」であるため、通信が切断されやすい状況下での利用体験も重要になります。今回の調査でも、地下鉄内でアプリを使おうとしたが、すぐ圏外に入り情報が見れないという状況が度々発生しました。●事例4: オフライン用に情報が保存される(Mobile RSS)
住宅情報アプリ以外の例ですが、RSSリーダーアプリの「Mobile RSS」では、読み込み時にデータが保存され、オフライン状態でもある程度の情報が閲覧できるようになっています。
考慮すべき点として、例えば物件情報の場合、物件が公開終了したことに気づかれないリスクが考えられますが、よほど更新頻度が早い商材以外では、リスクよりも利用体験が増すことのメリットが大きいのではないでしょうか。
●事例5: 「後で読む」リストに保存できる(Read It Later)
オフライン用ウェブ閲覧アプリの「Read It Later」では、リンクをタップすると「後で読む」という選択肢が提示されます。これを押すと読み込みリストに登録され、オンラインになった段階で情報が読み込まれます。住宅情報でも、オフラインの時に物件を選んだらブックマークに保存できる、等の工夫ができるのではないでしょうか。
今回ご紹介した内容は、結婚・就職・保険など、一定の検討期間を要する商材であれば応用が効く内容だと思います。ポータブルデバイスならではの特性を踏まえて、自社で提供しているアプリを見直すと、新しいアイデアが見えてくるのではないでしょうか。