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顧客体験(CX)とは? ~体験価値の再設計が組織を変える

2022.01.05 Wed.

顧客体験(CX)とは? ~体験価値の再設計が組織を変える

デジタル技術を活かしたビジネスモデルの変革、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めるなかで、顧客に「物を売る」のではなく「体験を提供する」ことが重視されるようになりました。
今回は、デジタルとリアルが融合した時代に欠かせない概念「顧客体験」について解説していきます。



顧客体験とは?

顧客体験(カスタマーエクスペリエンス 、通称CX)とは、商品を買ったり、利用したりすることで得られる顧客の「体験」と、それを通じて得られる「価値」を指します。
たとえば、「車を購入する」という行為をするとき、最初に情報を集めて比較検討して購入。さらに、車に乗ってドライブをしたり、故障したときに購入店に修理を相談したりといった一連の行為すべてが顧客体験になります。

良い顧客体験が「良い売り上げ(良き利益)」をもたらす

NPS®を考案したフレッド・ライクヘルド氏は、「Good Profit, Bad Profit(良き利益、悪しき利益)」という表現をよく使うそうです。
ここでいう“悪しき利益”とは、顧客が不満を抱いているのに、そのサービスを利用するしか選択肢がなく、売り上げが上がっているような状態です。
こうした悪しき売り上げや利益は、競合サービスが登場したら顧客に乗り換えられ、一瞬で失われてしまうでしょう。

良い売上げと悪い売上の解説
引用元:https://www.bebit.co.jp/?column=02-who-is-loyal-customer

一方、“良き利益”とは、顧客が良い体験をして満足した状態で、気持ちよくお金を払ってくれている状態のことです。CXを高めることで、顧客はそのサービスや提供している会社に信頼や愛着を抱く(=顧客ロイヤルティの向上)ようになり、競合他社が現れても容易に乗り換えないロイヤルカスタマーになってくれます。良質な顧客体験がロイヤルカスタマーを生み、良い売り上げをもたらしてくれるのです。

CXとUX(ユーザーエクスペリエンス)の違い

CXに近い意味を持つ言葉に、「UX(ユーザーエクスペリエンス)」があります。ISO(国際標準化機構)によると「製品、システム、サービスを使用した、および/または、使用を予期したことに起因する人の知覚や反応」とありますが、この言葉を使う人物や企業によってとらえ方が異なります。

ビービットでは、システムのユーザーであることを強調したいため、基本的に「UX」を使っています。「CX」というと、どうしても会社の顧客といった意味合いを持つのですが、アフターデジタル時代では車を販売するメーカーが「販売して終わり」ではなく、ドライブ中に立ち寄れるお店をおすすめする情報サービスを始めるかもしれません。

そうなると、その企業は「車」というプロダクトではなく、「移動」に関連するさまざまなサービスを提供するようになります。そういった「システム」を利用する対象は「顧客」ではなく「ユーザー」になるので、ビービットではCXとUXは使われる文脈が異なるものとして扱っています。

UXについて詳細が知りたい方はこちらをご覧ください。
UX(ユーザーエクスペリエンス)がアフターデジタル時代の要となる理由



体験に価値を見出す新しい時代の顧客体験設計

本稿で解説しているCXにせよ、ビービットがとくにDX下において重視している「システム利用者としてのユーザー体験」を指すUXにせよ、共通するのは「体験」に価値を置いているところです。プロダクト(製品)だけではなく、エクスペリエンス(体験)に価値を持たせることが、これからのビジネスの成功に必要になります。

顧客体験設計のキーワードは「OMO」

OMOとは「Online Merges with Offline」の略称で、デジタルデータを起点に、オンラインとオフラインとを融合させる施策を表しています。

OMOの解説
引用元:https://webtan.impress.co.jp/e/2020/05/14/35599

オンラインがオフラインに浸透すると、デジタルの世界がリアルの世界を内包するようになります。この変化をビフォアデジタル時代からアフターデジタル時代になったと呼んでいます。アフターデジタルでは顧客はリアル、デジタルを意識せずに、そのとき自分にとって一番便利な行動をとります。

