反中 望
「一人一人のニーズに合わせてカスタマイズできる」ことを売りにした製品やサービスは、近年よく目にします。
例えば、
・個々の保障内容を自由に組み合わせられる自動車保険
・各パーツのスペックやオプションを自由に選んで注文できるパソコン
などはその代表的な例といえるでしょう。
自動車保険でもパソコンでも、多くのユーザはそれらの商品について十分な知識を持っているわけではありません。
そのため、何のヒントもない状態で「何でも自由にカスタマイズできますよ」と言われても、ユーザは却って戸惑ってしまいます。
そのため、以下のような工夫が考えられます。
工夫1:代表的なプラン例を提示する
あらかじめ、スタンダードな内容で構成したプラン例を用意した上でカスタマイズ可能であることを伝える、というのは代表的な工夫の1つです。例えば自動車保険のオンライン見積りを提供している三井ダイレクト損保では、「プラン1-3」まで3つのプランを提示しています。
工夫2:カスタマイズ可能な項目に、判断材料を提供する
もう一つの工夫として、カスタマイズ可能な項目について「どういう基準で選ぶべきか」という判断材料を提示することがあります。
例えばパソコンの知識がそこまでないユーザに対し、「CPUはIntelとAMDどちらでも選べます」といっても、ユーザは判断材料がなく、選ぶことができません。(上級者であればそれで充分な可能性もありますが、あなたのサイトのターゲットが一部の上級者だけ、ということはそれほど多くないでしょう)
どういう場合にどちらを選ぶべきなのか、という情報を提供する必要があるのです。
例えばライフネット生命では、自由に保障内容を設計できる保険料シミュレーション機能をインターネットで提供していますが、その中で「保険金額の決め方は?」「保険期間の選び方は?」といったコンテンツを用意しており、ユーザがそうした情報を頼りにして自分に合った保障内容を選べるようになっています。
ニーズが多様化している現代社会においては、個々人のニーズに合わせてカスタマイズできる製品・サービスを提供することは非常に重要になってきています。
その際、提供者側だけの視点で考えてしまうと、つい「何でも自由に選べるようにすれば便利だろう」と考えてしまいがちです。しかしユーザにとっては、単に「自由に選べる」ことがメリットなのではなく、その結果として「自分のニーズに合った製品・サービスを手に入れられる」ことが本来の価値なのです
ユーザがしっかりと自分のニーズに合わせてカスタマイズできるようにするためには、今回ご紹介した「ユーザに合わせたプラン例の提示」「選択肢を選ぶ際の判断材料の提供」といった見せ方の工夫をしていくことが有効だと考えられます。
ぜひ一度、自社製品・サービスの見せ方について見直してみてはいかがでしょうか。