東 美和子
アメリカのIT関連調査会社フォレスター・リサーチの調査結果(※1)によると、「ウェブサイトの失敗項目で最も多いものは、文字の可読性である」ということが指摘されています。確かに文字の可読性はユーザビリティの基本事項ですが、実際のところ、可読性はユーザ行動にどの程度影響を与えるのでしょうか?実例を交えてご紹介します。
以下2つの画像を見比べてみてください。これらは、サイトの設計やコンテンツはそのままで、背景色と文字の濃さのみを変えたものです。
弊社でユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)を実施したところ、図1のパターンでは、ユーザは1ページ目の画面を一瞥しただけで閲覧をやめてしまいました。コンテンツの冒頭を読んでから判断したのではなく、全く読みもしなかったのです。その理由として、ほとんどのユーザが「なんとなく暗い感じがして、読む気がしないから」と回答しました。
背景色そのものにも原因はあったでしょう。しかし、ユーザに敢えてコンテンツを読んでもらったところ、「内容はとても面白い、商品に魅力を感じた」との回答が得られたことから、背景色だけでなく可読性の問題として広く捉え、図2のような改善を施しました。
このように、どんなに良いコンテンツであっても、可読性が低ければ一行も読んでもらえず、ほんの数秒で離脱されてしまうこともあるのです。ましてや高いコンバージョン率は望むべくもありません。
可読性を高めるにあたっては、文字サイズも重要な要素です。
ユーザビリティテスト(ユーザ行動観察調査)で、文字サイズが大きめのサイト(またはプロトタイプ)を使用した場合、ユーザは開口一番「このサイトは文字が大きいので良いですね」と発言します。この反応に年齢差はありません。そして、全く同じコンテンツだとしても、文字サイズを変えるだけでユーザの反応は変わるのです。(※2)
結論として、可読性はユーザ行動にかなり大きな影響を与えます。時には、サイトの成果にクリティカルな形で影響します。
リッチインターフェース、Web2.0風のデザインなどが話題になっていますが、ウェブサイトの基本中の基本は、「こちらの伝えたいことが伝わること」。ご自身のサイトを見返してみてください。文字サイズは小さすぎませんか?文字色が薄いグレーになっていて、読み取りにくくなっていませんか?
例えば人間同士の会話のときは、相手に聞き取りやすいように、声の大きさやスピード、滑舌などを考慮して話しているはずです。ウェブサイトにおける可読性もそれと似ています。文字サイズ、背景色とのコントラストを考慮した読みやすい文字は、ウェブサイトでのコミュニケーションにおける最低限のマナーと言えるでしょう。
※1:2005年6月以降に行った196のウェブサイトブランド調査の結果より。可読性への言及は下記URLのページ中段で確認できます。
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2007/12/26/2423
※2:一概に文字が大きければ良いというものでもありません。メディアサイトのように一覧性が重要視されるサイトでは、文字サイズは小さい方が好まれることがあります。