顧客との接点(タッチポイント)も実店舗や対面営業だけでなく、コーポレートサイトやECなど多岐に渡るようになります。そこから得られる顧客の行動データを軸に、プロダクトやサービスの改善を繰り返し、顧客体験全体をよりよい方向に再設計するのがOMOです。

OMOについて詳細が知りたい方はこちらをご覧ください。
OMOとは?事例で示す日本企業の選ぶべき戦略

顧客体験の再設計がDX推進には不可欠

デジタル化の潮流に乗り遅れないようにと、いま多くの企業がDXに乗り出しています。しかしながら、コストダウンや生産性の向上といったパフォーマンス面にばかり目をむけてしまうと、DXは中身のないただのシステム導入になってしまいます。

しかし、アフターデジタルの世界では、DXはシステム導入のためではなく、顧客体験を再設計するために推進されるべきです。よりよい顧客体験を作り上げることで、顧客がサービスを利用し、データが蓄積し、そのデータをもとにサービスを改善するという好循環が生み出され、DXが加速していくのです。



顧客体験価値を向上させたマーケティング事例

ここからは、ビービットがご支援した花王様の事例をもとに、マーケティングによって顧客体験価値が向上したプロセスをご紹介します。花王様はDXを通じて顧客との新しい関係性を築くべく、簡単な入力と写真撮影で内臓脂肪を予測LINEアプリ「モニタリングヘルス」を開発しました。

花王様がまず着手したのが、既存のヘルシアユーザの飲用習慣調査です。大半の方は週2本程度だったのですが、これだと内臓脂肪の減少効果が表れにくく、花王様は週に4本以上は飲んで欲しいと感じました。そこで「利用者に週4本以上の飲用習慣を形成し、内臓脂肪を減少させて健康が得られるようにする」を成功地点に設定しました。

カスタマーサクセス思考がプロジェクト成功のカギ

この「ユーザーを健康にしたい」という最終目標に向けて、花王様がもともと開発していた「内臓脂肪を腹囲から予測できるアルゴリズム」をベースに、それを簡単に利用できるインターフェースの提供に動き出しました。アプリを通じてヘルシアユーザに内臓脂肪が減ったことを実感してもらう狙いですが、それにはサービスを継続的に利用してもらわなければ意味がありません。“週4本以上の飲用習慣”に向けて、花王様がアプリを通じて提供しようとしたのは、内臓脂肪を減少させることを含めた「中高年男性が実現したいライフスタイルのサポート」でした。

目指すは「顧客との継続的な関係構築」

これまでは、ただ美味しくて健康にいいお茶を作ることを目指していましたが、リアルとデジタルの世界が入り混じった現代では、単体の経験ではなく、データを通じて継続的にお客様とコミュニケーションを取り合うことが重要になりました。

体験全体での価値提供が重要になる
参照元:https://www.bebit.co.jp/xd/case/article/kao-01/

そこで、長期的なデータを取得するためにどんなコミュニケーションが最適かと考えたところ、アプリで計測しやすく、かつ習慣化しやすい「ウォーキング」を計測する機能を取り入れました。
現在、リニューアルされた「モニタリングヘルス」では、手軽に内臓脂肪レベルが測れることを軸に、歩数計測や血圧記録、さらにはガチャなどを実装しており、「無理なく楽しく使ってもらって健康になる」が実現されています。

「アプリを通じて健康を実現」を目指すと、提供側の目線だと運動させたり、カロリーを制限させたりといった短期間で結果が出やすい手法をつい選びがちですが、とことんまでユーザー目線を突き詰めたことで、それらをユーザーに負担がかかる行為=ペインポイントととらえ、それを排除した方針に転換できました。

花王株式会社様の事例をより詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
【前編】無理なく健康になれる仕組みとは? 花王ヘルシア事業のUX型デジタルトランスフォーメーションへの挑戦



