反中 望
ウェブサイトに訪れるユーザは、何も知らずにサイトを訪れるわけではありません。
ユーザは、ウェブサイトに来る前に、TVCMや広告、雑誌の記事、あるいは店舗等で様々な情報に触れていることが普通です。
ウェブサイトに来るユーザが、あらかじめどんな情報に触れていて、どんなことが気になっているのかをきちんと考え、ウェブサイトでもそれに合わせた情報提供をすることが重要です。
弊社のユーザ行動観察調査からの知見を二つほど紹介いたします。
例1.TVCMのイメージをウェブサイトでも活用する
とある耐久消費財メーカーA社では、ユニークなTVCMでよく知られていました。A社のウェブサイトでは、そのTVCMのイメージをトップページのクリエイティブに採用していました。
弊社ユーザ行動観察調査では、そのウェブサイトを訪れたユーザは「ああ、このCM面白いですよね」などという反応を示し、ウェブサイトに対してよい印象を持つ様子が見られました。特に、サイト訪問時に強い目的志向を持っていないユーザの場合、最初にポジティブな印象を与えることで、ウェブサイトを関心を持って見てもらうことにつながります。
TVCMに限らず、他の媒体を通じてユーザがその企業に対する何らかのイメージをもっている場合、ウェブサイトでもそれを活用することで、訪れたユーザに興味をもってもらうことが可能と考えられます。
(ただし、目的志向の強いユーザの場合には、目的の情報まで一直線に進む傾向が強いため、そうしたクリエイティブは無視されることも多く、すべてのユーザに有効とは限りません)
例2.他の媒体で露出している商品をウェブサイトでも積極的に露出する
ECサイト等では、他メディアで積極的に展開している商品や、世の中で話題になっている商品がある場合、ウェブサイトでもその商品を露出することが有効となります。
弊社ユーザ行動観察調査でも、ECサイトで買い物をするユーザは、ほとんどの場合目当ての商品を探してサイトを訪れていますが、その目当ての商品以外にも、「どこかで見て気になっていた商品」が目に入ると関心を示す傾向が見られています。
そのため、そうした商品を「オススメ商品」や「売れ筋商品」等として、ユーザが目当ての商品を見つけて一段落した時点などに見せることが有効です。目的を終えたユーザがそこでサイト利用を終わらずに、さらに回遊してもらったり、クロスセルに結びつけることが可能となるためです。
例えば、以下のようにユーザの行動を考えた上で情報を表示する場所を考えるとよいでしょう。
- ユーザは当初の目的を果たした際にトップページに戻る傾向があるため、トップページ再訪時に表示する。
- 目当ての商品を買い物かごに入れた時点で、ユーザの心理は一段落するため、買い物かごページに表示する。
- 購入手続きが完了した時点で、ユーザの心理はさらに一段落するため、完了ページに表示する。
- 目当ての商品群をいろいろと見比べた後に、ユーザは「さてどうしよう」と思って迷う場合があるため、商品一覧ページの下部やナビゲーションエリアに表示する。
上記の事例はあくまで一例に過ぎませんが、何らかの目的を持ってサイトを利用するユーザの心理の裏側には、過去のメディア接触等の経験から「潜在的に気になっていること」というのも実は数多くあります。
それらの潜在的な意識に合致した情報を、サイト利用の中で自然に目に触れるようにすることで、ユーザの意識が顕在化し、サイトへの関心を高めたり、回遊性を向上させたり、あるいはクロスセルに結びつけたりすることが可能となります。
繰り返しになりますが、サイト外も含めて「ユーザはどんな情報に触れているのか」「ユーザは何が気になっているのか?」ということを考えたサイト作りが重要です。