森 祐二
今回は、弊社で実施した英語でのユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)から、日本人ユーザと英語ネイティブユーザの行動の違いをいくつかご紹介します。
1.検索語が長い/フリーワード検索をよく使う
検索サイトの利用行動の特徴として、日本人に比べ比較的検索語が長い、という点が挙げられます。
例えば、あるメーカーの製品を比較検討している場合、
- compare Product A to B (=製品AとBを比較する)
- Product A where to buy(=製品Aをどこで買うべきか)
のように、ほとんど文章に近い複数語を使って検索する例が多く見られました。
また、目的のサイトにたどり着いた後でも、製品カテゴリをたどるのではなく、複数語を使ってのサイト内検索を多用する傾向が見られました。
これには、
- キーボード利用の文化があり、日本人に比べキーボードへの抵抗感が少ない
- 変換の手間がない分、日本語よりも入力が楽
などの理由から、より短時間に目的のページにたどり着くことのできる複数語での検索が習慣づいていると考えられます。
この傾向から、あるサイトへの流入に関して、トップページではなく比較的下位の階層のページに直接たどり着くことが(日本に比べ)多くなる可能性があります。
すなわち、アクセスログの検索クエリ(検索文字列)分析では、検索順位の数百位-数千位に複数ワードでの検索が散らばるロングテール的状況が生まれると考えられます。
したがって、グローバルサイトのアクセスログ分析の際には
- 月に数件程度の下位の検索クエリにも目を配る
- 特定の製品名を含む検索クエリだけを抜き出し、どのような言葉と一緒に使われているかを調べる
などで、意外なニーズが拾えるかもしれません。
2.英語で書かれていれば、サイトの国籍にこだわらない
例えばイギリス人ユーザであっても、ネットでの情報収集は自国サイトにこだわらず、アメリカやその他の国の英語サイトを抵抗無く使います。
さらには、英語とフランス語ができるスイス人、という例では、「たいてい英語のページがもっとも情報が充実している」という理由で、普段のWeb利用の際も英語のサイトを使っていました。
これらのユーザに「価格や商品ラインナップが国によって異なるのでは?」と質問したところ、「グローバルなメーカーは各国で同じ製品を売っているはず」「価格も為替換算すればだいたいわかる」「最終的には自国の店舗やECサイトで確認すればいい」といった回答が得られました。
こういった視点は、多言語に馴染みが薄い日本人ではなかなか持ち得ないものかと思います。
これに対するグローバル企業のWebの対応としては、
- 「国別」ではなく、「言語別」でサイトを作成する。すくなくとも英語版サイトを全ての国で用意する
という対応があり得るのではないかと考えます。
実際には、営業体制やWebサイトの管理体制、製品ラインナップは国別で整備されていることが多いため、対応には難しい面も多いと思いますが、コンテンツを共通化した「グローバルサイト」を言語別で運用することができれば、多言語国での販売のチャンスが拡大する(例:スイスのドイツ語圏の店舗情報をフランス語で検索できるなど)ことが期待できます。