顧客体験価値の評価や指標を確認する方法

顧客体験価値を向上させるにあたり、なにを指標にすればよいのでしょうか? 顧客体験を意識したKPIを設定するうえで、有用な手法と指標の例をご紹介します。

定量分析

定量分析とは、数値化したデータを使って分析と評価をする手法です。KPIとしては、NPS®(顧客推奨度)やLTV(顧客生涯価値)、チャーンレート(解約率)などが適しています。顧客体験価値が向上していれば、NPS®やLTVは高くなり、解約されることも減るという図式です。

ただし、顧客ロイヤルティと支払総額、継続年数は必ずしも一致しないこともあります。NPS®も「誰もが知る知名度の高い商品・サービス」であれば、「あえておすすめしない」という回答が多くなることもあります。上述する指標を妄信すると、事実と異なる結論を導いてしまいますので、提供するプロダクトやサービスに合わせた指標に調整する必要があります。

定性分析

定性分析とは、定量のような数値化できないデータを使って分析と評価をする手法です。具体的には行動観察やユーザーインタビュー、自由回答形式のアンケートなどです。顧客が要望を上手く言語化できていないケースもあり、分析は慎重に行う必要はありますが、こちらの想定外の行動や意見を見つけることで、サービスやプロダクトの改善、新しいビジネスのヒントが生まれることもあります。



組織全体で取り組む顧客志向での体験設計

顧客体験価値の向上を目指してOMOを進めると、上述したように顧客との接点は多岐に渡ることになります。このとき、営業やECサイトの担当者などが同じビジョンを共有し、きちんと連携していないと顧客対応がバラバラになってしまいます。
実際にあるアメリカの有料テレビ事業者のケースでは、顧客はウェブサイト、店舗、コールセンターといった個々のやりとりは満足していても、契約の段階が進むにしたがって平均満足度が40%も低下していました。顧客志向での体験設計を実現するには、組織全体で取り組む必要があるのです。

連携のない部分最適化による弊害

CXやUX向上を目指すにあたり、各部門が個別に顧客への対応を手厚くしたり、顧客視点の改善行ったりしても上手くいきません。組織全体で取り組むべき問題に、部分最適で特定の部門だけが高いパフォーマンスを発揮しても十分な結果が得られないのです。

実際のところ、CXやUXにおける課題の大半は、タッチポイント間の「つなぎ」で発生しています。契約の申し込みはスマートフォンからなのに、実際の契約時は紙の書類に手書き…などという「つぎはぎ」が生じていれば、顧客は不満を持って当然です。

これまでのように、営業やサポートなど、部門ごとに分断された視点で顧客を見るのではなく、組織内の垣根を取り払い、企業全体として顧客の体験価値を高める取り組みが必要になってくるのです。

カスタマージャーニーの重要性

CXやUXの全体像を整理するには、「カスタマージャーニー」が役立ちます。これは、顧客が商品やサービスを購入・利用したときに、その企業との接点(タッチポイント)で発生するやりとりや、顧客の期待・感情・行動を書き出したものです。

とはいえ、自分たちに都合のいい顧客像をつい想像してしまい、“妄想ジャーニー”を作ってはいけません。あくまで顧客の気持ちを考え、行動を想像しながらカスタマージャーニーを仕上げると、顧客がどこで悩んだり、困ったりしているかという「ペインポイント」が浮かび上がってきます。ここを解決することで、CXやUX向上につながっていくのです。
カスタマージャーニーについて詳細が知りたい方はこちらをご覧ください。
カスタマージャーニー、アフターデジタル時代で変わる設計思想



目指すべき顧客体験設計は

企業が顧客の体験設計を見直すには自社の創業経緯に一度立ち戻ることが重要です。
元々どんな人を対象に、企業として何を提供したかったのかを改めて定義し、そこから圧倒的に便利な体験を作って提供することが重要です。

圧倒的に便利な体験を提供するには、まずは顧客のジャーニーを可視化して、どこで不自由に感じているかを把握する必要があります。ビービットの提供するUXチームクラウド USERGRAMは、顧客の状況をデータ分析によって把握するのに適したツールです。USERGRAMの機能や活用支援について知りたい方、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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