森川 洸
あるコンテンツを見たユーザに対して「次にここを見て欲しい」という制作側の意図に反して、中々思い通りに見てもらえないといった話をお伺いすることがよくあります。
例えば、記事系のコンテンツで、記事を閲覧したユーザに対して関連記事や関連する製品ページへと誘導する場合、記事の下部に「関連リンク」のエリアを設け、その中に意図した誘導先のリンクを配置しているケースがよく見受けられます。
上記のような方法で、果たして意図通りにユーザを誘導することができるでしょうか?今回は「ユーザがこのページ以上の情報を積極的には求めていない」ケースについて考えてみました。
弊社の実施したユーザ行動観察調査においては、多くのユーザが価格まで閲覧した後にページの上部に戻り、そのまま見るのをやめてしまうという行動が見られました。
ここで、このような行動に至った原因を考えてみましょう。
アイトラッキングによる分析やユーザへのヒアリングから、下記2点が主要な原因と考えられました。
1.「関連リンク」の枠が目線の流れをさえぎり、本文と別物という印象を与えている
記事本文と関連リンクの見せ方が大きく異なるため、視覚的に別のエリアと認識されてしまっていたと考えられます。そのため、結果として価格までを見たユーザは満足してしまい、無意識のうちにその下を見ることをやめてしまったと考えられます。
2.「関連リンク」という見出しが、閲覧意欲を妨げている
過去の体験から、「関連リンク=あまり関係のないもの」といったイメージを持っているユーザが一定数見られました。よく使われる表現ではありますが、逆にユーザの興味を失ってしまってしまう恐れもあります。
これらを受けて以下のように改善を行ったところ、より多くのユーザがこちらの意図したとおり、「製品XXXXの詳細ページ」のリンクをクリックしてくれるようになりました。
改善のポイントは下記の2つです。
(1)別物として認識されないように工夫
記事本文の小見出し(「概要」「特長」など)と製品詳細ページへのリンクの見出しを同じ見せ方にしたことで、「記事の一部」であるとの認識がなされ、目線をさえぎることなくスムーズに見てもらえることが出来ました。また、「関連リンク」ではなく、「製品の詳細」という表現を用いることで、より詳しい情報が得られそうだとの期待感を高めました。
(2)意図的にストッパーを利用
お問い合わせを枠で囲み視線のストッパーとして下部に配置したことで、すぐ上の製品の詳細へのリンクに視線が集まりました。(※今回のケースでは、お問い合わせ誘導はそれほど重要なゴールではなく、必要と感じたユーザが見つけることができればよいという位置づけだったため、このような方法が効果的でした)
なお、ユーザがより詳細な情報を求めており、かつ「関連リンク」内に求める情報があることが認知されているケース(利用頻度が高いなど)では、必ずしも「関連リンク」を切り出す方法が問題とは限らないため、留意が必要です。
適切なリンク配置により意図した行動を促すための方法については、これまでにも何度かお伝えしてきました。
情報を確実に伝える「近接」テクニック
関連性の高い情報を近づけることで、見せたい情報やリンクに気付いてもらいやすくした
視線の流れをブロックしていませんか?
視線の流れを止めてしまっていたかたまりをなくすことで、ページを下部までスクロールされる確率を高めた
今回お伝えした方法は、お問い合わせ導線の強化や回遊性向上など様々なケースでも応用可能ですので、是非試してみてはいかがでしょうか。