瀧田 克博
コンテンツへの興味を喚起するためにその内容を一部露出させる、いわゆる「ちら見せ」施策を実施しているサイトも多いかと思います。今回は、その「ちら見せ」施策が逆効果となるケースについて考えます。
ある会員制クチコミ情報サイトでは、ユーザに登録を促すためにクチコミの一部を露出していました。最初の数行で興味を喚起し、続きを読みたいユーザには会員登録をしてもらう、という流れです。
ところが、弊社でそのサイトのユーザ行動観察調査を行うと、ユーザはクチコミの最初の数行を数件読んだだけで満足し、会員登録することなくサイトを離脱する、という行動が頻発しました。
これでは逆効果です。
一般的に、クチコミや体験談を調べているユーザは、対象物・対象分野についての知識が少なく(時には不安も感じており)、「概要を把握したい」と思っています。そのため、クチコミを数件見渡して雰囲気を掴むとそれで満足してしまうのです。
このように「ちら見せ」が機能しづらい場合、どのようにすれば良いでしょうか。
有効な方法の一つは、ユーザに会員登録のメリットを体験してもらうことです。例えば、仮登録のような中間ステップを設け、期限付き、制限付きで、会員コンテンツを使えるようにする、といった方法です。ここで重要なポイントは、会員のメリットを「見せる」のではなく「体験」してもらうことです。
前述のサイトでは、会員登録をすると対象分野について様々な評価軸でのクチコミを読むことができます。そのメリットを見せるために、まずクチコミコンテンツのサンプルを作ってユーザに訴求しましたが、登録に導くことはできませんでした。最終的には、サンプルではなく、仮登録という形でユーザが探しているクチコミ情報の全文を何件か見せることで、会員登録の意義を感じてもらうことができたのです。
「ちら見せ」施策は、「もっと続きを読みたい」というニーズをかき立てる効果もありますが、場合によっては、ニーズを充足させてしまうケースもあります。「ちら見せ」を検討しているサイトは、自社の提供しているコンテンツと、それを読むユーザのニーズの特性を考慮して、どこまで見せるか、見せないかを判断することをお勧めします。