ユーザビリティコンサルタント
池田 朋弘
池田 朋弘
ウェブサイトに十分な情報を載せているのに、なぜかユーザに正しく情報が伝わらない、そんなケースは多いのではないでしょうか。今回は、実際の事例をもとに、「情報の関連性」を使ったテクニックをご紹介します。
今回取り上げるサイトでは、ウェブや電話では契約の新規申し込みはできないにも関わらず、「契約までの流れが理解されず、申し込みの電話がきてしまう」という課題がありました。対策として、お問い合わせページ内に「契約までの流れ」を記載していました(図1)が、ユーザは全く気付かず電話をしてしまう状況でした。
皆さんなら、どのような改善案を考えますか?(制約条件として、「商品説明」ページなどは修正ができないものとします)
ユーザは「探している情報」しか目に入らない
ありがちな対策として、「契約までの流れを画面上部に配置し、とにかく情報を見せる」という案があります(図2)。しかしこの案は、あまり効果的とは言えません。
ユーザは「電話番号はどこだろう」という心理状態であるため、目立ちやすい電話番号に視線が奪われてしまいます。この画面では、「契約までの流れ」と「お問い合わせはこちら」は全く別の情報に見えてしまうため、素通りされてしまう可能性が非常に高いと言えます。
「探している情報」に「伝えたい情報」を近接させよう
ユーザの「電話番号が知りたい」という心理を利用し、電話番号と契約までの流れの情報を近接させるといかがでしょう。(図3)
この案では、以下の3点で工夫を行っています。
(1)電話番号と契約までの流れを情報として近接させている。
(2)表形式を用いることで、ユーザの状況に合わせた選択肢があることを明示している。
(3)「契約までの流れ」を目立ちやすいテキストリンクとし、アイキャッチを取っている。
実際にこの画面案をユーザ行動観察調査を行ったところ、契約希望ユーザに「契約までの流れ」を見てもらうことに成功しました。
闇雲に伝えたいメッセージをただ掲載しても、ユーザに情報を伝えることは困難です。ユーザの心理状態や行動特性を意識して確実に情報が伝わるサイト構築を心がけましょう。